表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
七鍵~姫と七つの鍵~  作者: 夕闇 夜桜
第一章:一学年一学期・桜庭鍵奈とゆかいな仲間たち
13/116

第十二話:林間学校当日


今回は京、鍵奈視点




 目覚まし時計の鳴る音が聞こえる。


「……うぅん?」


 止めようと体を動かそうとするが、何かに封じられたかのように動かすことができない。

 というか、動かせないのは腕だった。

 そもそも誰が掴んでいるのか、と目を向けてみれば……


「あ、起きた?」

「……」


 我が幼馴染、桜庭鍵奈が俺の腕を掴み、隣で寝転がっていた。


 ……一体、何事?


   ☆★☆   


「一体、何事? って、聞きたそうな顔をしてないで、さっさと起きる」


 俺の疑問を見透かしたかのように、鍵奈はあっさり腕を解放すると、そう言って、俺の隣から離れてドアの向こうに行ってしまった。

 何となく気配がするから、ドアの近くにはいるんだろうが。


「今日、何の日か忘れたわけじゃないでしょ?」

「……ああ」


 制服に着替えながら、扉越しに返す。

 言われなくても分かってる。


 本日は、全校生徒(とはいっても、千錠学園高等部のみ)との林間学校当日である。


「そもそも、さっきのは何なんだ?」

「“幼馴染(男)を起こしに来た世話焼きの幼馴染(女)”という設定でやってみました」

「設定って……」


 鍵奈のことだから、そんなことだろうとは思ったが。


 朝食を口にした後、現在、俺と鍵奈は、林間学校の荷物を持って、学校まで俺の親父に送って貰っている最中である(親父はついでに会社に行くらしい)。

 全校生徒(何度も言うが高等部だけ)での行事なので、学校に近づけば近づくほど予想通り、バスが何台も止まっていた。


「よし、間に合った!」

「小父さん、ありがとうございました」


 学校のギリギリまで近づいた場所に車を止めてもらい、鍵奈が親父に礼を言っている間に、鍵奈の分の荷物も車から下ろす。


「ほらほら、礼はいいから早く行かないと置いて行かれるぞ?」

「げっ!」


 親父に言われ、慌てて荷物を抱えると、待ち合わせ場所へ向かって走り出す。


「おい、マジで大丈夫か?」

「大丈夫ですっ!」


 鍵奈が身体強化の異能を俺にも掛けてはくれたが、間に合うかどうかは微妙である。


「大体、あんたが起きるのが遅いからいけないんだからね?」

「あーもう! 分かってるよ!」


 普通なら、鍵奈は俺なんか起こそうとせずにさっさと行っていれば、待ち合わせ場所にも間に合っていたはずなのだ。

 だが、鍵奈はわざわざ俺を起こしに来ては、結局ギリギリとなっている。鍵奈も鍵奈で何で待っていたんだか。


   ☆★☆   


 さて、林間学校当日である。


「きーちゃん、おはよう」

「おはよう、朝日」


 私を見つけたらしい朝日が声を掛けてくる。

 中間試験が終わり、約一週間後。やはりというべきか、私たち一年生が揉めたが、上級生の意見もあり、何とか今年の学校が林間学校に決定した(なお、上級生の意見に朝日は無関係)。


「京くんは?」


 一緒に来てないの? と言いたげな朝日に、やや目を逸らしてしまう。


「あー……まだよ。さっき鍵理さんと会って話したら、数秒後くらいに悲鳴が聞こえてきたから、そろそろ来るわよ」


 悲鳴に関しては大げさかもしれないけど、一度鍵理さんと話したのは事実だし、そろそろ来るのも事実だ。


「うわぁ……京くん、ご愁傷様」

「ねー」

「鍵奈、朝日……」


 朝日の言葉に同意していれば、噂の張本人の登場である。


「あら、ようやくご到着?」

「鍵奈、お前な……」


 笑顔で出迎えれば、お前が言うかと言いたげに返される。

 いくら身体強化で走ってきたとはいえ、そもそも私と京では体力差ややっていること(・・・・・・・)が違うので、到着するまでに間が出来てもおかしくはない。


「点呼、取るぞー」


 そんな先生の声が聞こえ、京が自分の列へと向かい、私たちも並び直す。

 そして、参加生徒の確認が終わると、これからの注意事項が告げられ、私たちは移動用のバスへと乗り込むのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ