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七鍵~姫と七つの鍵~  作者: 夕闇 夜桜
第四章:二学年一学期・新たなる出会い
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第百十四話:六月、そして学校祭準備について

今回は鍵奈、獅子堂視点



「……」

「……」

「……」

「……」

「……」


 誰もが声を発せず、キーボードを打つ音や何かを書くと言うような作業音だけが室内に響いている。

 現在地は生徒会室で、今は仕事中である。


「……っ、誰か喋ろう!?」


 無言に耐えかねたのか、双葉瀬(ふたばせ)先輩が我慢の限界とばかりに叫ぶようにして告げる。


 大体こう言い出すのは双葉瀬先輩なこともあり、慣れと言うのは怖いもので、誰も返す様子はない。

 ちらりと時計を確認すれば、最終下校時刻までまだ時間がある。けれど、休憩するにはまだ早いし、無視しっぱなしも可哀想なので、返してみる。


「……今、先輩が喋ったので、先輩の『誰か喋ろう』という要望はすでに叶っているのでは?」

「いや、(さくら)ちゃん。そういう意味じゃなくて……」

「違うなら、説明してみてください」

「え? あ、うーん……」


 ペンを動かす手を止め、どう説明しようか唸る双葉瀬先輩。

 そこまで唸ることでも無いだろうに。


奈月(なつき)。お前、桜庭(さくらば)に遊ばれてることに気付け」

「……え?」


 話を聞いていたんだろう一ノ瀬(いちのせ)先輩に指摘されて、『そうなの?』とでも聞きたそうに目を向けられるけど、こちらはそれどころではないので無視する。


「桜ちゃん……?」

「そもそも、桜庭だけじゃなく会長も反応したところで、先輩の『喋ろう』という要望は通っているわけですから、別に意味を考える必要は無いんじゃないんですか?」


 さらに、獅子堂(ししどう)君までそんなこと言うようになってしまった。


「けどなぁ……」


 引っ掛かりがあるのか、先輩もすぐには返さない。

 会話について聞いたのは私だけど、これ、私も何か言わないと駄目だよなぁ。


「別に意味なんて、何だって良いですよ。実際、私や会長、獅子堂君が喋っているわけですし」


 逆に言えば、五十嵐(いがらし)君だけが喋っていないわけだが、単にタイミングを計っているのか、それとも話し出せなくなったのかは、本人にしか分からないところだから、何とも言えない。


「書類、これから職員室とかに持っていきますが、他に持っていくものがあれば、こっちに下さい」


 そう言い出せば、『じゃあコレ、よろしく』とばかりに、それぞれ出される。


「他に無さそうなら、行ってきますが……」

「あとで出たら、そのとき持っていけばいいから、まずはそれだけ持っていけ」


 とりあえず、会長からの許可が降りたので、さっさと届けに向かうために、生徒会室を出る。


「……何なの、あれ」


 久々に集まったかと思えば、無言だし……


「それに、いつもの調子じゃないのは、私も一緒じゃんかよぉ……」


 それに、みんなから特に何も言われなかったってことは、いつも通りに見えたんだろう。

 本当、何とも無いように見せるのだけは上手くなってる気がする。


「……もし、メンバーが違ってたら、すぐ気付かれるんだろうな」


 そんなこと言いつつ、学校の窓から見える位置にある家の庭なのか、そこで咲いている紫陽花に目を向ける。

 梅雨入りだとかそういう情報はまだ出ていないけど、今が六月ということがよく分かる。


 そして、手にした書類を届けるべく、止めていた足を動かした。


   ☆★☆   


「そういえば、もうこの時期か」


 双葉瀬先輩が、一枚の書類を見ながら、そう口にする。


「……何かあるんですか?」


 ようやく口を開いた五十嵐が、不思議そうに問いかける。


「文化祭と体育祭の準備だよ。二人は去年いなかったから、知らないか」


 そうして見せられたのは、文化祭準備についての書類。


「毎年、大変なんだよね。いろんな申請を精査したりしないといけないし」


 「でも、去年は岩垣(いわがき)先輩たちや桜庭に、ほとんど任せてましたよね」とは、思ってても言わない。


「それにしても、夏の大会と学校祭準備。今年も大変だなぁ」


 先輩はそう言うが、もしこの場に桜庭が居たら、去年の事を洩らしているだろうことは、容易に想像できた。


「で、今年はどうする?」

「どうしようか」


 何だろう。嫌な予感がする。


「他にも何かあるんですか?」

「生徒会からの出し物」


 聞けば、やっぱりと言うか、何となく予想していた答えが返ってきた。


「去年は何かやったんですか?」

「……」


 確か去年は、生徒会からの出し物じゃないけど、桜庭にミスコンとかに出てもらったんだよな……本人は物凄く嫌そうな顔をしていたが。


「せめて、やるか・やらないかだけでも決めておかないとね。もし、やるなら、そのための準備も必要になるし」

「確かに、そうですね……」

「ちなみに、去年は生徒会としての出し物はやってないから、やるようには言われるかもしれない」


 面倒くさいと言いたげな空気を隠そうとせずに、会長が告げる。


「とりあえず、桜庭先輩が戻ってきてから、決めれば良いんじゃないんですか?」

「それもそうだね」


 勝手に決めたとなれば、何を言われるか分かったものではない。

 そして、数分後。桜庭が戻ってくるのだが――……


「文化祭、生徒会としての出し物を何かやるようにと、先生方から要請されました。どうしましょうか?」


 そんな言葉と、出し物に関する書類と共に。


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