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七鍵~姫と七つの鍵~  作者: 夕闇 夜桜
第四章:二学年一学期・新たなる出会い
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第百十一話:彼女と彼の関係性は


「そういえばさ」


 和花(のどか)が何気なくといった様子で、口を開く。


「あんた、ここのところ昼は私たちと食べてるけど、生徒会の方は良いの?」


 その質問に一瞬固まったけど、次にはまさかという考えが表れる。


「え、まさか邪魔だった? 私、邪魔だったの!?」

「違うから、とりあえず、落ち着きなさい」

「そもそも、何があったんだよ」


 何でそんな飛躍するの、と冷静に告げられたり、(けい)からは事情を聞かれる。

 というか、私がここに居る理由に、何かあることを前提にされているんだが、散々トラブルメーカーとか言われてきたから、そういうことだと思ったのだろう。……まあ、移動してきた理由となる何かはあったんだけども。


「ここ二~三日、私が生徒会室に戻ると、あからさまに話題を変えられるんだよね」


 だから、先輩たちの中で結論が出るまでは、放課後以外は近付かないようにしたし、私が居ない間に別の話題を出してる時点で、その内容は何となくでも予想できる。


「きーちゃん抜きで話されることに、何か心当たりはないの?」

「え、あり過ぎて分かんない」

「おい」


 朝日(あさひ)からの珍しい短めの突っ込みを受けつつ、けどまあ、と続ける。


「一番濃厚なのは、私の正体だろうねぇ」

「そもそも、鍵奈(きいな)は話してないだけで、隠してないもんね」

「そうなんだよね」


 それ専門の人たちが、本気で探れば分かる程度には、隠してるつもりはない。

 だって、私がしなくても、祖父を筆頭とした上の人たちや先生たちが隠そうとするし、仮に何かあっても、対処できる実力は持ち合わせてるつもりだ。


「でも、今更じゃないのか? 調べるなら、桜庭に対して不信感が強かった去年にも出来ただろうに」


 風峰(かざみね)君のその指摘も確かで、どれだけ書類が残っていようと、あの家の面々ならーー特に一ノ瀬(いちのせ)先輩や双葉瀬(ふたばせ)先輩の家のレベルなら、調べることぐらい簡単だっただろうに。そして、それの流れでーー私の出身中学も、分かったはずなのに。


「何だかんだで、信じてみようと思って、信頼されていったっていう感じじゃないかな」


 ……だと良いんだけどね。


「というか、本当に抜けてて大丈夫なの? あんた一人居るか居ないかで、処理スピードが確実に違うでしょうに」

「まあ、書類面に関しては、今は落ち着いてきたから大丈夫かな」


 だから、以前(まえ)よりも、若干の余裕があるわけだしね。


「なら、良いんだけど……それ以外(・・・・)も、大丈夫?」

それ以外(・・・・)って?」

「……分かって聞いてるつもりで言うけど、この先の事よ」


 まあ、そうだよね。


「まあ、何とかなるでしょ」

「何とかって……」


 心配そうな、不安そうな顔をする和花に、「大丈夫だよ」と返す。


「いざとなれば、選抜試験はお祖父ちゃんに頭を下げてでも変更してもらうし、代役もいるしね」

「……」


 私が使い物にならなくなれば、きっちり働いてもらうつもりだ。

 けど、その何とも言えなさそうな視線を向けてくるのは何でかな。お三方。


「今年は荒れるね。確実に」

「そうだな」

「いろんな意味で荒れそうだけど、とにかく彼の胃が心配だわ」

「何で、みんなあっちの心配してるのかな?」


 納得できない。

 けれど、ここで()について、あまり知らない風峰君が尋ねてくる。


「……? 桜庭が頼ろうとしていて、三人が心配してる奴って、もしかして前に話してた奴か?」

「そうそう。名前は(たちばな)鍵夜(きいや)。分かりやすく言うのなら、男版の鍵奈ってところね」


 風峰君の確認とも取れる問いに、和花が頷き、説明する。

 いや、その説明が間違っているとは言えないし、否定するつもりもないけど、何か納得できないのは、私の気のせいか?


「何か色々と似てるんだよね。物の考え方とか」

「そう?」

「そうなの。そうね……あんたならどう考えるか、って私たちは考えようとするけど、あいつはあいつで似ているからか、聞けばほぼ正確な答えが返ってくるのよね」


 考えとかが似てるからこそ、互いが互いを代役に出来てしまう……それってつまりーー


「えー……それ、何かやだ」

「でも、事実なんだからしょうがないでしょ」


 そうは言われても、嫌なものは嫌だし、そっくりと言われてる時点で、私も鍵夜も互いがドッペルゲンガーって言われてるみたいじゃん。


「まあ、近いうちに会えるんじゃないか?」

「なら、良いんだがな」


 (けい)が風峰君に告げれば、彼は彼でそう返す。

 というか、さっきからじーっと見られてる気がするんだけど。


「私をどれだけ見たところで、あいつのイメージはしにくいと思うよ?」


 そもそも、定期的に連絡してるなら未だしも、今のあいつの様子を何一つ知らない訳だし。


「……そうか」


 何で少しばかり残念そうなのだろうか。

 まさか、私を見ていれば、何となくでも鍵夜をイメージできると本気で思ってはないはずだろうし……


「あ、写真見せようか。留学前のものになるけど」

「写真?」

「撮ってたっけ?」


 風峰君が不思議そうにするのはともかくとして、私は鍵夜と一緒に撮った覚えが無いんですが。


「あー、あの時はバタバタしてて、鍵奈いなかったからなぁ」

「じゃあ、知らないはずだわ」


 若干、目を逸らされてるのが気になるが、今は写真である。

 朝日から「ほら」と差し出された写真には、確かに朝日と京と鍵夜、たまたまその場に居合わせたかのような和花が写っている。


「ああ、いつの写真を見せるのかと思えば、この時のやつだったのね」


 和花が納得したように言い、風峰君が私と写真の鍵夜を見比べたりしてるけど、それよりもこの写真、何か見覚えがある気がする。


「ねぇ、朝日」

「何?」

「私、この写真を見たことがある気がするんだけど、見せてもらったこと、あったっけ?」


 一瞬、驚いたような表情をされた気もしたけど、私の気のせいなのか、朝日が苦笑いする。


「どうだったかな。私もいつも持ち歩いてる訳じゃないし」


 まあ、見せたかどうかなんて、いちいち覚えてるわけないか。


「それで、写真越しだけど、第一印象はどう?」


 和花が風峰君に尋ねる。


「まあ、確かに似てると言えば似てるな」

「え……君までそう言うの?」

「だって、似てるぞ?」


 私の顔の隣に写真を並べて、風峰君だけではなく、和花たちも見比べながら、時折頷いている。


「何と言うか、本当の兄妹って言われても、信じそうだな」


 ……はい?


「私たち、兄妹じゃないからね?」

「分かってる」


 何で若干、微笑ましそうな顔をされなきゃならないのだ。

 それに、鍵夜と私の関係はーー……


「……」


 無言でお弁当のおかずを口に入れれば、朝日たちが顔を見合わせる。


「とにもかくにも、無理は厳禁よ。怒られるのはあんたであり、私たちでもあるんだから」

「分かってるよ。面倒な奴らでない限りは、無理も無茶もしません」


 そうは言ったものの、みんな信じてないのか、疑いの眼差しを向けられるが、いつものことなので無視である。


「まあ、頑張りなさい。私たちは応援してるから」


 どちらについてなのかは告げなかったが、おそらく両方なのだろう。


「ん。とりあえず、次の休み時間に書類の状態でも見に行くことにするよ」


 役員である以上、サボりっぱなしも良くないし、何より私が確認しないといけない書類を溜めたくもない。


「そうしてきなさい。他人(ひと)の事を言えなくなる前にね」


 それはきっと、去年の生徒会役員の事を言っているのだろう。


「うん、言われないようにしてくる」


 夏休みまで、もう二週間。

 それが終われば、先輩たちも顔を出すのが減ることになるだろう。そして、新しい役員がやってくる。

 でも、その前にーー私は『移姫(うつりひめ)』こと、転移系の異能を持つ、『衣緋(ころび)の姫』に連絡を取らないとなぁ、とチャイムを聞きながら、そう思ったのである。



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