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七鍵~姫と七つの鍵~  作者: 夕闇 夜桜
第四章:二学年一学期・新たなる出会い
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第百五話:山と海と修学旅行Ⅹ(氷結の終わり)


今回は???、鍵奈視点




 ーー数分前。


 それは、単なる偶然だったのかもしれない。

 修学旅行の日程が重なり、修学旅行先も宿泊先も同じ。

 ここまで来れば、もう偶然ではなく必然のような気もするのだが、どうやら全てはこのためだったのか、と思うと、呆気なく感じてくる。

 学校名は聞いていたし、途中で何回か見かけることもあった。

 就寝時間だろうに同級生の奴と話しているのも見たし、その後の落ち込んだような顔をしたときは(がら)にもなく励ますようなことをしたりもした。


 運命だとかを信じるつもりは無いが、それでもあの二人にはーーと願ったこともあったから。


『ご、めっ、な、さいっ』


 泣きながら、何度も俺たちに謝る彼女を見て、その後の今までとは真逆の彼女を見て、再会後の彼女を見て。

 それでも、同じ『氷属性』であるが故に、俺たちを繋いだ『縁』を切り、離れきることも出来なくて。


 だが、それでも、今は関係ない。

 この状況ーー出入り口などがある建物の下半分を覆った氷を対処し、打開することが出来るであろう存在を知っているから、俺が出来るのはそいつを呼び出すことぐらいだ。

 一体どこから現れたのかとか、どうでも良い。今はこの氷山を止めないといけないから。


「ちょっ、零夜(れいや)!?」

「スマホなんか出して、どうするつもりだよ!?」

「助っ人呼ぶから、もう少しだけ耐えとけ」


 顔を引きつらせた友人たちを余所に、俺は救援要請をするのだった。


『はい』

「……助けてくれ。手が足りない」

『は……?』


 俺でも、これには同じ反応を示しただろうが、それでもーー今でも気まずそうな顔をしながらも、現在進行形で不在なあいつ(・・・)より、お人好しな彼女はきっと助けに来てくれるだろうから。


『まあ、状況は何となく理解できてるし、今そっちはーー……』

「エントランスだな。バスに向かおうとしたら、出られなかった」

『了解。少し時間掛かりそうだけど良い?』

「ああ、来てくれるだけでも助かる」


 きっと、こちらに来られたとしても、この人数だ。人混みを掻き分ける時間を含め、五分か十分(じゅっぷん)ぐらいか?


「で? 結局、どのくらい耐えれば良いんだ?」

「そうだな……十五分、だな」

「そうか」


 まあ、桜庭のことだから、俺の想定時間内に到着しそうだがな。


   ☆★☆   


「うわぁ、こっちは思ってた以上に、被害が大きいなぁ」

「言ってる場合か」


 そりゃそうだ、と思いつつ、何とか駆けつけたんだから、状況説明ぐらいはーーうん、いらないか。目の前で起きていることが全てみたいだし。


「氷の制御が追いつかん。お前の能力でどうにか出来ないか?」

「ん、とりあえず、()させて」


 とりあえず、直に氷に触れてみるのと同時に、異能を発動させる。


「おい、あの子は一体誰なんだ?」

「俺たちの他にもう一校、名前があっただろ? そこの生徒で、俺と同じ氷属性の使い手だよ」

「もしかして、彼女か?」

「違う。兄貴経由で知り合っただけの知り合いだ」


 何やらこそこそ話しているが、きっと私の説明でもしてるのだろう。


「……どうだ? 何か分かったか?」

「うん? 発生源は人じゃなくて、機械っていうか、装置みたい。この建物内にあるにはあるんだけど、そこから外に漏れ出たっぽい」

「そうか」


 正直、建物内の機械や装置に不用意に触りたくはない。不用意に触って壊したりしたら、確実に弁償しないといけないから。


「まあ、装置の方は関係者の皆さんに任せるとして、問題はこの氷の山だね。これをどうにかしないと、私たちの方も出られないし」

「そうだな……それで、どうする? やっぱり壊すか?」

「その方が早いかもね。私の異能でも発生源が機械とかの無機物系だから、時間掛かりそうだし」


 人に()るものならともかく、機械などの無機物系に因るものに対しては、効果が現れるまでに時間が掛かる。


「ま、出来るだけ削ってみるよ」

「桜庭さん!」

「どうしたの?」


 いざ出入り口付近の氷を削ろうとすれば、仁科さんが慌ただしくやってくる。


「部屋の方にも氷が入ってきて……!」

「はぁっ!?」


 何でそんなことになって……というか、被害が広がってるんだよ!


「宮森さんたちや雪原先生も対処に終われてるみたいで……」

「マジか」


 防御系の異能を持つ朝日や同じ氷属性使いの雪原先生たちまで行動が封じられているとか。

 こうなったらーー


「原因、潰すか」

「さっきと言ってることが真逆だぞ、桜庭」


 そんな冷静なツッコミを受けつつ、どうするべきかを考える。


「ーーま、仕方ないか」


 とりあえず、この場だけでもどうにかして、何人か外に出さないと。


「どうするのか、決まったみたいだな」

「この場の氷をぶっ壊す。修復が追い付かないレベルでね」


 彼からの返答は溜め息だけだったけど、同じ氷属性持ちである以上、手伝ってくれないなんてことは無いだろう。


「それじゃあ、始めますか」


 この場所から脱出するためにも。





 何とか無事に脱出できました。ええ、何とか。

 あの後、私と彼、雪原先生と天上琳海の先生というメンバーで、関係者の人に案内されつつ、騒動が起きた原因の場所に向かいましたよ。


「何故、部外者である私たちまで、対処にまで駆り出されたんでしょうか?」

「申し訳ありません。我々の中には氷属性持ちが居ないものですから……」


 疑問に思ったことを尋ねてみれば、こう返されました。


「でも、本当に俺たちが入って良いんですか?」

「普段なら駄目ですけど、今は緊急事態ですからね」


 雪原先生の問いに、案内役の人がそう返す。


「……(さむ)っ。しかも、足場(わる)っ」

「冷気が強くなってきたな」


 まさか夏間近で長袖が欲しくなるとは思わなかった。

 しかも、足場も足場で、踏み場がないぐらい凍っている。


「けど、あったな。ーー原因が」


 その後のことなんて、ほとんど覚えていない。

 もう、ただひたすらに風邪よりも凍傷との戦いである。


「寒い! 痛い! 寒い! 痛い!」


 覚えているのは、もうそれだけだ。

 氷属性持ちだからって、寒冷地帯(さむいばしょ)が得意だと思うなよ!


   ☆★☆   


「それじゃ、俺たちはもう行くから」

「ん、また夏休みにね」


 「どうせ上から呼ばれてんだろ?」と案に示してみれば、無言を返された。ま、その事じゃなくても、会いそうな気はするのだが。

 合流したのと同時に、友人たちから再度からかわれ始めた彼を見送りつつ、こちらもバスに向かう。

 クラスメイトたちに遅れたことを謝罪すれば、気にするなとは返されたけど、その分見学時間が減ったから、やっぱり気になっちゃうんだよなぁ。


「そ・れ・よ・り・も、あちらさんに居た彼とはどういう関係なのか、お教え願いますか? 副会長」


 どうやら、私も余裕ぶっている暇は無かったようです。

 そしてーー……





 最後の見学を終え、帰宅した私たちの長かったようで短かったような修学旅行は終わったのである。




後半、ぎゅうぎゅう詰めになってしまった感はあるのですが、大体こんな流れのことがあったんだな、とでも思っておいてください。



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