第百四話:山と海と修学旅行Ⅸ(気になる行方と修学旅行の終わりに)
途中、顔文字が使用された部分がありますが、上手く表示されなかったりした場合は申し訳ありません。
さて、あの二人はどこに居ることやらーーと思いつつ、捜していれば。
「風峰君?」
「桜庭か」
自販機で飲み物を買っていたらしい風峰君と遭遇しました。
「お茶?」
「ああ……桜庭も何か買いに来たのか?」
「まあ、どちらかと言えば……ついで、かな」
朝日と京を見守りに行くつもりだと言っても良いんだけど、呆れられそうだ。
「そうか。……そういえば、もう最終日か」
「だね」
お金を入れて、ボタンを押せば、ガコンと音を立てて、自販機のお茶が落ちてくる。
「風峰君はお土産買えた?」
「ああ。明日も少しだけ見るつもりだ」
「良いのがあると良いね」
「ああ」
会話はそこで途切れ、その場が静まり返る。
「……」
「……」
「……」
「……」
嫌な沈黙でないことがありがたいと言えばありがたいのだが、私も風峰君も自分から何か話そうとしないのは、共通の話題が少ないからだろう。
「……」
ちらりと彼に目を向ける。
そういえば、風峰君は私の婚約者候補の筆頭ではあるけど、同じ鍵錠であること以外はあんまり知らないんだよなぁ。
「どうかしたか?」
「いや、何でもないよ」
じっと見ていたからか、不思議に思われたらしい。
「そうか。俺はもう戻るが、桜庭はどうする?」
「あ、私はまだゆっくりしていくよ」
「そうか」
去っていく風峰君を見送りながら、軽く伸びをする。
「……」
朝日と京の問題もそうだが、こっちもこっちで少しはそれらしいことをしないと、婚約者候補という関係だけではなく、それ以降の関係も宙ぶらりんになりかねない。
けど、私はーー
「……っ、」
背中を軽く丸め、何らかの目的があって手にしたはずの携帯を握り締める。
涙は出ないけど、らしくない所は見せられないから。
だからだろうか。携帯が震えたので、開いてみればーー
『情けない顔するな。何度も言ったが、お前のせいじゃないんだから、気にする必要はないだろ』
明らかにこっちを見てると言っているような内容のメールに、思わずきょろきょろと周囲を見てしまう。
『捜さなくていい。このままお互い関わらずに、修学旅行を終わらせるぞ』
「……」
それ以降のメールが無かったことから、きっと部屋に戻ったのだろう。
そして、この宿泊場所に泊まっている天上琳海のお客さんは、(メールで確信したが)彼が居るということから二年生で間違いない。
『互いの修学旅行が、平穏無事に終わることを祈ってるよ』
そういうメールを送り返し、小さく息を吐く。
朝日たちのことも気になるが、どんな結果になっても、きっと大丈夫なはずだ。
ーーだから、きっと大丈夫。
☆★☆
あの後、どうなったのか。
気分的に朝日たちの様子を見に行く気にもなれず、私は部屋に戻り、寝たのだが、朝日と京がどうなったのかは京からのメールに事の顛末が記されていた。
『駄目だった( ;∀;)』
うぉい。
思わず変な反応してしまったじゃないか。
あと、もう明らかにチャンスな修学旅行も活かせないとか、京にはもう告白とか無理なんじゃないかなぁ?
いや、それを活かさせない朝日の方が凄いのか?
とにもかくにも、返信しておこう。
『ドンマイ ヾ(´▽`*)』
絵文字が付いてたから、こっちも付けておいた。
もし、文句を言われたとしても、こっちにはどうにもできないし、何も言えない。
「さて、と」
本日の予定としてはクラスで最後の場所を巡り、後はもう帰るだけだ。
そのためにも、同室の面々を起こさなければ。
(天上琳海組と遭遇しつつ、)指定された場所で朝食を終えれば、帰り支度をするだけなのだが。
「……うん?」
「どうしたの?」
仁科さんに聞かれるが、「何でも無いよ」と言いつつ、内心で違和感に首を傾げる。
ーー一体、何なんだろう?
そう思いつつも、部屋に戻り、荷物などを纏めてく。
「あっという間だったなぁ……」
仁科さんの言葉に、「そうだねー」と部屋はずっと一緒だった凪沢さんと諏訪原さんが作業しながらも同意する。
「でもさ、桜庭さんたちの恋バナはやっぱり聞きたかったなぁ」
「そんなに話すことなんて無いけど?」
「うっそだぁ。あれだけイケメンに囲まれておいて、それはないよぉ」
そのイケメンとやらは、まさか役員たちの事ですかね? 諏訪原さん。
まあ、仁科さんとはそれっぽい話はしたけど。
「何をどう言われようと、話すようなネタなんて無いから。ほら、集合時間」
そう促せば「逃げたー」とか言われたけど、私に恋愛関係で話せるような話題はない。
「まあーーその前に、これはどうにかしないと駄目だよね」
さっきから携帯も鳴りっぱなしだし、どうやら見て見ぬ振りは許されないらしい。




