表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SevenSevenceOnline  作者: あんじゅ
第二章:剣士(ヒーラー)は恐怖の館で何を思う
36/38

CHAPTER,35

気がついたら九月が終わってたんです。

そして、六日後。

今日はイベント当日である。なのに……。


「マルどこ行った?!」


待ち合わせ場所にマルが来ない。勿論、パーティは事前に組んであるし、フレンド登録のお陰で大まかな場所の把握は出来るのだが……。メニュー画面を開くと見ることの出来るマップに、青い点が打たれているのがフレンド登録したプレイヤー。ちなみに点のすぐ下にプレイヤーネームも表示されるので、特定は簡単である。……しかし、本当にざっくりと建物の位置がわかるだけなので僕はあんまりマップを使うのは好きじゃない。

うーん、マップ上だと間違いなくマルもここに着いてるはずなんだけど……如何せん人が多くて見つけにくい。っていうか、ここ本当に人が多いな……。僕、人混み苦手なんだけど…………。


「お姉ちゃーん!」


おっと、マルの声が聞こえた気がする。やっぱりここにいるのは確かなのか。

よくよく辺りを見渡してみると、どうやらこの人混みは何処かを中心としてぐるっと円になっているらしい。そこ証拠に、誰もみな同じ方を向いている。

……もしかして、マルってばこの人だかりに足止め食らってるのか?

それならば仕方が無い。と、僕は人だかりに向かって覚悟を決めた。



マルは意外にもはやく見つかった。

理由は簡単である。マルは人だかりに足止めを食らっていたのではない。人だかりはマルを中心に出来ていたのだ。マルによると、最初は「イベントに一緒に参加しないか」というお誘いがほとんどだったそうだが、だんだんとそれを見た人が集まってきて、気がついたらあんな人だかりになっていたそうだ。

人気者って大変ネ。と心の中茶化してはみるが、こうやって実際マルがちやほやされているところを目にすると、改めて妹が"すごい人達"の一員なのだと気づかされる。


♪〜♪〜♪


クエストコールだ。

どうやら、時間らしい。


クエスト名:どきどきっ!肝試し?

依頼者:ーー

クリア条件:ーー

報酬:順位により異なるが参稼報酬あり

内容:夏!ということで、皆さんを恐怖の館へ七日間ご招待します!ポイント制で、ポイントは各々の行動を換算していく形になります。参加はソロかパーティか選べますが、総合一位を目指すならパーティの方が有利かも……?

開催は一週間後です!

注意:館には、スキルショップはありません。事前にお買い求め下さい。


相変わらずふざけたクエスト名だと思うが、まぁ、緊張がほぐれるという意味ではアリかもしれない。

クエストの参加登録はもうしてあるから、あとは転送を待つのみ。


「さて、お姉ちゃん!」


「ん?」


「いっちょ頑張っちゃいますかー!」


キラキラと目を輝かせるマルに思わず苦笑が浮かぶ。元気だなぁ、この子は。


「そうだな。………………お姉ちゃん言うな」


ボソッ付け足した言葉はいつだってマルに届かないが、これは僕が諦めるべきなの? 大人の対応をすべき? だがしかし僕は諦めない! いつかマルが「お兄ちゃん」と呼んでくれる日まで……!


ーーこれより転送を開始いたします。


僕達の体が白い光に包まれる。あれ、なんだっけこの感覚……どっかでこんなのあった気が…………。





再び目を開けると、そこは先程いた街中とは似ても似つかない和風造りの部屋。足元は畳で襖に屏風もある。……土足のままなのがなんだかなぁ。日本人として駄目な気がする。あぁ、靴脱ぎたい。


「お姉ちゃん……ここって」


「うっ、うん。そうだな、多分ここが……」


隣から聞こえる声に少し安堵しつつ(一人だったらどうしようかと思った)、同じ事を考えているであろうマルに相槌を打つ。


♪〜♪〜♪


ーー恐怖の館へようこそいらっしゃいました。


やはり、ここが恐怖の館。

考えが当たった、と一人頷く。館っていうから、どんな洋館かと思っていれば、普通に古き良き日本家屋だった。まぁ、普通って言うには部屋が広過ぎる気もするけどね。


ーーご覧の通り、各組ごとにそれぞれ違うエリアからスタートしていただきます。勿論、どのエリアから出発しても、最終的には大広間にて合流することになると思いますので、ご安心ください。


って、全員違うところからスタートなの?! いくらなんでも広過ぎやしないか…………?


僕が驚いている間にもまだまだ放送は続く。


ーーこの館に隠された宝を探すも良し、館にしかいないモンスターを倒してドロップアイテムを集めるも良し、自由に活動していただいて構いませんが、ここで死亡すると、強制的に館の外へ出され、その後のイベントにはご参加出来ませんので、お気をつけください。それでは皆様、どうぞ七日間をお楽しみください。


♪〜♪〜♪


……どうやら放送が終わったらしい。


「えっと、じゃあ……マルは何がしたい?」


何と無く答えはわかる気もするが……。


「勿論ッ! モンスター倒すよ!! 後全エリアの制覇ね!」


デスヨネー。

拳を握り締め高らかに宣言するマル。元気があって大変よろしいけど、それ僕も付き合わされるんだよね……。


「まぁ、いいけどさ……」


イベントに、マルと一緒に参加すると決まった時からこの流れはある程度予想出来ていたし、まぁ、たまにはとことん付き合ってやってもいいだろう。何てったって可愛い妹の頼みだしな!


「じゃあ早速行ってみよー!!」


「えっ、ちょっマル待って!」


勢い良くスタート位置の部屋から走り出すマルを、慌てて追いかける。


「お姉ちゃん! はーやーくー!!」


置いて行っといてそれは酷いんじゃなかろうか。何とか走るマルに追いつく。いやぁ、現実世界で走ってるマルに追いつくとかあり得ないからちょっと嬉しいなぁ。


「よっしゃー!! お姉ちゃんモンスター見つけたよー!!!」


嬉しがってる場合じゃなかった。

こら、そこ。ガッツポーズを取るんじゃない! 後無闇に突っ込んで行くのやめろー!!


「ひゃっほー! 何かオバケみたいなのだー!!」


そこにいたのは、ゆらゆらと漂う半透明の体。何処までも真っ黒な目がちょっとホラーちっくだが、突き出した舌と垂れ下がった手?がおちゃめなそれ。成る程。それは確かにオバケだった。


「って単純か!! 恐怖の館でオバケって単純か!! こんなところで肝試し推してくんな!」


思わず叫ぶ。あまりにも典型的な、絵本とかに載っているような姿のオバケだったのでちょっとイラっきたのもある。


「グダグダ言ってないで行っくよーお姉ちゃん!」


腰の鞘から双剣を抜きつつマルが叫ぶ。

そういえば、マルの武器は双剣だったっけ。柄に薔薇の装飾がしてある綺麗な剣である。刃に青みがかってるのところが個人的に好きだ。

なんて、ぼんやり考えつつ僕も柄に手をかける。

真っ直ぐにオバケを見据える。初めてのモンスターだから少し用心しなくては……。


「とーぅ!」


「マル?!」


用心する前にマルが斬りかかる。頼むから少しは警戒心を持っておくれよ。

マルに斬られたオバケは、光のエフェクトと共に消えていく。


「って弱いな(ね)!!?」


マルとハモる。一撃で終わりって流石にこれは弱すぎじゃないのか……? いくらマルがプレイヤーとして強い方だと言ってもだな、一撃ってお前、一撃って…………。何と言うか、言葉も出ない。


「ッ!」


隣でマルが息を飲む。どうしたの?


「お姉ちゃん……囲まれてる」


「えっ?」


驚いて周りを見渡すと、例のオバケにぐるっと囲まれている。

真っ黒な目が、じーっとこちらを見ている。ここここ、これ結構怖くないか?!

っていうか、もしかしてもしかしなくてもこのオバケって、何匹かセットでわらわら出てくる系のモンスター?! ホーンラビット的な……スライム的な??! ってことは、ってことはさぁ! この量は、周りぐるっとどころか廊下を埋め尽くしちゃってるこの量は、やっぱりかなーり普通じゃないってことだ。


「モンスターがこんなにいっぱい……」


前言撤回。たくさんのモンスターより、この戦闘狂(いもうと)の方がよっぽど怖いし普通じゃない。

目を光らせながらオバケに斬りかかるマル。僕も刀を抜いて戦うけど、明らかにマルの方が素早いし一撃で倒せる分一匹にかかる時間も短い。因みに僕は一撃で倒せなかった。二回斬ったら倒せたから別にいいけど、ちょっと悔しいな、なんて。

出来れば今月からは隔週で水曜に更新したいなぁ、と思ってます。まぁ、願望の域ですが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ