表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SevenSevenceOnline  作者: あんじゅ
第一章:黒髪の女(?)剣士(ヒーラー)とはじまりの街
24/38

CHAPTER,24

此処まで何も聞かずに着いてきた僕が馬鹿だったよ?でもさ、まさかいきなり「ボス戦です」とか言われるなんて思わないじゃんか。


ぶつぶつ呟く僕を尻目に石碑の所まで移動するみんな。


おまいら結構自由だな!僕の事は無視か。


「はぁ」


口から漏れた溜息が僕に哀愁を漂わせている。とぼとぼと歩いて石碑まで向かう。


別に、ボス戦が嫌なわけじゃないんだ。デスゲームになったわけじゃないし。そりゃあ、死んじゃった時は少し怖いけどさ。そこじゃないんだ。


「僕が言いたいのは、何で始めから教えてくれなかったんだ、ってこと」


「ごめん」


返ってきた返事に少し驚いた。あれ、僕また声に出てた?

ナイトの顔は少し硬くて、ちょっとだけ気にしているのがわかった。


「ごめん」


ナイトの良い所は、あんまり言い訳をしない所だと思う。悪い事をしたと思ったら、言い訳をせずにただ謝る。なかなか出来ない事で、謝られる度に僕は「すごいなぁ」と思う。きっと、言い訳をされても僕は許しちゃうんだけど、それでもただ謝ってくれるのは少しだけ、嬉しい。


「もう、いいよ。

よし!ほら、気合いれて行かなきゃな!」


にっこり笑ってピースサインを出すと、安心したようにナイトも笑った。


「んじゃあ、行きますか!」


そう言って石碑に触る。実は、ボスは通常フィールドには居らず、石碑を使って専用のフィールドまで転移しなくてはならない。はじまりの街では門が四つあるが、その何処から行っても石碑に辿り着けるらしい。

ポワンとした光に包まれて、僕達は転移した。





此処が…………ボスがいるフィールド……。

…………はい、思いっきり荒れ野ですね!わかります。てか所々地面割れてない?え、気の所為?嘘付け!


「なんか……凄い所ですね」


「ふ、ふふん。地面が割れていようとも(わたくし)には関係無くってよ!おーっほっほっほっほっほ」


隣に来ていたらしいセシリアさんがぼそりと呟く。全く以て同感である。

後プリンセスアンリエッタはキャラクターが早くもぶれてきちゃってるから。もうちょい落ち着こうか。

テンパる新参プレイヤー(ぼくたち)とは対象的に、β版組は落ち着いている。


「えっと、此処のボスってどんな奴だっけ?」


「"ベルゼ"。大蝿のモンスターだよ」


「嗚呼、大蝿は美しい僕には似合わない」


……楽しそうでいいな、お前等。そうだよなぁ、β版組は此処のボス戦は初めてじゃないんだもんな。そりゃ気楽だよ。


ゴゴゴゴゴ


「Bbbbbbbbbbbbbbbbbbb」


酷い雑音が聞こえる。テレビの砂嵐みたいな。……あ、もしかして今の大蝿の……羽音?!


最初に現れたのは大きな羽音を響かせるその羽。網目の様な模様がはっきり見える程に大きい。次にその昆虫らしく六本の細かい棘のついた足を持つ体が見えた。最後に蜻蛉の様にギョロリとした複眼がこちらを見据える。


これは……また…………。


「あっ、来たー」


「うわぁぁあ来たぁぁああ」


前者がナイトで後者が僕である。怖くて叫んでるというよりは、予想以上の気持ち悪さに引いてます。女の子二人も顔が引きつってるよ!ホントなんで蝿をチョイスしたんだ大丈夫かここの運営!!


「よし、みんな無理はするなよ。無理だと思ったらすぐに引け。…………行くぞ!!」


無理するなってどういう意味?蝿が気持ち悪かったら下がってていいよ、っていう意味だといいなぁ!!


ナイトの掛け声により戦闘が開始される。ナイトは声を掛けると同時に大蝿の前に一人躍り出る。


「[突きの型(ニードル・スピア)]!!」


ナイトが叫んで槍を突き出す。大蝿は当たるか当たらないかのところで辛うじて避けた様だが、その目はナイトを完全にロックオンしている。

その間後ろに下がっていた僕は近くにいたセシリアさんに尋ねる。


「あれって、何をしてるんですか?」


「敵のヘイトを集めてくださってるんですよ。ナイトさんは盾役(タンク)なので、他の後方支援の方達に敵の攻撃がいかないように、ああやって攻撃して自分にかかるヘイトをあげてるんです」


ゲーム初心者だというのにさらさらと答えるセシリアさん。聞くと、今日はパーティ戦だから、とあらかじめある程度勉強してから来たらしい。うん。セシリアさん偉い!


「おっしゃ行くぜ!」


ドタドタと飛び出すバート。重そうな鎧を来ている割には随分と足が速いんだな、と思った。


「[打の型(ノック・ソード)]!」


バートが大蝿を斬りつける。今度はナイトの時のように躱されはしなかったようだ。

ちなみに、[〜の型]とは、スキルのレベルをあげると自動的に覚えていく武器固有の技の事である。


「じゃあ僕達もそろそろ状況を見て戦闘開始しますかぁ」


「そうですね。ではッ」


そう言ってセシリアさんも走り出す。


「[煌めきの型(フラッシュ・ソード)]!」


繰り出した瞬間に光を放ったその剣尖は、大蝿の目に叩きつけられる。


……セシリアさんってホントに初心者だよね?


そんな僕の疑惑を他所にセシリアさんは大蝿の目隠しに成功したようだった。


「[火の玉(ファイアーボール)]!!」


視界を潰されてわたわたしている大蝿にプリンセスアンリエッタの魔法が飛ぶ。流石虫。炎には弱いらしく先程よりも動きが鈍い。


っていうか、それよりも。


「うわ、あっつ」


案の定ナイトも巻き添えを食らっている。まぁこのゲームではパーティを組んでれば体力は減らないみたいだけど……。「あつい」という感覚はあるようだ。


「うわっ」


ナイトが後ろに飛ぶ。今まで攻撃を受け続けていたナイトが初めて避けた!どうやらプリンセスアンリエッタに攻撃を入れられたことで大蝿の体力が半分までいったらしい。つーことはあれだ。「私はまだ後二段階変身を残しています」的なあれだ。そんで強くなったんでしょ?あれ、違う?


「タカ!独り言はいいからヒールくれ!」


おおっとまたしても独り言が漏れていたらしい。僕はナイトへ駆け寄りながら小さく呟く。


「[回復(ヒール)]」


ボンヤリとした薄緑色の光がナイトへ飛んでいくと、またナイトの動きが良くなった。


体力が半分を切ってから、大蝿の攻撃パターンが変わった。さっきまでは空から僕達に向かってその鋭い足を突き出したり、何故かその短い触角を武器にしていたりと頭のあまり良くなさそうな攻撃がパターン的に行われていた。それが一転、空から状態異常を起こす鱗粉を飛ばしたり(蝿って鱗粉を飛ばすの?)、更に鋭利になったその足での攻撃も素早さを上げた。ナイトやバート、セシリアさんが大蝿の攻撃を受ける回数も増えた。プリンセスアンリエッタも攻撃しずらそうにしている。

でも僕だって何もせずにボケーっと独り言言いながらみんなの戦いを見てたわけじゃないんだぞ。ちゃんと観察しつつちょこちょこ攻撃してたんだから。だからちゃんと見つけた。大蝿の攻撃パターン。


「[(イチ)の型]!」


刀のスキルの技を発動させてちょこまかと空を飛んでいる大蝿が唯一降りてくる足を使っての攻撃の時をつく。


一気に体力が空になる大蝿。


「え?」


何で?何で?いや、え?


光のエフェクトをあげて消えていく大蝿を前に、僕が呆然と立ち尽くしていると、背後に人の気配がした。


「ラストアタックおめでとう、秋桜の君。

まぁ、ボクのアシストあっての成果だけどね」


背景をキラキラさせて微笑むナルシスをあまり視界に入れないようにしながら考察する。

先程のスライムとの戦いの時もナルシスは、攻撃を受けるナイトと攻めるバートの間を器用にすり抜けながら攻撃を繰り返していた。

つまりは、敵にも味方にも気づかれないようにひっそりと攻撃を繰り返し体力を削る。それが彼の戦い方なのだろう。本人の容姿や言動と比べて思いの外地味な、でもとても重要な戦い方に驚いた。


そしてここでやっと大蝿が倒れたことに思い至った。


「ってことは、ってことは……」


バッ、とナイトを振り返る。


「ああ」


よっしゃあ!初ボス戦、終了!!

更新遅くなってごめんなさい……期末と苦手な戦闘描写で難産だったんです。


まだまだ下手で短い戦闘描写ですが、これから上達出来るよう頑張っていきたいと思いますので、おかしな描写を見つけた際は感想にて報告お願いしますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ