CHAPTER,22
頭にぽん、と暖かいものが乗せられた。
何だろう、と思って隣りを見るとナイトが少し微笑んでいる。どうやらこの手は僕を撫でてくれているらしかった。
「さぁ、行こうか」
ナイトに撫でられただけで気持ちが落ち着いてしまった僕は、きっと凄く単純なんだろうな、とぼんやりと思った。
"だいじょうぶ。ぼくがずっとまもってあげるからね"
遠い日の記憶が聞こえた気がして、僕は自分の表情筋が緩むのを感じた。
「おう」
短く返事をして歩きだす。……ナイトの後ろをちょこまか歩いてますが何かー?
「こっちこっち!!」
また大きな声が聞こえる。……多分さっきと同じ奴かな?
噴水のところにいたのは四人の男女。そっか、パーティは六人が上限だからな。
「じゃあ、全員揃ったところだし、タカはこいつ等の名前とかわかんないだろうからフィールドに行く前に自己紹介でもしようか」
ナイトが仕切る。こっそり「なんでお前が仕切ってるんだ?」と聞いたら、
「だって俺、ギルマスだもん」
と人懐っこい笑顔で言われた。えっ、えっと、マジでか。そう言われてみれば"俺のギルド"とか"うちのギルド"って言ってたなぁ。まさか文字通りホントにナイトのギルドだったとは思わなかったけど。
「じゃあまぁ、言い出しっぺの俺からな。
俺はナイト。人間で、パーティでは主に盾役をやってる。ギルド【円卓の騎士団】のギルマスだ」
え……円卓の騎士団……。何かどっかで聞いた事ある名前だなぁ……えっと、どこで聞いたんだっけ?
「ハイハーイッ!次おれね!」
声が大きくて凄くうるさい。成る程、さっきからうるさいのはこの男か。男、と言ってもナイトと同じぐらいの歳に見える。というか、ぶっちゃけこいつの方が言動が幼い分年下にみえるくらいだ。
取り敢えず頼むからもうちょっとボリュームを下げてくれないかな。鼓膜が破れるからさぁ。
「おれはバート!!攻撃職で、おれも人間だ!!よろしくな!!!」
そう言ってこちらに手を伸ばしてくる男。
若草色の短い髪の毛に歳にしては(いや、何歳かは知らないんだけど)丸くて大きな赤い目。身長は高くも低くもなく、僕よりは高いが、ナイトよりは低いかな、と言った感じである。それに少しごつめの鎧を身につけており、何というか、テンプレだな、と密かに思った。
後、よろしくする気があるのならもっと静かにして欲しい。
「次はボクだね。ボクはナルシス。わかっているとは思うけど、見た通りの麗しのエルフだよ。エルフだけど魔法職ではなく攻撃職だ。よろしく、エルフのボクに勝とも劣らぬ美しさの秋桜の君よ」
ゾワッ。
はい、感想は以上!あれ以外にないわ。ヤバいマジで鳥肌立っちゃったよびっくり。麗しのエルフ?秋桜の君ってなんだ秋桜って!!!……え?秋桜の意味?それくらい知ってるよコスモスだよコスモス!!あぁもうこっち見ないでくれないかなイケメン爆ぜろ!!!
白い肌に艶やかな深い紫色の髪と同色の瞳。攻撃職と言うだけあって腰にはレイピアらしき剣をさしている。はいはいイケメンですね。イケメンエルフはこちらを見てにっこり笑っている。
「キモい……はやく目線外してくれないかな……」
「タカ、本音が口から出てる」
隣にいたナイトに頭を軽く叩かれる。
「えっ、マジでか。いつから出てた?」
慌てて聞いたら哀れんだような、同時に小さな子供を見るような目で見られた。
「実は最初から」
「なん…………だと?!」
まさか僕の心の声が口から出ていたなんて……。次から気をつけよう」
「ほら、また出てる」
今度はスパーンッと良い音で叩かれた。ひでぇや!
「全く……ただでさえ昔からお前は口が緩いんだから気をつけろよ…………それにしてもやっぱりお前近くに男がいる時は独り言多いよな……」
ナイトが首を捻っている。
男が近くにいる時は独り言が多い?……もしそうだとしたら無意識だ。気づいたナイトすげぇ。どんだけ僕の事見てんの。やだ怖い。
「何故か今あらぬ疑いをかけられた気がする…………。
はぁ、次どうぞ」
ちらりと僕を睨むナイトを態とらしいキョトンとした顔で見ると、はぁ、とナイトは溜息を吐いてイケメンエルフの隣にいた少女に声をかけた。
「あ、はい。私、セシリアっていいます。竜人で、攻撃職です。まだまだ始めたばっかりなので、ゲーム初心者で、その、不束者ですがどうぞよろしくお願いします!!!」
ガバッと頭を下げられた。
ちょっとびっくりした。うん、顔を上げてくださいなんか僕悪い事した気分なの……。
セシリアさんはスレンダー美人だった。桜色の短い髪に蒼い目。頬には竜人の特徴でもある鱗の模様。僕より少し小さいくらいの大きさの大剣を背中に提げていた。
っていうかえっとセシリアさん?頭下げても僕より頭が上にあるって、それは一体どう言う事だい?
「こほん」
セシリアさんの身長に対して羨望の目を向けていると、その隣から咳払いが聞こえた。
「次は私の番でよろしくて?」
あぁ、人か。何かと思った。それにしても今時自分の事を"私"って言う子まだいたんだなぁ。ロールプレイってやつかな?
「私の名前はアンリエッタ。エルフの王女で魔法職よ。いい?プリンセスアンリエッタよ。以後忘れる事のないよう」
………………うん。なんか濃いのがきた。
ショッキングピンクの髪に灰色の瞳、か……。可愛い。確かに可愛いんだけど、さ。エルフの儚いイメージは何処へ行ってしまったんだろうか、いやこれは僕のイメージの押し付けなのかな。でも、なぁ……。
プリンセスアンリエッタ……ぶくく、面白い。これ後で黒歴史になったりしないだろうか。いやー、イタイ子だなぁ。面白いから僕としては(見てるだけなら)大歓迎なんだけど。
「よろしく、プリンセスアンリエッタさん」
笑いを堪えて言うと、
「あら、貴女物分りのいい人のようね」
と、ドヤ顔になった。
この子結構ちょろいぞ大丈夫なのかそのちょろさは。
隣を見るとナイトが俯いている。握った拳がプルプル震えているから笑いを噛み殺しているのだろう。わかりやすい奴。
「最後に僕からかな。僕はタカ。獣人の回復職だ。足手まといにならない様に頑張るよ、よろしく」
僕もサクッと自己紹介をする。
それから、「あ」と思い出して続ける。
「後、僕は男だからな」
噴水の広場に四人の叫び声が響いた。
あー、うるさいうるさい。
そういえば、ですが。登場人物達のイラストとか見たい人っていますか……?
もしそんな方がいらったしゃったら、活動報告あたりで公開したいと思いますが………………いますかね?




