CHAPTER,16
赤い光を目指して走る。走る。思いっきり走れば走る程スピードが上がっていく。こんなのは初めてだ。
昔から、走る事は嫌いじゃなかった。でも、僕は走るのが遅かったから。それで小さい頃に笑われて以来、思いっきり走った事はない。つまり、僕が思いっきり走るのは約十年振りなのだ。
そういえば、とプロフィール画面を確認して、ギョッとする。
「げーっ!HPが半分どころじゃないよ!三分の一くらいしかないよ!イエローゾーン突入だよ!!」
やっぱり僕にはまだまだ三群は多過ぎた様だ。過信はよくないなぁ。危うく着いた途端にデスるところだった……。
【回復】の初期魔法[ヒール]を自分にかけて体力を回復させる。
HPが満タンになったのを確認してからまた走り出す。
普通こんなにもたもたしてたらもうとっくにデスってると思うんだけどなぁ……まだ声が聞こえるんだよな……ってことはまだ生きてるってことだよなー。
あ、そういえばこれまだホントにイベントかどうかわかんないんだよな。MPKの可能性も捨てきれないし。
まぁ、遠くから見るだけだからいいか。
赤い光がだんだんと近づいてくる。
「そろそろだなーっ、と」
昨日買ったばかりのスキルを発動させる。
【千里眼】ーー遠くまで見渡すことが出来る。
【暗視】ーーー暗いところでもはっきりと物を見ることが出来る。
つまりこれがあれば暗いところもなんのその!何の支障もなく戦うことが出来る。
……ちょっと高かったけどなー。また1000J取られたし!二つも買ったのに一銭も引いてくれなかったし。
んーと、あ、やっぱりまだいた。大きさから考えて……子供かな?少年がいた。
その奥に見えるのは、っと……。
「……………………」
えっとぉ……?
あの、さっきから僕の目に映っているあり得ない数のモンスターは何でしょうか。ドラゴンとか見えるんですが何でしょうか。あぁ、幻覚なんですね、わかります。
「ぎゃぁぁぁぁああああっ!!
死ぬっ死んじゃうぅぅぅぅうううう!!!」
「GYAAAAAAAAAAAAA!!!」
あぁ、少年の叫び声の後に幻聴まで聞こえるや。これは重症だなー。
「ちょぉぉおおっ!見て見ぬ振りは良くないですよ?!!助けてっ、あ、いや、逃げてぇぇええ!!!」
ヤバいなんかすっごい叫んでる。「助けて」って言った後に「逃げて」ってどういう事だ。
うん、まぁなんか良い子っぽいからいいか。最近自己中な子供が増えてるからねー。いいと思いますよ、教育がなっているのは。
少年が必死の形相で、僕とは反対の方に走る。MPKにならない様にしてくれてるんだな。
やっぱり子供はイイネ。腹ん中真っ黒な汚い大人なんかよりよっぽどいいや。なんか助けたくなっちゃうなー……いや、無理だけどね?
だって考えてみてよ。ドラゴンって何なの。隣りにいるのはオークさんですかね?あらやだそのお隣にはなんかおっきな狼さんがいらっしゃるじゃないですか。
…………馬鹿じゃん?もうさ、お前等の活動範囲絶対此処じゃないよね、オーバーキルもいいとこなんだよ。お前等なんて場違いなんだよ。ばーか。
……なんて現実逃避もしたくなるよね。僕悪くない。だって、さっきまで少年追いかけてたはずの場違いモンスター達が思いっきり少年無視して僕の方に走ってくるんだもん。僕、悪くないよね。
悪いのは絶対、この場違いなモンスター達と僕の意味不明なUSだよね。
少年が一瞬こちらを振り返って、ギョッとした。何か叫んでいた様な気もするけど……。
そういえばこのゲームって痛覚の再現もされてるんだよな。
そんな事を考えた次の瞬間、頭部に衝撃が走り、目の前が真っ暗になった。
でれでーん。初、死に戻り!
今回は少し更新が遅れてしまいました。すみません、精進します。




