CHAPTER,12
あのメールの少し後、僕達は“はじまりの街”の東門まで来ていた。
僕はナイト達に煩く言われた挙句、スキルショップで【回復】を買わされている。
因みに普通のスキルはスキルショップで買うことができる。
値段もスキルの効果もピンからキリまでだが、レア以上のスキルはスキルショップでは売っていないらしい。僕が見た一番安いスキルは【スキップ】の200Jで、一番高いのは【闇魔法】と【光魔法】の10000Jである。Jとはこの世界の通貨の事であり、プレイヤー達はあらかじめ1000Jが持ち物として持たされている。
しっかし、初期所持金の十倍もするなんて……買う人いるのか?あ、いるか。β版からの人とか、廃人さんとか、……後は厨二の人とかが。
そしてこの【回復】の値段は1000J。所持金ピッタリである。
思わず「高っ!」っと漏らすと、NPCらしき店員に、
「回復職で、最初にこのスキルを貰ってない奴なんてそうそういないからな。誰も買うと思わなかったんだよ」
と、笑われた。
悪かったな、非常識で。
店員の言葉を聞いた瞬間吹き出したナイトの足を僕が全身全霊で踏んづけたけど、これはあんまり大した事じゃない。
「さて、んじゃ早速初戦闘といきますか」
踏まれた足を摩りながら、ナイトが明るく言う。
「お姉ちゃんにとってはVRMMOでの初めてになるわけだから、マルも張り切ってサポートしちゃうよー!」
マルも楽しそうだ。てかおい、初めての戦闘だからな?
色々と語弊のありそうな言い方はやめて欲しい。
そうか……これは僕にとっては初のVRMMOでの戦闘になるのか。何だか僕も楽しみになってきたな。
「じゃあホンラビさんでも狩りますかねー」
「そうだなー、やっぱ東門といえばホンラビだよなー」
顔を見合わせて頷くナイトとマル。
えっ何なのこいつ等、まだあの芝居がかった仕草続けてんの?
「ホンラビって何なんだ?何と無く分かるけどちゃんと説明してくませんかね?β版からの廃人さん」
僕を置いて盛り上がる二人に、少し意地悪な言い方をしてみたのだが、
「あ、ごめんな。多分すぐポップすると思うから、そしたらわかるよ」
「来て欲しいような、来て欲しく無いような、微妙な感じですねー」
ナイトには至極申し訳ない顔をされてしまったし、マルに至ってはお前話聞いてんのか、って感じな返事が返ってきてしまった。
ぼけっとしていると、目の前で唐突にポンッという音がする。
「来たぞ!」
ナイトが叫ぶ。
慌てて距離をとって見上げてみれば、そこに居たのは巨大な兎。
そう、角を持った兎である。
あ、やっぱりホーンラビットってそういう事なんだ。
内容に変化はないですが、多少文体を直しました。




