CHAPTER,1
それはある夏の昼下がり。
「なぁ、一緒に『SevenSevenceOnline』やろうぜ!」
「はぁっ……?!」
幼馴染のその一言から始まった。
えぇっと、まず始めに、素っ頓狂な声を上げたのが僕、名前は鷹目夜人。墨みたいに真っ黒な髪の毛が自慢の高校二年生の男子だ。
それから突然変なことを言い出したのが僕の幼馴染の結城騎士。明るい茶色の髪に見た人を安心させるような笑顔がチャームポイントのこちらも高校二年生の男子だ。
只今なんと同じクラスで、名前が同じで紛らわしいとかで、僕が”タカ”、騎士が”ヒデ”と呼ばれている。
なぜ騎士がヒデと呼ばれているのかというと、どこかのお調子者の男子が「勇気のある騎士ってことは英雄だから、結城は英雄で良くない?」とかほざいたからである。
個人的にはさりげなく結構ネーミングセンスあると思う。
まぁ僕たちはお互いにナイトと呼び合ってはいるが。
そして、
―――――架空世界【エトワーランド】を自らの化身を冒険者とし、様々なスキルを使いこなして駆け抜けろ!
それが『SevenSevenceOnline』のうたい文句である。
これは、今世間の注目を集めている大手MMO会社、七福社が開発した、新感覚MMOである。
ただ、発売したと言う表現はこの場合は不適切かもしれない。
勿論β版が配信され、テストも終わっているし、七月七日には正規版も限定ではあるが、販売された。
しかし『SevenSevenceOnline』はまだ開始していない。
販売こそしたが、正式な開始がされるのは七月二十七日からなのだ。
ちなみに今日は七月二十五日、先程終業式も終わり、今はその下校中だったりする。
「な、な?一緒にやろうぜ」
「やろうぜ……って騎士お前、僕はMMOに必要なものなんて持ってないぞ。
まぁ妹なら持ってると思うけど」
そう、MMOである『SevenSevenceOnline』をプレイするには同じく七福社が販売している『MUSEI』というヘルメット式の機械が必要なのだ。
ゲームこそ好きだが今まで訳あってMMOには一回も手を出したことがなかった僕はもちろん持っていないが、廃ゲーマーの妹やこの幼馴染はきっと発売日とかに買いに行ってたんだろうなぁ。
「あーまぁマルちゃんは発売日に買いに行ってたもんなぁ。途中で会ってびっくりしたよ」
やっぱり……二人してあの日いなかったからもしかしてと思っていたが、案の定買いに行っていたらしい。でもあいつのことだから買ったらその日にうざいぐらい自慢してきそうなもんだけどなぁ。
ちなみにマルちゃんとは僕の妹の鷹目真昼の事である。
「必要なものについては大丈夫!ちゃんとあるから!」
笑顔で言い切る騎士。
「ちゃんとあるってお前……なんか悪いよそんなの」
どういうことだろう?僕のために買っててくれたとかだったら本当に申し訳なさすぎる。
そもそも僕は騎士や妹と違って生粋の廃ゲーマーじゃないし、もしそうであっても幼馴染とはいえ他人から物を貰うとか畏れ多すぎる。
「はははっ、安心しろよ。
俺とマルちゃんでさ、当てたんだよ。発売日にあった七福社主催のくじ引き大会で。
お前のために二人で頑張って当てたんだから、貰ってくれよな。夜人」
「なんで……」
驚いた。確かにあの日帰ってきてから妹がやたら僕の方を見てニヤニヤ楽しそうにしてたから何かあったのだろうとは思っていたが……まさか僕のためだったとは。
「何でってそりゃ今月がお前の誕生日だからだよ。
俺もマルちゃんも、『SevenSevenceOnline』はお前と一緒にやりたかったしな。
だからこれはちょっと遅れたけど、俺とマルちゃんからの誕生日プレゼントってことで」
「あ……ありが、と……ぅ」
そこまで言われると受け取らないわけにはいかない。
思わぬプレゼントにお礼の言葉が尻すぼみになってしまったが気にしないでほしい。
「わはっ、詳しいことはマルちゃんから聞けよ。
『MUSEI』もマルちゃんが自分のと一緒に保管してるらしいし。
んじゃ、次会うときは『SevenSevenceOnline』の世界で会おうな!」
「お、おう!」
気がつけばもう家の前で、僕らは分かれた。
内容に変化はないですが、多少文体を直しました。