チェンジリング(6/20編集)
私は、お生憎と『顔』というものを持ち合わせておりませぬ。
我が主は、私の美貌まで吸い尽くしてしまったのですから。
あの方のご記憶に無かろうと、私には繊細に覚えておりますとも。
その時の我が主は――失礼ながら――今の様な美貌をお持ちではありませんでした。
いつもいつも、鏡中に存在する私顔を観て呟いたので御座います。
『御前の美貌が憎いですわ』
そして、主はお気に入りの藍色の手鏡を池へ放り投げられたのです。
すると如何した事でしょう。
次の日には、この世とは思えない程の整ったお顔が鏡に映り出したのです!
その時の主の表情は、とても忘れる事の出来ぬ笑みが……!
私ですか?
鏡中に存在する私は酷い御面を着け、主の眼の前に存在しておりますとも。
ええ、良いのです。主のあの笑顔を毎日拝見出来ればそれで……。
とまあ、思っていたのですけどねぇ。
幸せそうな主を毎日拝見するのは、それもう楽しゅうございました。でも、自分ならもっと主を幸せにできると思っていたのも事実。
――××様、どうぞ鏡面世界へおいで下さいな、誰よりも何よりもアナタ様を愛でてさしあげますよ、永遠に。
書き直すかもしれません……。