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Checkmate  作者: シャット
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太陽と疎遠の街

この世に王は2人もいらない。

全てを統べる力を持つのは選ばれしものだけ。

さあ崇め、讃えよ、愚民ども。

黒は歓喜の賛美歌を歌い、白は絶望の悲鳴を奏でよ。

この私が支配する、レックスの新時代の到来を祝せ。


見渡すかぎりの曇天の下で、洗濯物を取り込みに急ぎ足で家へと戻る主婦たちの

姿を視界の隅に捉えた。

ここ英国・ノッティンガムの街はまるで太陽に見放されたかのようだ。

1年の洪水量はここ数年で格段に増えた。

それが子供たちの外で遊ぶ機会を奪い、若者の運動不足による身体能力の低下が

深刻な問題となりつつある。

4年前に生まれた私の子供も例外なくそのうちの1人である。

口を開けばゲーム、ゲームと喚きたてる。

いくら1日のゲームの時間を制限しても私が留守の間や、私の目を盗んでゲームに

入り浸っている。

この世に生を受けてわずか4年でここまで悪知恵を培ったのも

悪天候のおかげた、と天に皮肉を言っている親は私一人ではなかろう。


今日は仕事帰りに友人のヘイワードが経営する花屋に立ち寄る予定だ。

買うものは決まっている。

妻が好きな赤いラベンダーだ。

7月28日、今年も妻の誕生日がやってきた。

白の建物に屋根の赤が映える、ヘイワードの花屋はこの地味な通りの中で

比較的見つけやすい。

もともとあまり流行ってはいなかったが、この降り続く雨のせいで

花は育たなくなり商売にならないとつい先日も彼は怒鳴りたてていた。

私はそんな彼の店の唯一の顧客だ。

それには1つ理由がある。

と、ふと私の頬に冷たい雨が1滴流れた。

まずい、本格的に降り出すぞ。

そう思った矢先ゴウゴウと雨が地面をうつ激しい音が耳に入ると同時に

バケツをひっくりかえしたような大量の雨水が私の頭に降ってきた。

ヘイワードの店まで手持ちのかばんが濡れることも気にかけず走った。

途中若いサラリーマンがバッグを落として、中に入ってた書類が

水浸しの地面にじわじわと吸い込まれていくさまを呆然と見ていた。

その先にも老婆が買ってきたトマトが坂を転がっていくのを必死で追っていたが

気に留めている暇はない。

やっとのおもいでヘイワードの店へ到着した。

あいにく今日は革靴ではなくスニーカーだったので中までびしょ濡れだった。

きっちり正装をしてこなくてもよい、うちの会社の規制のゆるさを恨んだ。

「おい、おまえさんまた傘をぶっこわしたのかい?」

店の奥から店主のヘイワードがのっそり出てきた。

どうせ今日も客がいなくて暇だったんだろう。

おおかた彼もゲームにでも没頭していたのではないか。

運動不足はこんな世代にまで及んでいたかとおもうと呆れてものも言えない。












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