魔法を使う者
「兄上もただ今帰りました。ご心配おかけしてもうしわけありませんでした」
マリアは兄の腕に抱かれたまま兄の顔を見て微笑んだ。
行き場をなくしたロシュの手は肩手は下ろし、片手は口元に運ばれコホンと一つ咳をした。
「して、マリア?今までどこに行っていたんだ?」
ユリウスとマリアとの話を聞いていたカルオが話しかけた。
「はい。サギネル王国第一王子ムーン・ミラン様と自らの足でサギネル王国まで行っていました。」
「な、なんと!?何故お前がサギネルに行くのだ!」
「話があるだけだと言われたもので。父上、私からもお話があります。」
「な、なんだ?」
「・・・」
マリアはしばらく目を閉じて下を向いていた。
「父上、ロシュ・ゾーン様との結婚なかったことにさせていただきたいのです。」
!!?? その言葉を聞いた謁見の間にいた者達全員が驚きの声をあげた。
「ま、マリア!?どういうことだ!?」
一番最初にマリアに問いかけたのはロシュだった。
「どうもこうも、魔王召喚自体をなかったことにしていただきたいのです。」
「自分が言っている事がどういう事かわかっておるのか!?」
次に問いかけたのはカルオだった。
「わかっております。私はムール・ミラン様と結婚致します。」
「何!?」
「この結婚は戦争をなくすためというもの、でしたら私とサギネルのムール様が結婚すれば国は合体する事になるでしょう。そうすれば戦争がなくなるだけでなく国が合体しさらに大きな物になるかと思われるのですが?」
「・・・・むぅ・・・」
カルオ王は玉座に座り考えこんでしまった。
「マリア・・・」
「申し訳ありません。ロシュ様。ですが、私決めたんです。あなたと別れてムール様と結婚します。」
マリアは微笑みながらロシュにそう言った・・・が、その瞳に光はなかった。
瞳に光がないことに築いたロシュは少し怒ったような顔をした。
ロシュはそのまま目を閉じた。
『ここは・・・どこ?暗い・・・怖いよぉ・・・ロシュ様・・・あれ?ロシュ・・・って誰だっけ?え?わたし・・も誰?怖い・・・・私は誰?ここはどこ?怖いよ・・怖いよ・・・』
『・・・リア・・マ・・・リア・・・マリア』
『誰かの声・・・?誰?マリアって?』
『私の名はロシュ。魔界国第一王子ロシュ・ゾーンだ。マリア、私がわからないのか?』
『ロ・・・シュ?魔界国?わ・・わからない!わからないの!!!』
少女はそのまま手を顔にあて泣きだした。
『マリア・・・泣くな。泣かないでくれ。私はお前の泣き顔なんか見たくない・・・。私は・・・私は、お前の笑顔が見たいんだ』
そう言いロシュはマリアを抱きしめた。
『(どうしてだろう・・・この人の胸の中は暖かくて・・・とても懐かしい・・・私・・・この人を知って・・・る?昔・・・会った事がある・・・あれは・・・いつ??そうだ・・・私がまだ・・・小さい時・・森で迷子になって、助けてくれた男の子も私の事抱きしめてくれた。あの子と同じ感じがする・・・)』
すると、突然ロシュの腕の中のマリアから光が放出された。
そして現実世界のマリアとロシュは気を失って倒れた。
「マ、マリア!?」
「な、何事だ!」
何が起きたのかわかっていないカルオとユリアスは茫然とするばかりだった。
その後、ロシュとマリアは寝台に運ばれた。
「・・・う・・・・」
最初に目を覚ましたのはロシュだった。枕元にはユリアスがいた。ユリアスは開口一番に
「貴様マリアに何をした?」
と言った。
ロシュは横になった状態のまま
「操られている状態だったのでマリアの心を救っただけです」
と答えた。
「操られていただと?」
「はい」
「・・・詳しく話せ」
「魔王に聞いたところ私の従兄弟が行方不明になっておりまして。おそらくサギネル王国も悪魔召喚を行い私の従兄弟を呼んだのかと、そしてマリアを誘拐してあっさり返すと言う事は相手国は私が一番苦手としてて従兄弟が得意としてる魔法をマリアにかけると思ったのです」
「それが人を操る魔法なのか?だが、お前は苦手なのだろう?それならばどうやって助けたと言うんだ」
ユリアスは怒った表情をかえることなく聞いた
「確かに苦手ではあります。この魔法を解くための魔法は知りません。何故ならその魔法を解くための魔法は相手の心を壊して救うという手段しかないからです。なので私は彼女の心に入り込み、心自信に話しかけてみたのです。そして、成功しました。」
「で、では!?」
それを聞いたユリアスはやっと表情を緩めた。
「はい。元のマリアに戻り、心も壊れていません。今までどおりのマリアです。」
「そ、そうか・・・そうか・・あり・・が・・とう。ありがとうロシュ。我が愛する妹を救ってくれて感謝する・・・」
ユリアスはそう言うとロシュの手を掴み頭を下げた。
「我が妻を救ったまでのこと。お気になさらず。マリアのところへ行ってあげてください。」
ユリアスはロシュの手を離し部屋を後にした。
部屋にはロシュただ一人になった。
「そこにいるのだろう?わかっているんだぞ、結界に穴が開いたからな」
ロシュがそう言うと寝台前の何もない空間からロシュと外見がそっくりな男性が姿を現せた。ウィリアムだった。
「・・・やはり人間界にいたのだなウィリアム。」
「ああ、だって魔界を継ぐ者であるお前が人間の少女に恋をしたと聞いたからね。どんな女か確かめてみたかったんだよ。でも、まあ・・・クス・・・お前趣味かわったな。昔はもっと柄のいい彼女ばっか周りに歩かせていたのに、今ではあんな餓鬼っぽいしすぐ泣くしめんどそうだ。昔のお前の趣味のが俺は好きだったよ。」
「お前には関係のない話だろう。それにマリアの良いところは私やマリアの家族が十分なほどに知っている。」
「関係なくもないだろう?お前も私も次期魔王候補なのだからな。将来魔王になるものが人間の女に恋など考えられない事なんだぞ」
ウィリアムは腕組みをしながらそう言った。
「ウィリアム、マリアに魔法をかけたのはお前だな?」
「ん~?なんでそう思うんだ?」
「私の苦手としてる魔法を知ってるのは俺の従兄弟で幼馴染でであるお前か現魔王だけだ。」
「そうだっけー?まぁ、もしそうだとしても俺には関係ないね。」
「私の妻に魔法をかけたのだぞ?関係ないわけがないだろう。」
「俺がかけた魔法は確かに心を操るものだが、あの魔法は心に悩みなどを持っている者にしかかからない、ってことはあの女は何かしらの悩みや闇が心の中にあるってことだぞ?その悩み、お前にはわかっているんじゃないのか?ロシュ」
「・・・・・・」
ウィリアムの言葉にロシュは黙ってしまった。