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純粋無垢を護らねば!〜リン×ラン×キッチンカー日常〜  作者: おりみみ


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第6話 年賀状を護らねば!(リン視点)

「ランちゃん見て見て! 念願のこたつよ!」


「……リンはもうぬくぬくしてるなの、オフな時はエプロンをちゃんと脱ぐなの」


 私達はホームセンターでこたつを購入。

 海までは明日の朝くらいまでに着けばいい頃だし、この午後三時からお客さんがめっきり来なくなる時間帯だからこたつで休憩中よ。


「ランちゃんも一緒にぬくぬくしよ?」


「この狭いキッチンカーに合わせた一人用こたつにどうやって入るなの」


「じゃあ私がランちゃんの椅子になるわ、私の前においで?」


 こたつに寄ってきたランちゃんは身体をねじ込みさせながら入っていくわ。


「んー狭いけどどうにか侵入成功なの! 枕みてぇなのー!」


 ランちゃん湯たんぽは温かいし、ランちゃんの頭に胸を乗せるのも楽で一石二鳥ね。


「こたつの上になんでフライパンマコがいるなの?」


 フライパンの中でくつろぐマコガレイに、ランちゃんは頭にクエスチョンマークを浮かべて聞いて来たわ。


「みかんを食べながらマコちゃんの虚無な瞳と見つめ合っていたのよ」


「なんて暇の潰し方なの」


「暇でいいじゃないの~。いつも営業で忙しい身体を休めないといけないのよ?」


「まあ、それもそうだけどなの」


 それに、まじまじ見ると意外と可愛いし、私に見護られるマコちゃんも幸せのはずよ。


「そうだわ、このぬくぬくタイムで溜まりに溜まった年賀状を書き上げるわよ!」


 普段仕込みや営業やで忙しいから、こうゆう時に時間を有効活用しないとね!


「すっかり忘れてたなの。年末任務をクリアしないといけないの」


「ふふふふ、この時に用意していた秘密兵器があるのよランちゃん」


 私は自信満々にレジ袋から取り出すわ。


「こたつと一緒に購入したこの大きな筆よ!」


「……ただの習字の筆なの」


 私はマコちゃんを定位置のコンロに移し、みかんの残骸をパッパと払い除け、無地の年賀状を無造作に並べる。


 この白いキャンパスを見ると芸術魂が燃え上がるわ!


「テレビでやってた大筆パフォーマンスに興味があったの、これでババっと書いちゃうわよ。さあランちゃん、私の腕をとくとご覧あれ!」


 紙コップに入れた墨を筆に均等に馴染ませたら、ここから私のターンよ。

 ランちゃんの顔どころかランちゃん全身が胸に隠れて見えないけど、この緊張感と圧迫感で震えるに震えて期待しているに違いないわ。


 大筆パフォーマンス縮小版の始まりよ!


「てやあああああああああ!!!」


「わああああああ顔に墨がぶっかかるなの!!! 今すぐそのデタラメな筆使いをやめるなの、大筆を冒涜してるなのー!!!」


 勢い良く飛び散った墨が、私の胸下にいるランちゃんの顔面にかかってしまったわ。


「あ、ごめんなさいランちゃん、お顔が墨でベッタリね……ティッシュでふきふきするわ」


「ふきふきじゃダメなの、伸ばさないようにトントンして……あああ! これじゃふきふきどころかゴシゴシなのー!」


 あらら、ランちゃんの可愛い顔がさらに台無しになってしまったわ……まあ私も墨で汚れちゃったし後で一緒にお風呂に入ればいいわ。


「それよりランちゃん、この年賀状のイラストどうかしら? 結構可愛いでしょ?」


「それよりじゃないなの、ん……これは絵なの? 赤ちゃんが書くラクガキに見えるなの」


 手に取った一枚の年賀状に哀れな視線を向けるランちゃん。

 赤ちゃんじゃなくて十七歳ラクガキよ。


「ランちゃんにはまだこの芸術魂が分からないみたいね、これは野原を颯爽と駆け抜ける可愛いお馬さんよ」


「来年の干支は馬じゃなくて羊なの! これじゃ可愛いじゃなくて可哀想な馬の爆誕なの、そもそも馬にも成れなかったキメラなのー!」


 そ、そこまで言わなくても……私でもちょっとは落ち込むこともあるのよ?


「そうね、じゃあモッフモフを纏わせて~お馬ひつじちゃんの完成よ!」


「……キメラ完全体になったなの、もう救いようが無い哀れな生物なの」


 お馬ひつじちゃんも可愛いと思うんだけどなあ。


 私の感覚って良くズレてるなんて言われるし、絵の才能が凡人以下なんだわ。


 そういえばキッチンカーを始める時も、お前じゃ無理だってみんなに反対されたのよね。

 そんな中ランちゃんだけが賛成してくれたけど、もしかしからランちゃんも心の中では……


「……うッ……うぐッ……」


 ちょっと思い出したら涙腺が緩んちゃったわ。


「リン!? ……リンごめんなの、ワタシが悪かったなの、この年賀状にワタシがメッセージ書くからリンはこたつでみかん咥えてるなの」


 私の滴る涙を拭いて、みかんを渡すランちゃん。

 繊細に筆を走らせ、綺麗で可愛らしいイラストを描いているわ。


 やっぱり私と違って上手いなあ。


「……私はランちゃんの足でまといなのかな?」


「そんなことないなの、リンはどこか抜けてるところはあるけど、それ以上に優れたところがいーぱいあるなの! 元気もたくさん貰えるなのー!」


 大袈裟に身振り手振りしているところ……なんだか可愛いわね。それに。


「ふふ、ランちゃんの顔黒くて面白いわ」


「むう、もうもうなの」


 私の涙を拭き取ってくれるムスッとしたランちゃんに、私は癒しを貰える。


 私もランちゃんに少しでもお返しをしなくちゃいけないわ、弱音を言ってる暇があれば動かないと。


「ありがとねランちゃん、私はもう大丈夫よ! 営業時間前だけどもう開いちゃいましょ」


「あ、そのまま墨だらけじゃダメなの!」


「そうだったわ、脱いでお風呂に入らないと」


「キッチンカーの窓を開けたまま脱ぐななの、丸見えになっちゃうなの!」


「まあエプロン着てれば大丈夫よ」


「エプロン一枚でもバレバレなの! 脱いだら脱いだでお風呂に入るなのー!!!」


 二人仲良くポータブルバスタブで墨を落としたその後、リンが描いた年賀状お馬ひつじちゃん、は偶然通りかかった一人のアーティストの目に留まりキッチンカーで期間限定販売開始。

 完売して喜び合う私たちは、もう一度年末任務をクリアしなくてはいけないことに気づかず一日を終えたわ。

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