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転生したら最強能力が『見た男を狂わせる呪い』でした〜助けた騎士も優しかった貴族も、全員が私を監禁しようとしてくる〜  作者: 品川太朗


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【第14章】迫りくる暗殺者と、真実の告白

深夜の脱出劇、開幕です。 しかし、彼らが大人しく寝ているはずがありません。 廊下で待ち受けていたのは、キャスを狙う「掃除屋」たち。 物理無効の体を持つ澪が、盾となって立ち塞がります。

 深夜。


 屋敷は巨大な怪物が息を潜めているかのように、不気味に静まり返っていた。


 私は【賢者スキル】で気配遮断ステルスを展開し、月明かりすら届かない廊下を、影のように音もなく滑るように進んでいた。


 約束の時間だ。


 客室棟で待つノース皇女とキャス様と合流し、警備の薄い裏口から脱出する。


 心臓が早鐘を打ち、肋骨を内側から叩いている。

 もし見つかれば、今度こそ私は愛という名の地下牢に永遠に繋がれ、二度と太陽の下を歩けなくなるだろう。


(急がなきゃ……)


 角を曲がり、キャス様の部屋の重厚な扉が見えた、その瞬間。


 私は息を呑み、足を凍りつかせた。


 扉の前に、闇に溶け込むような黒装束の男たちがいた。

 三人。手には月光を吸い込む、つや消しの短剣が握られている。


 彼らは無言のまま、音もなく、手慣れた動作でキャス様の部屋の鍵を開けようとしていた。


 暗殺者。


 直感した。背筋に氷柱が突き刺さる。ロミオ様たちの差し金だ。


 彼らは「明日の朝まで待つ」なんて悠長な慈悲は持ち合わせていなかった。

 今夜この瞬間に、邪魔な「害虫」を物理的に消去するつもりなのだ。


(キャス様が、殺される!)


 思考する時間はなかった。

 私は気配遮断をかなぐり捨て、床板がきしむほど強く踏み切った。


「危ないッ!!」


 私の叫び声が静寂を引き裂くと同時に、暗殺者の一人が扉を蹴破り、獲物に飛びかかろうと身を躍らせた。


 間に合わない――いいえ、間に合わせる!


 私は【身体能力MAX】の速度で、風を巻き起こしながら彼らの間に強引に割り込んだ。


「邪魔だ!」


 暗殺者が振り返りざまに、殺意の塊となって私の首元へ短剣を突き出す。


 避けられない。

 攻撃すれば、その余波で部屋ごとキャス様を吹き飛ばしてしまうかもしれない。


(――受けるしかない!)


 私は奥歯が砕けるほど噛み締め、両手を広げてキャス様の部屋の入り口を背中で塞いだ。


 鋭利な刃先が、私の喉元の柔らかな皮膚に突き刺さる――はずだった。


 ガギィンッ!!


 肉を断つ音ではない。

 鋼鉄が岩盤に弾かれたような、硬質な破壊音が響き、暗闇に火花が散った。


 痛みは、ない。

 私の首は斬れていなかった。薄皮一枚、傷ついてすらいない。


 逆に、暗殺者の持っていた短剣が、半ばからポキリと無惨に折れ、床に落ちて乾いた音を立てた。


「な、なんだこの女……硬すぎる!? 人間じゃねえ!」


 暗殺者が驚愕に目を見開き、化け物を見る目で後ずさる。

 その視線に、私は心臓を掴まれたように縮み上がった。


 神様からもらった「最強の防御力」。

 それは私を傷一つつけさせない代わりに、私を人間ではない「異質な何か」に変えてしまっていた。


「……何事だ!」


 騒ぎを聞きつけたノース皇女と、彼女の護衛騎士たちが廊下の反対側から駆けつけてくる。


 形勢不利と見た暗殺者たちは、忌々しげに舌打ちをして窓を突き破り、ガラス片と共に闇夜へと消えていった。


「澪様! ご無事ですか!?」


 部屋から飛び出してきたキャス様が、私の肩を掴む。

 彼は寝間着姿で、状況が見えていないはずなのに、迷うことなく真っ直ぐに私へと手を伸ばしてくれた。


「キャス様……よかった、無事で……」


 緊張の糸が切れ、私はその場にへなへなと座り込んだ。


 自分の首筋に触れる。血は一滴も出ていない。つるりとした無傷の肌。

 でも、心の傷口がパックリと開いた気がした。


「……見たでしょう。私の体、刃物も通らないんです。やっぱり私、化け物なんです」


 私が泣きそうな、震える声で言うと、キャス様は静かに首を横に振った。

 そして、そっと私をその腕の中に抱きしめた。


「いいえ。貴女は命がけで私を守ってくれた、誰よりも勇敢な女性です。……温かい。これが、貴女のぬくもりなのですね」


 その言葉に、その体温に、凍りついた心が溶かされていく。

 救われた気がした。


 でも、事態は感傷に浸る時間を許してはくれなかった。


 ウウウウウウウ――ッ!!


 屋敷中に、鼓膜を圧迫するような、けたたましい警報音が鳴り響いたのだ。


「賊だ! 屋敷に賊が入ったぞー!」


「皇女殿下をお守りしろ! 曲者を逃がすな!」


 廊下の向こうから、松明を持った兵士たちの軍靴の音が、地鳴りのように迫ってくる。


 先頭に立っているのは、アステルだ。

 彼は血相を変えて(という完璧な演技をして)駆け寄ってきた。


「皇女殿下! ご無事ですか! 不届きな賊が侵入したとの報告が!」


「白々しいぞ、アステル! 今の暗殺者は貴様の手の者だろう!」


 皇女様が怒髪天を衝く勢いで怒鳴るが、アステルは涼しい顔で聞き流す。

 その目は全く笑っていない。


「何を仰いますか。我々は貴女方を守るために必死なのです。……さあ、ここは危険です。別棟の『安全な部屋』へご案内します。犯人が捕まるまで、そこから一歩も出ないように」


 安全な部屋。

 それはつまり、地下牢か、窓のない監禁部屋のことだ。

 彼らは「暗殺未遂」という自作自演を口実に、皇女様たちを公式に軟禁し、永遠に口封じをするつもりだ。


「断る! 我々は今すぐ帝都へ帰還する!」


「お断りします。夜間の移動は極めて危険だ。もし『賊』に襲われて命を落とされたら、どう責任を取ればいいのです?」


 アステルの背後から、完全武装した騎士たちが黒い波のように現れ、退路を塞いだ。


 脅しではない。

 彼らの目は、明確にこう語っていた。「ここで殺して、賊のせいにしてもいいんだぞ」と。


 皇女様はギリと奥歯を噛み締め、私とキャス様を見た。

 そして、悲壮な覚悟を決断した。


「……近衛騎士隊、聞け!」


「はっ!」


「我が命に代えても、友を守れ! ――道を切り開けぇッ!!」


 皇女様の裂帛の号令と共に、わずか数名の近衛騎士たちが、死を覚悟してアステルの軍勢に特攻をかけた。


「行こう、澪! キャス!」


 皇女様が私の手首を掴み、強く引く。

 私たちは混乱と怒号の渦中、屋敷の深部へと走った。


 目指すは裏口ではない。外はすでに鉄壁の包囲網が敷かれている。

 向かう先は――地下。


「この屋敷の地下倉庫には、古い下水道への入り口があるはずだ! そこなら、奴らの包囲網を抜けられる!」


 背後で、剣と剣がぶつかり合う激しい音と、肉が斬られる音、そして近衛騎士たちの断末魔が聞こえる。


 私のために。私がここにいるせいで、また人が死ぬ。


 ごめんなさい。ごめんなさい。


 私は溢れ出る涙を乱暴に拭い、キャス様の手を痛いほど強く握りしめて、口を開けた暗い闇の中へと飛び込んだ。

「賊だー! 大変だー!」


アステルさん、演技派ですね。 自分で暗殺者を送り込んでおいて、失敗したら「賊から守るために監禁します」という完璧なプランB。 息をするように自作自演をする彼らの執念深さにゾッとした方は、 ぜひ下にある【☆☆☆☆☆】から評価、ブクマをお願いします!

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