表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら最強能力が『見た男を狂わせる呪い』でした〜助けた騎士も優しかった貴族も、全員が私を監禁しようとしてくる〜  作者: 品川太朗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/10

【プロローグ】未来の鳥かご

目が覚めると、そこは鉄格子の嵌まった豪華な寝室。 足には鎖。目の前には、狂った瞳で愛を囁く男たち。


これは、最強のチート能力を持って異世界転生したはずの少女が、 愛という名の地獄(鳥かご)に堕ちるまでの物語

 カチャン、という冷たく無機質な音が、重苦しい静寂を切り裂いた


 それが私の足首に嵌められた鎖の音だと理解するのに、今の私はどれほどの時間を浪費しただろうか。

 意識の浮上とともに、まとわりつくような絶望が足元から這い上がってくる。


 豪奢な天蓋付きのベッド。

 肌を滑る最高級シルクのシーツは、皮肉なほど滑らかだ。


 窓には、決して開くことのない分厚い鉄格子が嵌め込まれ、外の世界を四角く切り取っている。


 薄暗い部屋の向こう側、光の届かない場所で、愛おしそうに私を見つめる影が揺らいだ。


「……おはよう、澪。今日も顔色が悪いね」


 鼓膜を甘く痺れさせる、蜂蜜のようにとろりとした声。


 かつて私を優しくエスコートしてくれた、貴族のロミオ様だ。

 彼は音もなくベッドサイドに近づくと、陶器のように白く冷たい指先で、私の頬をなぞった。

 その感触に、背筋が粟立つ。


「でも大丈夫だよ。ここは安全だ。外の世界は汚らわしい害虫ばかりだけど……僕がこの部屋とりかごで、一生守ってあげるから」


 彼の瞳は笑っていた。

 けれど、その奥底にあるはずの理性の光は、とうの昔に消え失せている。


 ロミオの背後に、影がもう一つ、亡霊のように佇んでいた。


 腰に帯びた剣の柄に手をかけ、鋭い視線を扉の方角に固定しているのは、騎士のアステル。


「……侵入者の気配はありません。ですが澪様、ご安心を。貴女に近づく者は、男だろうと女だろうと、この俺が細切れにします」


 かつて弱きを助け、正義を愛した気高き騎士。

 そんな彼の面影はもうどこにもない。

 今そこにいるのは、私という「聖域」を独占し、侵す者を排除するためだけの、悲しき処刑人エクスキューショナー


 重厚な扉が、低い唸り声を上げて開く。


 入ってきたのは、この国で最も高貴な血を引く公爵家嫡男、エリオットだった。

 その手には、不釣り合いなほど鮮やかな花束が握られている。


 そして――花弁の瑞々しさとは対照的な、拭いきれていない赤黒い血の跡が、彼の白手袋を汚していた。


「世界が君を拒むなら、世界を壊せばいい。そうだろう? 愛しの澪」


 花の香りと、錆びついた鉄の匂いが混じり合い、鼻腔を刺激する。


 三人の男たちが、私を取り囲む。

 逃げ場など、最初からどこにもなかったのだ。


 彼らの瞳に映っているのは「私」ではない。

 底のない漆黒の執着と、狂気という名の純愛だけ。


 どうして、こうなってしまったのだろう。


 私はただ、転生先で懸命に生きようとしただけなのに。

 目の前の困っている人に手を差し伸べ、ささやかな幸せを願っただけなのに。


 これは、神様の手違いで異世界に落とされた私が辿った、愛という名の地獄。

 そして――あまりにも愛されすぎたがゆえに、どこへも逃げられなかった女の、絶望の記録だ。


お読みいただきありがとうございます!


いきなりのバッドエンド(?)から始まりましたが、これは少し未来のお話。 次回から時間を巻き戻し、「第1章 神の手違い」からスタートします。


なぜ彼女は監禁されてしまったのか? 爽やかな青年たちは、どこで狂ってしまったのか?


ここから始まる転落の記録を、どうか最後まで見届けてください。 少しでも「続きが気になる!」「雰囲気が好き」と思っていただけたら、 ブックマーク登録をして、次の更新をお待ちいただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ