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アイディールに捧ぐ物語  作者: 朝霧唯凪
第一章:ルウラとカイン
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episode8:星の夜

次の日。昨日のだるさが嘘のようになくなった私はベッドから飛び起きた。


「熱下がってるんじゃない!?」


ファリンネを呼ぼうと部屋のドアへ向かうと、ちょうど彼女が顔を出した。


「あら、おはようございます。今日は早起きですね。」

「おはよう!ファリンネ!熱下がったかも!!」


そんな私のおでこに、ファリンネは静かに、手を当てる。


「六度五分。平熱ですね。」

「やった!!」


私は飛び跳ねると、クローゼットを勢いよく開けた。


「ファリンネ!服どれがいいかな!?」


早朝からワクワクが止まらない私に、


「お嬢様……星夜祭は夜でございますよ?」


と、淡々と事実を告げるファリンネであった。



「はやく夜にならないかなぁ……」


カインに、ケベットから出された課題である精霊学を教えて貰いながら私は言う。


「ルウ様……そのうち来ますから今は集中して下さい。」


何度この会話をしただろうか。カインが呆れたように言う。


「ごめんね。ワクワクが止まらなくって。」

「ルウ様の課題が終わらなくて怒られるのは、俺なんですよ。この課題終わらせないと星夜祭行きませんからね。」

「鬼だ……」


テキストを埋めると言っても数十ページある。このペースで終わるだろうか。


「はやく……」

「集中。」


カインに怒られてしまった。




「夜だ!夜だ!夜が来たぞ!」


無事課題を終わらし、出かける許可を貰った私。ファリンネに手伝ってもらっておめかしをする。


「可愛いですよ、お嬢様。」

「ありがとう、ファリンネ!」


お気に入りのワンピースをはためかせて、カインの部屋に行く。カインはとっくに準備をすまして、勉強していた。


「ねぇねぇ、カイン!これどう?」


ワンピースをくるっと回って見せる。急に部屋に飛び込んできた私にびっくりしていた模様だったが、


「かわいいですよ、お姫さま。」


と、ニコッと微笑んだ。


「……ばかにしてるでしょ。」

「してません。」

「もう行かない?」

「そうですね……」


カインはチラッと時計を見た。


「少し早いですが、行きましょうか。」


カインは身だしなみを整えると、私と一緒に部屋を出た。



「ルウーー!カインくーん!」


玄関で靴を履いていると、廊下の奥からお母様が走ってきた。


「ど、どうしたの?」

「ちょっとカインくんに渡したいものがあって。」


そう言って、手に握っていたものをカインに握らせようとする。その瞬間、カインは手を引っ込めた。


「いけません奥様!こんなもの貰えません!」


どうやら小遣いのようだった。


「いいのいいの。ルウの面倒見てくれるお礼だから。」

「めんどう!?私、カインより歳上なんだけど?」

「でも俺にこんな……」


それでもしぶるカインに、お母様は優しく微笑む。


「じゃあ、私からのお願いね。今日はその小遣いで二人で楽しんで来なさい。」


突き返す方が失礼だと思ったのだろう。カインはしぶしぶ受け取った。


「ルウのことよろしくね。」


お母様は私たちを送り出してくれた。

玄関を出て数本歩いたところで、私たちは同時にふーっと息を吐いた。


「急にお母様がごめんね。」

「いいえ、ビックリしましたけど、ありがたいです。……行きましょうか。」


カインが先に歩き出す。私は後に続いた。

「ルウ様、あの……」

「うん」

「俺のことが少しでも嫌になったらクビにしてもらって構いませんので……。」


急にカインが悲しそうに言って、私は胸がギュッとなった。


「何で……そんなこと言うの。」

「……いや、なんでもありません。奥様からお願いされたので楽しまないとですね。」


カインは小遣いをキュッを握りしめると、私の手をとった。



少し歩いた先の広い通りに、街行きの貸し馬車が停まっていた。


「あれに乗りましょうか。」


木のステップを上がる時、横でカインがそっと手を添えてくれる。

馬車がきしむ音とともに動き出すと、窓の外はすぐに暗い森へと変わった。

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