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アイディールに捧ぐ物語  作者: 朝霧唯凪
第一章:ルウラとカイン
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episode6:鍛錬開始!

「ルウ様、起きてください。庭でケベット様が待っております。」

「ん……え、なに……?」


朝早くからファリンネに起こされた私は、目をこする。


「早くしないと罰をくらいますよ。」

「……なんの話?」

「……では失礼いたします。」

「……ちょっと待て!」


立ち去ろうとするファリンネを引き止める。その瞬間私は気付いた。


「もしかして、特訓って今日から……?」


実は昨日、護衛を目指すために、これから魔法と勉強の特訓を始めていこうとケベットと話したのだ。

まさか今日からだとは……。


「後2分で来なかったら腕立て50回だそうです。」

「今行きます……」


布団から這い出て部屋を出る。いそいそと庭に向かうとケベットが仁王立ちしていた。その横には何故かカインが立っている。

あれ、カインってそういえば皆に、護衛になること言ってないのよね。


「おはよ……何してるのカイン。」

「おはようございます、ルウ様。遅かったですね。」

「いや何してるの、って……」

「カイン様も一緒に特訓を受けられるのですよ。」


カインの代わりにケベットが答えた。


「えぇぇ、なんでよ……」


少しでもカインに追いつこうと特訓を始めたのに、カインもしたら意味ないじゃない……。


「カイン様も護衛を目指されているので一緒に鍛錬するのは当たり前でしょう。」

「……あれカイン、ケベットに言ったの?」

「ケベット様だけには伝えました。まだそれ以外は誰にも。」

「そっか……。」

「一緒に鍛錬する仲です。これ以上置いていかれないようにしてくださいね。」


意地悪な笑みを浮かべて言うカイン。

私の実力が負けてること、分かってて言うんじゃないわよ!


「それで、ケベットこれから何するの?」

「確かお嬢様、昨日男に襲われたんですって?」


昨日のことを持ち出されて、私はポカンとしてしまう。


「……ちょっと、なんで皆知ってるのよ!」

「魔法は使わなかったのですか?」

「使おうとしたんだけど、その前に首締められて……」

「なるほど。なら、お二人方の今の目標は、短詠唱の習得ですな。」


私は難易度の高い目標を出されてポカン、としてしまう。


「え?ケベット、あなたレベルの高さ分かってる?」


 詠唱とは、魔力を安定させて魔法を発動させるための“工程”である。その一文一文が、術式を構築する支柱となっている。だからこそ、短詠唱で一文でも省けば、暴走の危険が増す。

さらに詠唱は「声導」つまり、声に出して唱えることで魔術式の流れを体で理解する行為だ。

短詠唱ではその工程を声に頼らず、頭の中で同時に処理する必要がある。

それは熟練者でも極めて困難な技であり、一瞬の迷いが暴走を生んでしまう。


「もちろん、分かっておりますよ。しかし、護衛に短詠唱は当たり前。今はできなくても必ず習得してもらわなければなりません。」


……そうよね。最終目標は、王家の護衛だもの。

私は、遠いゴールを想像して落ち込んでしまう。


「大丈夫ですよ。魔法使いには人生で二度、多い人は三度、魔法が覚醒するタイミングがございます。お嬢様もそのうち短詠唱を扱えるようになるでしょう。」

「……ありがとう。」


大丈夫。まだその時が来ていないだけ。自分にそう言い聞かせて、私はカインと共に鍛錬を続けた。



「ルウお嬢様ー。そろそろご飯ですよ!」


遠くからファリンネが呼んでいる。


「あれ、もうそんな時間。」


お昼休憩を挟んだ後、私が攻撃をしてケベットが防ぐという鍛錬をずっとしていたら晩ご飯の時間になっていた。

カインはクラーク家の従者ということもあって、一日中つきっきりでは鍛錬はできなかった。


「すみませんお嬢様。魔力の方は大丈夫ですか?加減を間違えました。」

「ええ、大丈夫よ。それよりケベットも大丈夫?私の攻撃をずっと受け止めてたけど。」

「私は精霊なので心配ご無用です。明日は加減してやりましょう。」

「加減しなくても私は大丈夫なのに……」


そう言いながら家の中に入ると、思わずふらっとしてしまった。すぐにケベットが支えてくれる。


「お嬢様。やはり魔力切れをおこしております。すみません、私の責任です。」

「いいえ、自分が気が付かなかっただけだから。それよりも魔力切れってこんな感じになるのね。初めてなったわ。」


ぽけーとしてるとケベットに担がれた。


「え、ケベット?」

「失礼いたします。晩ご飯のところまでお運びします。」


確かに体に力が入らない。私は素直に担がれることにした。

カインとファリンネには心配されたけど、食欲はあったのでご飯は完食してしまった。その後、すぐさま湯浴みを済ませ、ベッドに押し込まれる。


「え、ファリンネ。まだ寝る時間じゃないわよ?」

「お嬢様。明日はきっと熱が出ます。早くお休み下さい。」

「えー……眠たくないんだけどなぁ。」

「ケベット様、責任を取って自決しようとしていましたが、わたくしがお止めしましたのでご安心ください。」

「……安心できるかぁ!!!」


一気に目が覚めたわ。


「ケベットに、本当に気にしないでって伝えといて!!」

「承りました。おやすみなさいお嬢様。」

「おやすみ。ファリンネ……」


カインは魔力の方、大丈夫だろうか。

眠たくないと思っていたけど、魔力切れのせいか、すぐまぶたが下がってきた。

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