episode49:すれ違う心
その日の午後は、課外授業の内容の発表があった。
リーダーが招集され、説明と共にプリントを配布された。
部屋に戻り、プリントを皆に見せる。
「皆ー!発表されたよ!」
「おっ、きたか」
私は机の上にプリントをのせる。皆が顔を覗き込んだ。
「ん?クリスタルを集める?」
「そう!」
今回の内容はチームでクリスタルを集め、ゴールするというもの。より多くのクリスタルを集めたチームに多くポイントが与えられ、優秀チームが決まる。
「え、これどこでやるの?」
「校長先生が転移魔法使うんだって」
「えっ、魔力消費えげつ……」
本当にそう思う。すごい魔法使いなんだろうなぁ。
「でもヴェルディアのことだから、一筋縄じゃいかなそうだね」
カルロスがポツリと言った。
「え、例えば?」
「なんかトラップあったりとか……」
「あぁ、確かに……」
横でアナベルもうんうんと頷く。
「それで、内容について質問ある?分かる範囲でなら、答えるけど」
私は皆の顔を見回す。四人は、フルフルと首を横に振った。
「じゃあ、作戦会議をしようか」
「うお、なんかカッコイイな!」
ワクワクしているフィン。この人幼稚なんだよな……。
「まず、皆の属性を教えて」
私は紙を出してペンを持つ。
私は氷属性、アナベルは風属性、フィンは大地属性……
残るは二人という所で、沈黙がおりた。
「あれ、次カルロスよ」
皆がカルロスを見る。カルロスはぽつりと呟いた。
「……言いたくない」
「えっ?」
「だから言いたくない」
「いやいや課外授業は明後日よ?バッジもかかってるのに、言いたくないって何?」
協力するという気持ちが感じられないカルロスに、若干苛立ってしまう。
「……別にいいんじゃね?」
黙っていたフィンが言った。
「チームでの協力が必要なのよ。そんなこと言ってたら上手く動けないじゃない。」
重い空気になってしまった。
トロイも俯いている。彼も言いたくないのかもしれない。
「ルウラの気持ちも分かるけど、言いたくないんだったらいいんじゃないかな。きっと上手く立ち回れるよ」
アナベルもフィンの意見に賛成する。私は諦めてため息をついた。
「なら、いいわよ。戦闘向きか、索敵向きかだけでも教えて」
「必要な時は動く。それでいいでしょ」
「……」
落ち着け、私。ここで怒っちゃダメ。
「クリスタル集めるだけだろ?何とかなるって」
呑気にフィンが言った。この空気にトロイがオロオロしている。
最初の課外授業なのよ?何でそんなに余裕なの?
「何隠してるのか知らないけどさ。そこまで言うなら好きにしなさいよ。私、どうなっても知らないから」
声が少し震える。自分が悪者になったような気がした。
「あっ、ルウラ!」
アナベルの声を無視して皆を置き去りにしたまま、私は自室に戻った。
「うう……」
皆本気で優秀チームに選ばれたいと思ってる、と信じてたけど、どうやら私だけだったよう。
なんだか虚しくなってベッドに突っ伏した。
課外授業は明後日。
失敗しちゃったなぁ、と思いつつも自分から皆の元に戻る勇気は出なかった。
険悪な雰囲気を抱えたまま、次の日になった。未だに空気は最悪で、すごく気まずい。
「はぁ……」
ベッドの上で蹲り、ため息を着いた時だった。
『ご主人!ご主人!』
脳内に、可愛らしい声が流れてきた。
「えっ!?」
慌てて周りをキョロキョロするも、誰もいない。
『下デス!』
そう言われて、私は視線を下に向ける。
「リット!!」
私の傍に、精霊のリットが立っていた。
「あなた喋れたのね!」
『もちろんデス!』
私は、リットをすくい上げる。
「最近姿を見せなかったから、心配してたのよ。どこ行ってたの?」
そう言うと、リットは申し訳なさそうな顔になった。
『それについては申し訳ないデス。急用ができまして……』
急用……。精霊にもいろいろ事情があるのね。
「それで、どうして急に現れたの?」
『どうしてって、ご主人が悩んでいるようでしたから……』
「うわあん、私のリット!」
グリグリと顔を押し付けると、『グエッ』と苦しげな声が聞こえた。
『とりあえず、金髪は悪いヤツじゃないですからご安心ください』
金髪……カルロスのことね。
「いや、悪いヤツじゃないのは知ってるわよ。」
『それから金髪は、ご主人のこれからに役立ちますヨ!』
「……これから?」
『ということで早く仲直りするべしデス!』
それだけ言うと、リットは姿を消してしまった。なんて自由な精霊なんだ!
けど、おかげで張り詰めていた心が、ようやくほどけた気がした。
皆とちゃんと話さなきゃ……
私はそう決意して、部屋のドアを開けた。




