表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイディールに捧ぐ物語  作者: 朝霧唯凪
第三章:ヴェルディア学園
47/63

episode47:心の整理

次の日となった。今日は学校はお休みだが、チームが決まったことを報告しに行くため、学校に行く。


「よろしくね、ルウラ」

「ええ!」

「行ってらっしゃーい」

「行ってきます!」


私は寮を出て、教棟に向かう。

職員室を覗くと朝だと言うのに、先生は慌ただしく仕事をしていた。


……よし、行くか。


私は挨拶をして、職員室に足を踏み入れる。

マックス先生は、メガネをかけて事務作業をしていた。


「おはようございます。マックス先生」


声を掛けると、マックス先生はメガネを外して私を見上げた。


「あぁ、ルウラ・クラークですか。おはようございます。チームは決まりましたか?」

「はい、無事決まりました」

「全く、締切日当日に報告しに来る人がいますか……」


だって、カルロスが明日にすればって言ってたから……。


「で?メンバーは?」


マックス先生はプリントを引っ張り出してくると、ペンを持つ。


「えっと、私とアナベルと……」

「全員本名で」

「ルウラ・クラークとアナベル・フリッツと……」


そこで、雲行きが怪しくなってきた。


「フィン・スコッツと、カルロス・オバンス?……あれ、なんだっけな」


詰まった私に、呆れた視線を投げかけてきた。


「あなたのクラスメイトでしょう?」

「いやぁ、そうなんですけどね……」

「しかも、フィン・スコットと、カルロス・エバンスです。」

「あぁ、そうでした……」


マックス先生は、ため息をつく。


「B組の生徒は?」

「えっと、トロイです。トロイ・フォ……フォー……」

「トロイ・フォイルナーですね。トロイを入れたんですか。意外ですね」

「え、ダメでしたか?」

「いいえ、なかなか個性的なメンバーだなと」

「ありがとうございます」


褒められているのか、分かんないや。


「はぁ、言っておきますが、チームが決まったので寮の部屋が変わります。」

「えっ、どんな風にですか?」

「これからはチームで行動することが増えるので、部屋をチームごとに分けていきます」


じゃあ、イザベラとは離れちゃうのね……。


しゅんとなってしまう。


「これ渡しておきます。あなたのチームの部屋は、ブロンズ棟です。」


マックス先生に、プリントを手渡される。


「ちなみに、引越しは二日後です。」

「はいっ!?」

「もっと早く決めていたら、バタバタすることもなかったと思いますがね。では」


そう言うと、マックス先生は前を向いて仕事を再開し始めた。


「え、先生?えぇ……」


もっと聞きたいことあったのに……。


私は仕方なく職員室を出て、部屋に戻る。


「おかえり、ルウラ。ありがとね」

「ただいま、アナベル。ちょっとこれを見て!」


私は、プリントをアナベルに押し付ける。


「えっ、引越し!?」

「そうなの!二日後だって。どうしよう……」

「とりあえず、荷物の片付けしようか。男子には、どう伝えるの?」

「あ……」


男子寮ってどこにあるんだろう……。


「イザベラに聞いてみるか……」


私はイザベラの部屋をノックする。


「何かしら?」


イザベラがドアを開けた。部屋にはダンボールが見える。

最近部屋にこもってると思ったら、荷造りしてたのね。


「あのさ、男子寮の場所知ってる?」

「知ってますわよ」

「どこ?」


そう聞いた瞬間、イザベラは私の手を掴んで、部屋の中に引っ張った。


「何、ルウラ!!あなた男子寮に行くつもりですの!?」

「え、どうしたのイザベラ。ちょっと怖いわよ……」

「だって好きな殿方が……」


何やら勘違いしている様子。


「違うわよ!」


私は困っていることを話した。なぜかガッカリしているイザベラ。


「それじゃあ、生意気なやつ貸してやるわよ」

「生意気なやつ?」

「いるわよね、ぽっちゃり!」

「はい、いますわ。酷い言い様で」


ダンボールの影から、ひよこが出てきた。


「あ!イザベラの精霊ね!」


というか、喋れるんだ。……そりゃそうか。


「というか、何でひよこちゃん?」

「そいつは飛べるから、伝えてもらったらいいんじゃない?」

「えっ、あなた飛べるの?」

「もちろんです!」


ひよこちゃんは、短い腕を広げる。背中に小さな羽が付いていた。


「何を伝えますか?」


私はプリントを見せる。


「これ男子たちに届けて欲しいです。」

「了解です!」


私は部屋番号と、棟の位置を再度確認すると、プリントを小さく折りたたんで、ひよこちゃんに預けた。


「お願いします!」

「任されました!!」


ひよこちゃんは、ポンっと胸を叩いて……


「ギョエー!!」


イザベラに窓から投げられた。小さな体がクルクル飛んでいく。


「えっ、ええ!!あれ、大丈夫なの?」

「大丈夫でしょ。あいつは風の精霊よ?」


ひよこちゃん、無事に帰ってきてください……。


私は心の中で祈った。


自室に戻り、荷造りに取り掛かる。ダンボールに詰めていると、ころっと小さな箱が出てきた。


「あっ……」


中を開けると、カインからもらったイヤリングが入っていた。

子どもの頃は毎日つけていたけれど、カインと離れてからはずっと外していた。魔法学校に受かるまでは付けないって、自分で決めていたから。

箱を見ながら、小さかった頃の自分を思い出す。背伸びしてイヤリングをつけていたあの頃は、ちょっと不器用で、上手くいかないこともあったけれど、それでも一生懸命だったな。


「ふふっ」


懐かしくなって思わず笑ってしまう。

鏡を見て、イヤリングをそっと耳につける。小さい頃より、今の自分のほうが似合う気がして、なんだか嬉しくなった。


「明後日からつけよう……」

 

私は丁寧に、イヤリングを箱にしまう。

胸の奥に残る温かさに、自然とカインのことが思い出された。

アルゼ様は、カインがきっと重宝されているから大丈夫だって言ってたけど、今はどうなんだろうか。


……元気で過ごせてたらいいな。


荷造りはしばらく放ったらかしで、私はカインに思いを馳せていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ