episode46:沈黙の五人目
チーム編成締切まで後五日。
ほとんどの人がチームが決まってきている中、未だに私たちのチームは四人のままだ。
色んな人に声を掛けているものの、皆すでにチームに入っていて断られている状況。
……カルロス、どうすんのよ。
私は隣のカルロスを、チラリと見る。チーム編成の悩みを気にすることなく、いつものようにグースカと寝ていた。
予鈴が鳴り、ホームルームでマックス先生が教卓をバン、と叩いた。
「今から、課外授業についてのお話をします」
途端に教室がザワザワとし出す。
「ついに課外授業だな、ルウラ!」
「そうね」
ウキウキしているフィンに相槌を返して、私は前を見る。
ここで大きく評価が付けられるだろう。バッジも貰えるかもしれない。よく聞いておかないと。
「まず日程についてですが、課外授業はチーム編成締切日から五日後に行います。」
私はギョッとする。
日にちがあまりないじゃないの!
「内容が気になっている人もいると思いますが、規則により当日の三日前に発表します」
三日前、チーム編成締切日の二日後か……。準備する暇なんてほとんどないわ。
「ちなみに、今回の精霊の使用は禁止。使用が発覚し次第、そのチームはリタイヤとなります」
なるほど。思ってた以上に、条件が厳しそうだ。
「それから!」
突然マックス先生が声を張り上げた。
「今回成績が優秀だったチームには、バッジが送られます」
……バッジ!!
バッジという言葉を聞いて、一気に教室内が静まり返った。
「知っている人もいると思いますが、バッジは特待生となるには絶対必要になってくるものです。また、次のクラス分けでもバッジ保持者は優位になります。」
クラス分けでも優位になるのね。
「ぜひチーム内で協力して、獲得を目指してください」
その後、諸々の注意点を話されてホームルームを終えた。
それから数日。アナベルとフィンと校内を走り回る日々が続いた。昼休みと放課後の時間を使い、色んな人に声を掛ける。
カルロスは何をしているのか知らないけど、気にする時間などない。
けれど、声を掛けるたびに返ってくるのは同じ言葉ばかりだった。
「もうチーム決まってるんだ」
「ごめんなさい、今さら抜けられなくて」
先生に誰が余ってるのかを聞こうにも、先生たちはチーム編成には一切関与しないらしい。
教えてくれたっていいじゃないの!!
私は今日もムカムカするのだった。
放課後も走り回り、教室に戻ると、誰もいなくて私の荷物だけがポツンと取り残されていた。
職員室に教室の鍵を返しに行く。緊張しながら中に入ると、マックス先生に声を掛けられた。
「ルウラ・クラーク。チームが決まっていないのは、あなたのチームだけですよ。」
マジか……
冷や汗が流れる。
「決まっていないのは、B組とD組だけなんですが……」
すると、マックス先生は目を丸くした。
「D組、決まってないんですか?」
「?……はい」
私は首を傾げながら言う。マックス先生は、「ちょっと待っていてください」と言うと奥へ消えていった。少しして、学年主任のロイ先生が姿を現す。
げっ、という顔をする私の顔を見て、ロイ先生は顔を顰めた。
「またお前か……」
よく分かんないけど、すみません……
「悪いが、一人退学になってD組の生徒が残っていない。」
「ええっ、なら私たちどうすれば……」
「悪いのは俺たちだ。D組なしで作れ。」
それだけ言うと、ロイ先生は戻ってしまった。
あっさりしすぎじゃないですか……?
「えー……」
「だそうです。あ、忠告ですが、D組がいないことはチーム以外の人に言わない方がいいですよ。」
他チームに文句を言われるからか。そこは何とかしてくれないんですね……
私はとぼとぼと、職員室を後にした。
部屋に戻って、アナベルに伝えようとドアをノックする。
「はーい」と言って、ネコタローを抱えたアナベルが顔をのぞかせた。
「あ、おかえりルウラ。どうしたの?」
「ただいま。 あの、D組のことなんだけど」
すると、アナベルはパッと顔を明るくした。
「えっ!見つかったの?」
「いや、そうじゃなくてね……」
私はロイ先生が言っていたことを、アナベルに伝える。
「え、マジ?」
「マジ」
「まぁ、人が足りなくても大丈夫だよね。後B組だけかぁ」
「そうだねぇ……」
すると、部屋のドアがノックされた。
チーム勧誘は、もうないはずよね?
「はい……」
恐る恐るドアを開ける。
「あ、こんにちはー。ルウラさん」
「……何してるの?」
そこには、女装したフィンが立っていた。
「ここ女子寮なんだけど」
「だから女装して来てんの!アナベルもいるか?ついてこい」
私はアナベルを呼び、訳も分からないままフィンについて行く。
着いたのは中庭だった。夕方の風が少し冷たい。
人影が見えて目を凝らすと、カルロスと、口元を布で覆ったボトルグリーンの髪の男子が立っていた。
「カルロス!トロイ!連れてきたぞー!!」
二人がこちらを向く。
「紹介します!ルウラとアナベルです!」
「ちょっと待って、フィン。あの子は誰?」
私は、カルロスの隣にいる男子に視線を移す。
「あートロイです」
「ルウラ、彼はB組のトロイ・フォイルナーだ」
カルロスが代わりに紹介してくれて、ペコリとトロイがお辞儀する。
「あぁ、チームの話ね」
「だからそう言ったじゃんか」
フィンがそういうので「言ってない」と、切り捨てた。
「えーと、トロイ。私は、A組のルウラ・クラークよ」
「私、アナベル・フリッツ。C組です」
トロイは、またペコリとお辞儀する。困ったようにカルロスを見ると、私の視線を受けてカルロスは口を開いた。
「トロイは、話せないらしい」
「話せない?」
カルロスはコクリと頷いた。
「とりあえずトロイって言うのね。よろしくね」
トロイは、首を縦に振った。
「ということで、チームが決まったからリーダーを決めようか!」
すると、フィンが「え?」と声を漏らした。
「D組は?」
説明してなかったー……。
私は息をつくと、ロイ先生の話を伝える。
「そういうことあんだな。で、リーダーどうする?」
内容を理解したフィンが、話を戻す。なぜか皆が私に視線を向けてくる。
「何よ」
「ルウラって、結構鈍感だよねぇ」
「分かった。私にリーダーを決めて欲しいのね」
「いや違うでしょ。ルウラがリーダーをやったらいいんじゃない?って」
「えっ……」
私は、皆の顔を見回す。
「カルロスは?」
「やりたくない」
「アナベルは?」
「ルウラが適任だと思います」
「トロイは?」
黙って首を横に振るトロイ。
「なら仕方ないか……」
「ちょっと俺は!?」
聞かれなかったフィンが、突っ込む。
「やりたいのなら、フィンがやってもいいけど」
「やりたくねぇし!」
やらないのかよ!
「じゃあ、私がリーダーをするわね。早速、先生に伝えてくるわね」
「明日でいいんじゃない?」
カルロスが言う。いやいや明日決め切りなんだが……?
「……ま、いっか。じゃあ、これから皆よろしくね」
「よろしく!」
そうして、解散となった。
アナベルと寮へと戻る。
「ホントに決まってよかったねぇ」
「ええ、ギリギリになっちゃったけどね」
課外授業は、六日後。絶対バッジを取らなければ。
そう心に決め、教棟に沈む夕日を見ながら、一息つくのだった。




