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アイディールに捧ぐ物語  作者: 朝霧唯凪
第三章:ヴェルディア学園
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episode45:強くある理由

教室の後ろのドアから、そーっと入る。みんな静かに自習をしていた。

椅子に座ると、フィンがこちらを見てきた。


「……何か用?」


小声で尋ねると、


「ルウラ、かっこよかったぞ!」


と、グッと指を立てられた。


「ルウラ、あんなに魔法使えたんだな」

「まあ……」


私が曖昧に返すと、フィンは身を乗り出してきた。

 

「てか先生になんか言われた?」

「ちょっとフィン……」

「え?」

「フィン、前……」

「ひどい、そんな俺の話聞きたくないのかよ」

「そうだ、誰も聞きたくない」


突然、教室内に低い声が響き渡った。


「ヒッ!」


フィンの前に、いつの間にかロイ先生が立っていた。ロイ先生は、持っていた出席簿でフィンの頭を軽くはたいた。


……ドンマイよ、フィン。


「今からグラウンド走ってくるか?おしゃべりな口も止まるだろう」


フィンは、口をつぐんでブルブル首を横に振る。


「チッ……まあ、走りたかったら言え。つまみ出してやる」


ロイ先生はそう言い捨てて、教卓へと戻った。


「えー遅れたが、今から授業を始める。」


そうしてやっと授業が始まり、何事もなく授業が終わった。

その後の午後の授業も終え、部屋に戻ろうと教科書を片付ける。

片付けながら、今朝のアナベルの話を思い出した。


帰ったらイザベラと話さなきゃ!


そう決意して教室を出ると、廊下で待っていたカルロスに声を掛けられた。


「ルウラ。今チームってどうなってる?」

「びっくりした……どうなってるって、今は私とアナベル、カルロス、フィンの四人ね」

「あ、僕も入る気なったからよろしく」

「はあ」


いや、もともと数に入れてたけど……


「後はB組とD組か。何かツテはある?」

「いやぁ……」

「分かった、探してみる」


そう言うと、カルロスは何も言わずに去ってしまった。


じゃあね、ぐらいは言いなさいっての!


ようやく部屋に戻ると、もう二人は戻っていた。それぞれの部屋にいる二人を呼ぶ。イザベラは、嫌な顔をしながらも出てきた。

私は急いで紅茶を入れ、机の上に並べる。


「ルウラ、もしかして?」

「うん。イザベラと、ちゃんと話す時間が必要だなと思って」

「別にあたしは、話すことなんてありませんけど?」

「そう言わずに」


私はイザベラの前に座った。


「ずっと私達を避けてるよね?避けている理由がちゃんとあるなら教えて欲しい。」


アナベルも頷いた。


「私達、イザベラがツンツンしてるけど優しいこと知ってるよ。このままじゃ嫌だな……」


イザベラがため息をついた。


「……お二人、あたしの最初の印象は?」

「強そうで頑固なお嬢さん」

「頭が良くて育ちがいい令嬢」


私とアナベルが素直に答えると、イザベラはほら、という顔をした。


「皆、あたしの印象がそれなの。」


イザベラは小さく息を吐いて、視線を落とした。


「だから最初から、距離を取ってたのよ。仲良くなったって、どうせ最後はそう思われるって分かってたから」

「……どういうこと?」


アナベルが静かに問いかける。


「……小さい頃、強そうだとか、生意気だとか言われて。弱いところを見せたら、すぐ馬鹿にされたことがあった。」


イザベラはぎゅっとスカートの端を握った。


「だから決めたの。最初から近づかなきゃ、傷つかなくて済むって」


少し間が空いた。


「強くあらなきゃ、生き残れなかったのよ」


その声は、さっきまでの刺々しさとは違って、かすかに震えていた。

私は思わず前のめりになる。


「……でも、私たちはイザベラを強そうだな、とかそういう印象だけで見てないよ」

「うん。無理して一人で立ってる人、って思ってた」


アナベルの言葉に、イザベラが驚いたように顔を上げた。


「……そんなふうに、見える?」

「見えるよ」


私ははっきり答えた。


「だから、避けられるのは……正直、寂しかった」


イザベラはしばらく黙ってから、小さく笑った。


「勝手に突っ走って抱え込んで……馬鹿ね、あたし」


その笑顔は、少しだけ力が抜けていた。


「そんなことないよ。イザベラにそんな思いがあったんだね」

「でも……別に同情もらおうとか思ってないから」


そう言うイザベラに、私たちはうんうんと頷いた。


「分かってるよ」

「結局、ツンが出ちゃってるねぇ」

「う、うるさいわね!ツンってなによ!」


いつも通りのイザベラに、私たちは顔を見合せて笑いあった。


「そういえばイザベラ。あなた、チームどうなったの?」

「無事入れたわよ」


ショック……いや薄々気付いてたけど。


「チームが違う以上、あたしたちはライバルですわよ。手加減しませんから!」

「当たり前よ!ボコボコにしてあげるわよ!」


すると、アナベルに肩をポンポン叩かれた。


「ルウラ、拳はやめておこう」

「いや、何で拳?」


アナベルがケラケラと笑った。イザベラもクスッと笑う。


「もお……」


私はそっと息を吐いた。

ちゃんと話せて、ちゃんと笑えた。それだけで、今日は十分だ。

胸の奥に残っていたわだかまりは、いつの間にか溶けていた。 

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