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アイディールに捧ぐ物語  作者: 朝霧唯凪
第二章:紡がれる願い
34/55

episode34:前夜の静けさ

「ふぅー長旅だったな」


二日かけて、入学式前日の早朝に到着した。

アルゼ様は、長旅が終わって気分爽快!みたいな顔してるけど─


「アルゼ様、昨晩めちゃくちゃイビキすごかったです……」


私は寝不足だった。


「うおっ、まじか。すまん」

「まぁ、いいですけど」


私は荷物を部屋に運び入れる。


「アルゼ様ー。私先にシャワー浴びてきてもいいですかー?」

「おーう」


一階に下りてシャワーを浴びる。

しばらく入れてなかったので久しぶりのシャワーは、気持ちよかった。体の汚れとともに、疲れが洗い流されていく。


明日は入学式か……


夢が一つ叶ったものの、なかなか実感が湧かない。


……楽しみだな。


湯気の中で私は明日のことを考えるのだった。


夜になり、荷物の確認をしていると、下から私を呼ぶ声が聞こえた。一階におりると、白い箱を抱えたアルゼ様が座って待っていた。


「あれ、なんですか?その荷物」

「荷物ってかチビの制服だよ」

「えっ!!」


私は受け取って開けてみる。中には、紺色のローブとスカート、シャツが入っていた。

そういえば、合格発表の日、採寸しに行ったのだった。


「うわぁ、届いてたんですね」

「良かったな」

「ありがとうございます!」


早速ローブを羽織ってみる。 


「どうですか!」 

「んまあ、いいんじゃねえの?」

「えへへ」


クルクル回っていると、アルゼ様が「それにしても」と呟いた。


「チビとしばらく会えないのかぁ」

「長期休暇には戻ってきますよ」

「長期休暇までは会えないのかぁ」


アルゼ様って意外と寂しがり屋よね。


「寂しいからって、学園に遊びに来ないでくださいね」


そう冗談で言ったのだが、アルゼ様はキョトンとした。


「え?会いに行っちゃダメなの?」

「ダメです!捕まりますよ!」


余計にズーンと落ち込むアルゼ様。


「俺様、一人で生活できるんかな…」

「というか、今まで一人で暮らしてたんでしょう?」


そう言うと、アルゼ様は目を伏せた。


「チビがいるのが当たり前になっちゃって、いない生活が考えられない……」

「そんな大げさな……」


とか言いながら、私も胸の中は不安でいっぱいだった。明日から始まる生活を思うと、今日は簡単には眠れそうにない。


「まぁ、ずっと離れるわけじゃないしな。一時間で学園に行けるし!」

「そうですよ。近いんだからすぐ会えます」

「だよな!それで、荷物は大丈夫か?」


その質問に私はローブを畳みながら答える。

 

「ええ、制服も準備できましたし、大丈夫かと」

「明日って弁当いるっけ?」


私は予想外の事を聞かれ、目をぱちぱちさせる。


「アルゼ様。明日から寮生活ですよ?」

「あっ、すまんすまん」


大丈夫か、この人……


「木刀とかもってくか?その……防犯で」

「結構です」


ダメだ、過保護すぎておかしくなってる。


「とりあえず、荷物は大丈夫ですので!」

「そ、そうか」

「今日は早めに寝るのでおやすみなさい」

「あぁ、おやすみ」


私は制服を片手に、アルゼ様に挨拶をすると、自室へ戻った。

制服を丁寧に畳んで机の上に置き、ベッドに腰掛ける。

明日、これを着て学園へ行くのだと思うと、胸の奥がそわそわした。


そんな中、ふとカインの顔が頭に浮かぶ。


もし、レーゲルトでの生活が続いていたなら、明日一緒に学園へ向かっていたのだろうか。


答えの出ない想像に、私は小さく息を吐く。


……こんなこと考えても仕方ない。


そう思いながら、私は布団に身を沈め、目を閉じた。

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