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アイディールに捧ぐ物語  作者: 朝霧唯凪
第一章:ルウラとカイン
19/57

episode19:光さす場所へ

……なんでこんなことに。


書物を運びながら私は思う。


「あー、それそこ置いといてや」

「……はい」


修理を手伝えとか言いながら、掃除も手伝う羽目になっている。


「あのー修理はしないんですか……?」

「足の踏み場がねぇんだ。掃除が先に決まってんだろ?」

「ごもっともです……」


いや、そうだけれども!


「アルゼ様、ずっと気になってたんですけど、なんで屋根に穴が?」


ようやく聞くことができた。アルゼ様は、穴を見上げて「あー」と声を漏らす。


「朝、屋根の修理をしようとしたら落ちた。」

「はっ?」

「ほら見ろよ、ここにたんこぶできちまってさ。」


たんこぶを見せつけてくるアルゼ様。

……よく生きてたな。


「てか思ってたけど、チビここら辺に住んでるやつじゃないよな?」


チビ呼びにカチンと来る。でも反論したら長くなりそうなので黙っておくことにした。


「私レーゲルトから来たんです。」

「レーゲルト!?あの?地方の?」

「……はい」

「そんなとこからどうやって来たんだよ。」

「私の精霊が飛ばしてくれました。」


一瞬の沈黙。プッと、アルゼ様が吹き出した。


「すっげぇなぁ。で?なんで王都に?」

「……」


昨日のことを思い出して、ズーンと落ち込む。


「……アルゼ様。北の森に行ったことありますか?」

「北の森ぃ?」


アルゼ様が手を止めてこっちを見た。


「……あるけどなぁ。もう二度と行かないぜ。森の中で王家の奴らに会ってな。」

「え……」


私は思わず手を止めてしまう。


「なんだチビ。お前も会ったのか?」


私は昨日のことを言おうか迷う。けれど、アルゼ様も会ったことがあるよう。何か知っているかもしれない。

 

「いや、王家の方かは分からないんですけど……」

「どういうことだ?」


訝しげに尋ねてくるアルゼ様を見て、私は勇気を決して説明することにした。

結界を破ってしまったこと。赤い痣が発現して、カインが攫われたこと。お父様に会ったものの、何も言わずに去ってしまったこと。


説明が終わった頃には、アルゼ様は気難しい顔をして、椅子に座っていた。


「それ本当の話なんだな?」

「はい……」

「赤い痣ねぇ……」


アルゼ様は、少し考え込む。


「聞いたことねえな……。だが、チビ。これだけは安心しろ。おそらくそいつは無事だ。」

「何でそんなこと分かるんですか?」

「赤い痣の発現後に攫われたってことは、王家がなにかに気付いて攫ったってことだ。今は重宝されているに違いない。」 


やっぱり王家の方に攫われたんだ……。

一気に不安になるが、無事だと聞いてなぜだか安心してしまう自分がいた。


「それからえーっと、結界を破ったってのはどういうことだ?」

「シルヴァラっていう魔物について行ったら、結界の場所にいて……」


私はあの時のことを思い出しながら言う。


「そしたら、私の手からバチン!って音が聞こえてきて……」

「それ、完全に破ってるな」

「そうなんですか……」

「アーサーさんのことも気になるし、うーん……」


掃除どころではなくなってしまった。

アルゼ様の言葉を聞きながら、胸の奥がギュッとした。

カインは生きている。なら、私が会える場所に行けば……。


そんな考えがひらめいた瞬間、私は気付けば口を開いていた。


「アルゼ様。私、護衛を目指してるんです。護衛になったら……カインに会うことって、できますか?」


アルゼ様は驚いて、目をパチパチさせた。


「……その手があったか。んまあ、会えるかもしんないけど、どうやってなるつもりなんだ?」

「王都の魔法学校に行くつもりです。昔王宮に仕えていた精霊と共に、二年間鍛錬してきたんです。」

「お前んとこの精霊優秀すぎんか……?」


「魔法学校ねぇ」と、アルゼ様は呟く。


「簡単に言ってるけど、難易度分かってる?」

「それは……もちろん」

 

ケベットの話を考えると、魔法学校の試験は、後一年と少し。お金は使わないと思って、来る前に置いてきてしまったし、この一年で帰れる保証はない。

私は、昨日のアルゼ様の魔法を思い出す。凄まじい魔力と卓越した魔法の操作。この人なら……


「アルゼ様。私に魔法学校へ行くための勉強と魔法を教えてください。」


私は、そう言ってアルゼ様に頭を下げた。 

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