表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイディールに捧ぐ物語  作者: 朝霧唯凪
第一章:ルウラとカイン
18/49

episode18:ひだまりの朝

翌朝、カーテンの隙間から差し込む日の光で、私は目を覚ました。そして、昨日の出来事が夢ではなかったことを思い知らされる。


キッチンがある下に降りると、イアンさんが朝食の準備をしていた。


「イアンさん、おはようございます。」

「おはよう、ルウラちゃん!よく眠れた?」

「はい、ぐっすり眠れました!」


私は、お皿にスープをついでいるイアンさんの所へ行く。


「何か手伝います。」


しかし、イアンさんは首を振った。


「いいのいいの。娘が1人増えたみたいで嬉しいから、私に任せて。」


ありがたく、準備はお願いすることにした。

少し待っていると、両手にお皿を抱えて、イアンさんがやってくる。メニューは、食パンと、コーンスープのようだ。


「ごめんね。昨日と同じようなメニューになっちゃって。」

「全然大丈夫です!準備してくださってありがとうございます。」


「いただきます」と、手を合わせて食べ始める。そんな私を、イアンさんは何かを懐かしむように見ている。


「ルウラちゃん。今日は、何かしたいことでもある?」

「私、今日アルゼ様のところに行ってみようと思ってて……」


すると、イアンさんは驚いたようだ。


「アルゼのとこに?どうして?」

「お父様のこと知っているようなので、お話聞きたいな、と。」

「あぁ、そうだったね。いいんじゃないかな。変な奴だけど、あいつ実は優しいから。」


そう言うイアンさんを見て、私は気になっていることを尋ねてみた。


「イアンさんと、アルゼ様ってどういうご関係ですか?」

「うーん、そうだなぁ……」と、イアンさんは腕を組んだ。


「20年前ぐらいだったかな……あぁ、そう。帝国側で戦争があったときだよ。薬草を取りに山の方に行ってたんだけど、その時に倒れている少年を見つけてね。」


「もしかして、その人が……?」と、私は口にする。


「そう、アルゼだったんだよ。血まみれで泥まみれ、息も絶え絶えでね。詳しいことは教えてくれなかったけど、どこかから逃げてきたらしい。命からがらだったんだろうね。手当をして、ここで一緒に過ごしていたんだ。」


そんなことがあったんだ……。

懐かしむような表情をしていたのは、私とアルゼ様を重ねていたんだろうか。


「じゃあ、イアンさんは、アルゼ様の母親的存在なんですね。」

「……まあ、そうなるのかな。」


イアンさんは、照れくさそうに言った。


「あ、あんまり過去の話したがらないから、このことはアルゼに黙っておいてね。」

「分かりました。」


私は頷いた。


朝食をとりおわり、出掛ける支度をする。

いつもファリンネに手伝ってもらっていたため、髪の毛を結ぶのに少し時間がかかった。続くはずだった日常を思い出すと、涙が込み上げてきて、またツンと鼻の奥が痛くなる。


……しっかりしなきゃ。


パチンと、顔を叩いて支度を終わらせると、イアンさんに声を掛ける。


「イアンさん、私行きますね。」

「道は分かる?」

「はい。大丈夫です!」


深呼吸を一つして、外に出ると、朝日がまぶしく差し込み、私は目を細める。

アルゼ様の家まではすぐそこ。昨日通った道を思い返しながら、一歩ずつ歩き始めた。


少し歩くと、焦げついた家が見えてきた。昨日よりも惨状は酷くなっており、なぜか屋根に穴が空いている。


……大丈夫かな。


やっぱり心配になってきたが、ここまで来たなら行くしかない。

私はドアをトントンと、叩く。


「アルゼ様、おはようございます。ルウラです。」


返事はない。

昨日、イアンさんがドアを蹴り飛ばしているところを思い出して、少し悩んだが、やめておいた。


「アルゼ様ー!いらっしゃいますかー!」


さっきより強めにドアを叩くと、少ししてからドアがギーと、音を立てて開いた。


「はい……」

「え……」


なぜか、頭に大きなたんこぶができているアルゼ様。


「何してたんですか……」


用件を伝えるより先に突っ込んでしまった。


「中、どうぞ……」

「し、失礼します……」


昨日のテンションはどこへ行ったのか、背中を丸めながらアルゼ様は、中へ案内してくれる。

ただ、中に案内してくれたはいいものの、書物やら木材やらが散らばっていて足の踏み場がない。

そして、何より気になるのが、屋根に穴が空いていること。人一人入れるくらいの大きさの穴があり、そこから、日光が差し込んでいる。


「ごめんなさい、今紅茶を切らしていまして……」

「あ、お構いなく……」


なぜ敬語……?

不思議に思う私に、アルゼ様は、水をついで持ってきてくれた。テーブルがないので近くの椅子に座って一口飲む。


「急にすみません。聞きたいことがありまして。」


すると、アルゼ様はポカーンとした表情を浮かべた。


「え……聞きたいこと?修理手伝ってくれるんじゃないの?」


今度は私が、ポカーンとする。


「いえ、違いますけど……。」


すると、あからさまに肩を落とす。


「何だよもぉ。精一杯の感謝を込めて接していたのに!」

「はあ……」


そんなこと言われても……


「で、用件はなに?」

「父のことについて、聞きたいことがありまして。」

「アーサーさんのことか。」


アルゼ様の表情が真剣に変わった。何かを悩む仕草をしたあと、ニヤリと笑って言った。


「じゃあ、手伝ってもらおうか!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ