第4話〜少女と悪魔〜
サクラがディルフ邸に訪れた夜のお話です。
ギルは今日も元気に自由です!
ほんのり甘くて、不穏な香りのする一夜の始まり…
「っ……あぁ〜っ、最高……気持ち良すぎっ♡」
体を揉まれ、ほぐされて、暗い部屋で声を出すのは、ディルフ邸のエステにて施術を受けるギルであった。
「こんなにイイとこあるなら、地上に住んでもいいかもっ」
ニコニコしながら体を伸ばし、ローブ姿でくつろいでいた。窓の外はすでに日が落ち、暗い空に包まれていた。遠くに、ネオンの光る人間たちの繁華街が見える。
(せっかくだし……楽しんじゃおっかなぁ〜♡)
ニヤリと笑いながら、フェンリーの服に身を包み、ディルフ邸を後にする。
***
そのころ、ディルフは――
少女を連れて帰宅していた。
「……こちらにどうぞ」
微笑みながら少女の手を取り、ソファーに座らせた。
「あ……ありがとうございます……」
少女はか細い声で呟いた。
ディルフは微笑みながら続けた。
「とんでもない。あなたのお名前は?」
「サ、サクラ……です……」
震える声で呟く。
「サクラさん、ですね。何か事情がおありのようですね……もし嫌でなければ、お話聞かせてくれますか? 吐き出せば、少し楽になるかもしれませんよ?」
紳士的かつ誘導的にディルフは探りを入れる。警戒心のない少女――サクラは、優しくされたことが嬉しくて、事情を話し始める。
「わ、私……施設で暮らしているんです。でもあまり良い環境とはいえなくて……」
(ヘラッと悲しげに笑いながら続ける)
「ちょっと抜け出してきたんです。そしたら、見ず知らずの男性の方にいきなり腕を掴まれて、怖い顔で『めあにら?』ってよく分からないことを言われて……怖くなって走って逃げてたんです。そしたら迷子になっちゃって、あそこでずっと……」
サクラは悲しげに笑いながら話し終える。
ディルフはサクラを慰めながら、言葉を続けた。
「それは大変でしたね……温かい飲み物でも淹れてきます。甘いものはお好きですか?」
サクラはコクンとうなずく。
ディルフはホットミルクを作りながら尋ねた。
「……ところで、その男性に『メラニア』と言われたのでは?」
「そうです! メラニアです! ど、どうしてわかったんですか?」
目を大きく開け、ディルフに問いかける。
先ほどまでの涙ぐんだ表情とのギャップに少し笑いがこみ上げ、フッと笑いながらディルフは答えた。
「有名な女性です。あなたにそっくりな……ね」
そして、やわらかく微笑みながら続けた。
「今日は色々あって疲れたでしょう? もう休んでください。私は隣の部屋で寝ますので、こちらは好きに使ってください」
紳士的な笑みで話し、その部屋から出て行く。
品のある部屋。装飾品も統一され、高級感が溢れている。
サクラはこの広い部屋にひとりでいるのが落ち着かなくなってきた。
(隣の部屋にいるって言ってたよね……? まだ起きてるかな……)
サクラはフラッと部屋を出て、隣の部屋のドアをノックするのであった。
お読みいただきありがとうございます!
今回はディルフとサクラがちゃんと出会いました。
そしてギルは今日も地上で自由にやってます。
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そちらに 本作登場キャラのイラスト付き紹介 をまとめていますので、
あわせて覗いていただけたら嬉しいです!
次回もよろしくお願いします。