第3話〜地上調査と出会い〜
冥界での異変調査のため、地上に向かうディルフとギル。
地上での調査中、ディルフは謎の少女と出会います。
彼女が持つ“特別な何か”に、ディルフの理性が静かに揺らぎ始めて――。
ーー冥界:ディルフ邸にてーー
「…ねぇ、ディル〜本当に地上行くのー?」
冷たい印象の広いリビングに置かれたソファーにもたれながら気怠そうに呟くギル。
「地上での異変で冥界にも影響が出る可能性がある。……それに、お前の好きな《フェンリー》(地上にある超人気ブランド)も行けるぞ?」
ディルフはギルの怠惰な態度に呆れながらも、地上に行く準備を整えた。
彼は冥界で腕の立つ名医であり、地上でも医師として働いているため、地上に慣れている。
ーー冥界と地上を繋ぐゲートを開くーー
「地上に行く時は、姿を変えるからな。」
ゲートの前でディルフが呟きながら人間の姿へと変わる。
ギルもため息を吐きながら姿を変え、二人はゲートの中へ踏み込んだ。
*
ゲートから抜けた先は、地上の路地裏。
「うえぇ、なんでこんな場所に転移するの??」
「…街中でゲートを開いて人間に見られるのはまずいだろ。俺の家に行くから着いて来い。」
ディルフは不機嫌顔のギルを連れ、地上にある自宅マンションへと向かう。
「着いたぞ。」
ディルフの言葉に顔を上げたギルは、目の前の光景に目を見張った。
「うわぁお!すっご❤︎ …え、てかこれ全部?!」
そこにそびえ立つのは、巨大で豪華なマンション。
内部にはバーやプール、スパ、サロンまで揃い、人間たちも出入りしている。
ギルはルンルン気分で部屋へ入り、荷物を投げ捨てるとそのままベッドに飛び込んだ。
「はぁぁあ、ほんっと最っ高〜❤︎ 俺このまま寝てていい?」
ベッドに寝転ぶギルを横目に、ディルフは呆れながらも言う。
「なら、私が魔力感知のあった付近を調査しに行く。…くれぐれも、問題は起こすなよ。」
*
ーー魔力感知のあった付近にてーー
「…ここか。 ……ん?」
ディルフが着いた先の路地裏。そこには、ピンクの髪をした少女が膝を抱えて座っていた。
無視して通り過ぎるはずだったが、彼女の前で足が止まる。
(なんだ…?この魔力…)
「おい、女…ここで何をしてる?」
「…えっ…わ、私?…ですか?」
涙を拭いながら顔を上げる少女。
目が合った瞬間、ディルフの瞳が揺れる。
(……似ている。3大神のひとり“メラニア”に……)
その美しい容姿と不思議な魔力が、ディルフの本能に強く訴えかけてくる。
だがすぐに冷静さを取り戻し、優しく微笑みかけた。
「どうしてこんな所で泣いているんですか?」
「わ、わたし……っ」
言葉に詰まりながら涙が止まらない少女。
「ここではなんですから、私の家に来ませんか?すぐそこなので。」
とても優しく、安心感のある笑みで彼女の手を取り、そっと立たせるディルフ。
その微笑みの裏に渦巻く感情。
そして、この少女との出会いが冥界と天界を揺るがす運命を導くことになるとは──
この時、まだ誰も知らなかった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
今回は冥界を離れて地上編へ突入です。
次回はサクラとディルフの関係にもう少し焦点を当てて描く予定です。
ギルもそろそろ騒動を起こしそう…?
ぜひ次回もお楽しみに!
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