第17話〜冥界の狂宴者〜
狂宴者・ギルの突然の来訪…
その場にいる2人の関係に気付くギル。
そしてサクラに刻まれた印。
というか、ギルは何しに来たのか…
―冥界の朝は、薄暗い冥月の明かりから始まる―
部屋のカーテンが揺れ、昨夜の出来事を思い出させるような風が肌を撫でていく。
サクラは目を覚まし、隣で眠るビートの横顔を見つめた。
あまりに整ったその美貌に、無意識に指先が伸び、そっと髪を撫でる。
「…おはようございます、サクラさん。」
ゆっくりと目を開けたビートの瞳には、まだどこか熱を帯びた光が残っている。
その低く優しい声に、サクラは昨夜の記憶が鮮やかに蘇り、頬を赤らめた。
「お…おはようございます!」
顔を覆い視線を逸らそうとするサクラの手を、ビートがやんわりと押さえる。
サクラの透き通る肌を見つめながらビートは呟く
「…私の護印を、付けてもいいでしょうか」
耳元で囁かれ、意味をすべて理解しきれないまま、サクラはこくりと頷いた。
ビートの指先がサクラの胸元付近をそっとなぞる。
じんわりと温かさが広がり、身体の奥にまで不思議な感覚が満ちていく。
印を付け終えると、ビートは額に口づけを落とし、優しく髪を撫でた。
「これは…私の大切な人である証と、他の悪魔から守るためのものです」
「…ありがとうございます…」
サクラがそう言いかけた時――
“バターンッ!”
勢いよく部屋のドアが開き、朗らかな声が響く。
「ビーーートーー??おっはよ〜♡ サクラいる〜???」
現れたのは、冥界一の狂宴者“ギル”。
その後ろから、焦った様子のボルムが入ってくる。
「ビート様…申し訳ありません…。ギルティー様を止められませんでした」
悔しそうに俯くボルムに、ビートは静かに手を上げ、下がるよう促す。
「えぇ〜止めようとしたの〜? 止まったら“いいコト”してくれたのかなぁ♡」
にやりと笑ってボルムをからかうギル。
「ギルさん、何かご用ですか?」
ビートの問いに、ギルはサクラへ視線を向ける。
そして胸元の印に気づき、面白そうに目を細めた。
「…これ、まさか契約印じゃないよね?」
「契約ではありません。ただ…他の悪魔に触れられぬようにはしました」
「へぇ〜重たいねぇ♡」
面白半分に印へ手を伸ばした瞬間――
“ブチャッ”と嫌な音がして、ギルの手が破裂する。
「……まぁ〜だよねぇ♡」
ヘラっと笑い、瞬時に再生させるギル。
「それで…本題は?」
ビートはため息をつき、サクラにそっと上着を着せた。
「闇市行こっ!♡」
無邪気に笑うギルの声が、部屋の温度を一気に変えていく。
ビートは軽くため息を吐き、サクラにそっと上着を掛けた。
「準備を整えたら出発します」
短くそう告げると、ビートは窓の外を一瞥する。
遠く、冥月が薄雲の向こうで滲み、朝と夜の境目を曖昧にしていた。
その光が差し込む中、サクラは胸元に残る温もりをそっと押さえた。
それはまだ消えることのない、昨夜から続く証だった。
――そして、冥界の一日が静かに始まろうとしていた。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
やっと作者の推しキャラの出番きましたよ…
ギル節かまして元気よく闇市行って欲しいですね〜
ビートとサクラの関係もこれからどう動いていくのか…
新キャラ登場なるか…?
X(旧Twitter)にて、ビートの従者の紹介イラスト載せてますので、ぜひ見てみてください!
プロフにリンク貼ってます〜