表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GUILLTY  作者: SHin
13/19

第13話〜捕食者〜

冥界の高級レストラン街…


そこに佇む、落ち着いたレストラン。

安心しきるサクラに迫る脅威とは…


危険な夜がはじまります。

――冥界の富裕層。




サクラは、ビートの用意したレストランへ足を踏み入れた。


そこは煌びやかなシャンデリアが輝くわけでもなく、金銀で飾られた豪華絢爛な内装でもない。

落ち着きがあり、品がある――そんな空間だった。


冥界に来てからというもの、上級悪魔たちと関わり、贅沢な暮らしの中にいたサクラ。

だからこそ、このレストランがとても心地良く感じられた。


2人は冥界の景色が一望できる席につき、顔を見合わせる。

サクラは少し照れたように、ぎこちなく笑った。

ビートはそんな彼女に、柔らかな笑みを返す。



「サクラさん、今日は素敵な時間を過ごせました。ありがとうございます」



その優しい言葉に、サクラは胸の奥がちくりと痛む。

――今まで、彼を疑っていたことを悔やんだ。



「……ビートさん、こちらこそ。ありがとうございます。とっても楽しかったですし……」


少し言いよどんでから、唇を噛む。


「その……今まで疑った態度をとってしまって……ごめんなさい」



「気にしないでください。私は“そう思われやすい”のです。仕方ありません」


ビートは静かに続ける。


「それでも、私を理解しようとしてくれたあなたの優しさが、とても嬉しい」



「わ、私……ビートさんが良い悪魔ヒトだって、もう分かりましたから! 怖くないですよ」


サクラは無邪気に笑う。


「最初は、ふわふわして体が熱くなったけど……今は平気なんです」



やがて、二人のもとへ料理が運ばれる。

穏やかな空気の中、食事が始まった――が。



ビートがふと、独り言のように呟く。

「……そうですね。私の魔力に、慣れたようですね」


「え……?」


聞き返すサクラ。

その目に映ったのは――普段よりも赤く、深く染まったビートの瞳だった。


(……吸い込まれる)


目を離せないまま、サクラは固まる。


「私の魔力に慣れたのなら……あなたに触れても、問題はないでしょう?」


グローブを外したビートの指先から、濃密な魔力が広がっていく。

甘く、頭を痺れさせる香りが室内を満たし、サクラの呼吸を奪った。


「っ……ビート、さん……」



席を立ち、彼はゆっくりとサクラに歩み寄る。

その手が頬に触れる。冷たさと熱が混ざった、不思議な感触。


「私は、人を惑わし、魂や肉体を喰らう悪魔……そう、以前にもお話ししました」


ビートのその言葉にこれから何が起きるか察しがつく。



サクラの胸に、恐怖と裏切られた痛みが同時に押し寄せる。

涙が滲む視界の向こうで、ビートは今までの優しい笑みを捨て、悪魔の笑みを見せた。


指を鳴らすと、紫煙とともに従者の悪魔が現れる。

サクラの身体は動かず、そのまま抱き上げられた。




――意識が闇に沈む。




目覚めたとき、サクラは見知らぬ部屋のベッドに横たわっていた。

可愛いネグリジェに着替えさせられていた。

窓の外では冥月が妖しく輝いている。



「……まだ夜……ここ、どこなの……?」


不安と悲しみで、涙が頬を伝う。


その時、コンコンと扉が叩かれた。



「…サクラ様、ビート様がお待ちです」

先ほど自分を抱き上げた悪魔が、冷たい声で告げる。



廊下に出ると、一階のホールが見えた。

豪華だが、どこか影のある屋敷――そんな印象。



「こちらです。……お入りください」



大きな扉が開き、紫煙が溢れ出る。

部屋の中央には、大きなベッド。

そしてそこにいたのは――完全な悪魔の姿へと変わったビート。


淡い金髪は腰まで流れ、瞳は金に近く輝く。

身体には紋様が浮かび、頭からは鋭い角。

恐ろしくも、美しすぎる存在。


──以前、ディルフに教えてもらったことがある。

冥界に住む悪魔達には魔力がある。そこらに住む下級や中級の悪魔達は、人間界でもよく描かれているような、角や尾を持つ悪魔本来の姿で一生を終える。だが、上級悪魔は違う。膨大なまでの魔力を持つ彼らは、周囲の悪魔に強い影響を及ぼす。そのため、冥界の秩序を保つべく、冥界王カルマより魔力放出を抑えるよう命じられている──と。


だからこそ、上級悪魔は外に出るとき、人間に近い“仮の姿”をまとっている。

本来の姿は、よほどのことがない限り外では見せない。



その美しい悪魔にサクラは静かに問いかける


「…………私のこと……喰べるんですか…?」


ビートは微笑む。

魔力が鎖のように変形し、サクラを引き寄せ、膝の上に座らせる。


「……残念ながら、私はあなたが思っているような優しい悪魔ではありません」


そのまま触れられ、首筋にキスされる。

反応を楽しむ様にサクラの体を優しくなぞる


そのままビートは丁寧にサクラの体を〝慣らし〟ていく。

全身に走る快感――だが、サクラの瞳から涙が零れた。


涙がビートの肌に触れた瞬間、サクラの記憶が流れ込む。


地上に生まれ、親に捨てられ、虐げられて傷付けられ…それでもなお諦めず、孤独に生きようとした人間の記憶。

それは悪魔であっても同情してしまうほどに、悲惨で残酷な少女の過去だった。


そして、冥界に来てからの記憶…


ビートに対しての気持ちが映し出される。

初めは怖がり警戒していたが、次第に周りの警告をも跳ね除け、自分を信じ、ビートを信じた愚かで可哀想で、どこか愛おしく思えてしまう…そんな少女。


ビートは手を止めた。

紫煙が引き、彼はいつもの姿に戻る。



「……サクラさん、怖い思いをさせてしまい、申し訳ありません」


ふらつきながらも、サクラは笑った。

「ほら……ビートさんは……優しいんだよ……」



その一言に、胸が締め付けられる。

ビートは魔力の結界を張り、サクラを楽にしてやった。



体から魔力が抜け、安心したのかまるで小さな子供が親にする様にビートに抱きついた。

少し驚きながらも、泣きながら抱きつく彼女を、ビートはそっと抱きしめる。


ビートの魔力の変化に気付き、やって来た従者の悪魔。

部屋の中の光景に一瞬言葉を失う。


「……ビート様…」




「……彼女には、最上級の敬意を持って接しろ」


その言葉の意味を、従者はすぐに理解した。


こうして――

〝保護対象(獲物)〟であった少女は、冥界で強力な力を持つ悪魔に“守られる”存在となった。




ここまで読んで頂きありがとうございます!


サクラ、心配になる程優しい。もはやそれは優しさなのか…謎ですが、今回の件で、ビートとサクラの関係も一気に変化します。


上級悪魔と関わるうちにサクラの魔力にも変化が出て来ますのでお楽しみに〜


X(旧Twitter)に、ゼロンのブティックで服選んでるサクラ×ビート×ゼロンのイラスト載せてるので良かったら見てください〜


プロフにリンク貼ってます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ