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第8話 畑をもらう

 ボクたちは、センディさんから提供された土地を確認しにいく。


「すごい、荒れ地ですね」


 畑は雑草が生い茂っており、住居用の小屋も小さい。ただ、ちゃんと整備すれば住めそうだ。


「オレの父が所有している土地だったんだが、買い取った」


 手に入れたところまでは、よかった。だけど、知り合いの建設会社が各事業に手を出しすぎて倒産してしまう。おかげで荒れ放題に。


「もっと信頼できるヤツに任せればよかったんだが、今では土地ごと負債になっちまった。だから、所有してもらえたらってな。どうだ、ギルド長?」


 センディさんが、ギルド長に確認を要求する。


「ふむ。各ダンジョンへ向かう拠点としては、悪くないね。ただ、土の状態が最悪だね」


「そこは、ワラビの腕の見せどころってもんだろ?」


 ワラビは言われなくても、平べったい状態になった。畑の端から端まで長細くなったワラビは、モップのように畑の雑草を食べ始める。

 雑草を分解して、肥料にもしているようだ。

 何体にも分裂して、手分けして雑草抜きと耕しを行う。


「マスターツヨシ、あとは種と水さえあれば、問題ありません」


「わかったよ。では、種を何粒かください」


 ボクはギルド長から種を受け取って、ワラビが耕した土に植えていく。 


「スライムは、気に入ったみたいだぜ?」


「たしかに、このためのスライムとも言える」


「こんなボロッボロの畑を、テイムしたスライムが緑化したってんなら、ワラビの実力がガチだった証明になる」


「キミの言うとおりだね。わかった。ここをギルド指定の土地として活用させていただく」


 ボクたちが栽培する費用は、すべてギルドが持ってくれるという。


「マジかよ? タダでツヨシに譲ってやるって言ってるのに」


「これだけ広大な荒れ地を、無料というわけにはいかない。費用はすべて、ギルドが支払わせてもらうよ」


「いいのかよ?」


「こちらは、テイムモンスターの資料をいただけるのだ。これっぽっちの土地を買っても、お釣りが来るくらいさ」


 ならばと、できた野菜も分けることで手を打った。


 データも受け取るわけで、その価値は十分にあるという。


 それだけ、ワラビは興味深い存在らしい。


「ではツヨシさん、ワラビさん、必要なものがあったら言ってくれ。では」


「はい。では、モモの木をください」


 ワラビが好きなモモを、この畑で育てようと思う。


「わかった。手配しよう」


 ギルド長は、ボクたちを残して去っていく。


「そうと決まれば、オレたちも引っ越しの準備をするかな」


「みんなも、ここに住むの?」


「オレたちは、パーティだからな」


 ひとまずセンディさんが、業者に連絡をした。小屋の整備を、してくれるという。


 コルタナさんは、ソロ狩りに向かうという。この畑に適した薬草を、探すらしい。


「薬草が作れたら、ポーションも自作できるわ。安上がりだし、人に売ることも可能よ」


 農薬の材料も、育ててくれるそうだ。


「それはいいですね。よろしくお願いします」


「でしたらコルタナ様、こちらの土と草の成分表です」


 この畑にある土に含まれた栄養素を、ワラビがデータ化してくれていた。そんなことまで、できるのか。


「ありがとう、ワラビちゃん。いい薬草が採れそうね」


 杖を持って、コルタナさんはダンジョンへと向かった。

 ボクは、近くの川から水を引いてくる。用水路があるため、比較的簡単に作業ができた。


「センディさん、ありがとうございます」


「いいってことよ。土地の有効活用ができるんだ。オレのためでもあるから、ワケないさ」


 でも、生まれて初めて、自分の城ができる。


 一生かかっても、家なんて手に入らないと思っていた。


「家で希望があったら、言ってくれ」


「ワラビが走り回れる広さが、ほしいです」


「お前さんってホントに、ワラビファーストだな」


「ボクの生きがいは、ワラビなので」


「わかった。そうしよう」


 ボクがセンディさんからもらった畑は、四面ある。


 三面に穀類と野菜を植えておいた。


「畑で量産できそうな薬草を、採ってきたわ」


 コルタナさんがダンジョンから持ち帰った薬草を、畑の一角に植えた。


「あとは、これで土を病気から守ればいいわ」


 ボクはコルタナさんから、枝豆の種をもらう。

 残った一面は、イネ科やマメ科の緑肥作物を植えた。緑肥とは、肥料になる作物をいう。緑肥を育てて土を鍛えつつ、雨や寒さ、病気から土を守るんだ。


 何も育てないで土を守るのは、大昔の話なんだって。


「ビールがうまくなるな」


「もう、センディはお酒のことばっかり」


 三人とワラビで談笑をした。


「そうだ、ツヨシ。もうひとつプレゼントがあるぜ」


 ボロ小屋の倉庫から、センディさんが何かを引っ張ってくる。これは……。


「原付だ!」


 センディさんはなんと、単車をプレゼントしてくれた。八〇年代産の骨董品レベルである。


「遠出したいって、言っていたしな。オレたちは車がある。ツヨシを乗せてもよかったが、乗せる度に遠慮していたし。それに、二人で活動できるものがいいかなってさ」


「ありがとうございます。何から何まで」


「ワラビと、走ってこいよ。あとはやっておくから」


「はい。オイルを入れに行ってきます」


 ガソリンは、多少残っていた。近くのガソスタまで、走ってこようかな。


 ワラビを頭に乗せて、ボクは原付のエンジンを掛けた。指定のヘルメットじゃないと、怒られるかな。一応、買っておこう。


「風が気持ちいいね。ワラビ」


「はい。マスターツヨシ。どこまでも行けそうです」


 次は、行ったこともない遠くのダンジョンまで行ってみよう。


 電車でのダンジョン巡りとは、もうおさらばだね。

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