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底辺ダンジョン配信者、干からびたスライムを育成していたらバズって最強コンビへ成長する  作者: 椎名 富比路
最終章 ドラゴンとの生配信バトル

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第68話 最終話 これからも

 ボクの耳元で、ヒヨリさんがつぶやく。


「ツヨシさんの背中って、優しさで溢れています。『オレについて来い』ってタイプじゃなくて、守ってあげたいタイプですね」


 ヒヨリさんが、ボクの背中を撫でる。


 ちょっとくすぐったくて、心地いい。


「ずっとお礼がしたかったんです。ツヨシさん、ありがとう」


「そんな。ボク、ヒヨリさんにお礼を言ってもらうことなんて」


「こんな弱いわたしを、パーティに入れてくれて」


 他の冒険者では、相手にもしてもらえなかったという。


「これからもずっと、一緒にいてください」


 お風呂場で、プロポーズを受けるなんて。


「はい」


 とはいえ、ボクの心は決まっている。


「おめでとうございます、マスターツヨシ」


「おめー」


 ワラビとピオンも、祝福してくれる。

 



「ではみなさん、ありがとうございます」


「礼を言うのは、こっちだぜ。楽しかったよ」


 ショウトウルが、握手を求めてきた。


 ボクも手を差し出して、応じる。


「次は新婚旅行のときにでも、おいでよ」


「ランさん!」


「あはは。またな」


 ショウトウル夫妻に見送られて、ボクたちはドラゴンの里を後にした。



 後日、さっそくドラゴン装備を試す。


 六層あたりで、試してみた。


 グレーターデーモンを、相手にする。


「ワラビ、体当たりだ」


 デーモンの懐に、ワラビが飛び込んでいった。


 さすがに一発で倒せなかったデーモンを、ワラビが一撃で倒す。


「めちゃくちゃ強くなってるよ、ワラビ。すごいね」


 ドラゴン装備って、とんでもないな。


「マスターツヨシの魔力を、いただいているからですよ」


「いやいや、ボクなんて……うわ!」


 背後から、デーモンが飛びかかる気配が。


 ボクは、とっさに剣を構えた。


 剣に向かっていくように、デーモンが真っ二つになる。


「ふえええ」


 チリになったデーモンを見て、ボクは唖然となった。


「自分から突進して、斬られちゃったよ」


「あのデーモンは、自分がどうやって負けたのかも知らずに散っていったようですね」


 ダンジョンから、ボクらはスクーターに乗って帰宅する。


「おかえりなさい」


「おかえりー」


 ヒヨリさんが、ピオンと一緒に出迎えてくれた。



 

 この家は実質、ボクたちだけが住むことに。

 お互いの実家へあいさつに回った後、ささやかな挙式を上げた。

 ギルドの人たちがセッティングしてくれて、いい結婚式になったと思う。

 さすがに、「新婚旅行でダンジョンはやめておこう」と、二人の意見は一致した。


 あらかたの行事を終えて、今日ようやくダンジョンに潜ったのである。


 ダンジョン配信で得たお金があるため、もうダンジョンに潜る必要はない。


 でも、ボクはダンジョン攻略がスキだ。


 危ないところへは行かないけど、まだダンジョンへは潜り続けるつもり。

 

「薬草です。ワラビがいっぱい集めてくれました」


「ありがとうございます、ツヨシさん。ワラビさん」


 ワラビを抱きしめながら、ヒヨリさんが腰掛ける。 


「ピオンもお留守番をしながら、畑を見ていたんですね?」


 きちんと整理された畑を見て、ワラビが感謝を述べた。


「わがはい、おてつだいー」


 ピオンの周りには、同じようなスライムが大量に飛び跳ねている。ピオンが分裂繁殖して、農耕班を結成したのだ。


「おう、ヒヨリ。エプロン姿が板についてきたじゃないか」


 いつもの車から、センディさんが降りてきた。


「センディさん! お久しぶりです!」


「オレだけじゃないぜ」


 センディさんとコルタナさん、メイヴィス姫様の姿も。


 ヒヨリさんの筑前煮を食べながら、みんなでうっとりする。


「引退なさるんですね?」


「ああ。もうやり尽くしたからな」 


 センディさんは、本格的に鍛冶の仕事に就いた。「自分がやりたいことは、やはり鍛冶」だと気づいたそうだ。ものづくりの家系で育ったから、センディさんも同じ道を歩むという。


「ダンジョンにも、たまに顔を出すよ。後進の育成も兼ねて」


「ボクも、参加していいですか?」


「バカ言えよ。お前さんは、オレの指導なんていらねえじゃないか。カムロ師匠でさえ、持て余すって言っているくらいなのによお」


 ガハハ、とセンディさんは笑う。


「姫様とコルタナさん、異世界の方はどうなんですか?」


「聞いてよお。書類の整理が終わらないの」


 メイヴィス姫が、ワラビに慰めてもらっている。


 コルタナさんは、メイヴィス姫についていって、元の世界に一旦帰った。王国に報告するためである。


 ボクたちの働きで、魔王ルクシオを倒し、ショウトウルたちドラゴンとも和解した。そのことで、事務処理が大忙しになったのだそう。


「大変ですね……なにか、差し入れをお届けします」


「地球のグルメを、ギルド経由で送ってきてほしい! なんか、オススメある?」


「桃のムースが、ワラビのお気に入りですね」


 果肉入りなのが、すばらしいのだとか。


「それ! お願い!」


 いいのかなあ? コンビニスイーツだよ?


「そういうのがいいの! あたしたち異世界人は、コンビニスイーツのようなものにこそ、興味があるんだから!」


 メイヴィス姫の力説に、ボクは苦笑いをした。



 慌ただしい面々が帰っていき、ボクとヒヨリさんの二人だけに。


「ボクは、幸せです。ヒヨリさんとピオンがいて、みんながいて、ワラビがいる。底辺配信者だったときには、そんなこと想像もできなかった」


「わたしもです」


 ボクは、ヒヨリさんと手をつなぐ。ワラビをヒザの上に乗せながら。


「マスターツヨシ、ありがとうございます」


「ボクの方こそ、ありがとう。ワラビ。これからも、よろしくね」

 

 

(完)


(番外編に続く)

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