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底辺ダンジョン配信者、干からびたスライムを育成していたらバズって最強コンビへ成長する  作者: 椎名 富比路
最終章 ドラゴンとの生配信バトル

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第67話 ドラゴンスライム

 なんだなんだ? なにが起きた?


「あの、これってどういうことなんです?」


「こいつら、ショウトウルしか見ていなかったみたいでね。ツヨシとワラビの装備まで、ちゃんと見ていなかったのさ」


 ランさんが、ため息をつく。


 どうもボクが着ているヨロイの持ち主は、相当レアなモンスターだったらしい。


「鬼神を倒した時点で、アンタはショウトウルとほぼ互角なんだよ」


「マジですか」


「大マジさ。鬼神ってのは、それだけ強いんだよ」


 それこそ、魔王ルクシオを遥かに凌ぐほどの。


「では、今彼らと戦っても?」


「多分、返り討ちにできる」


 うわあ。ボク、そんなに強くなっちゃったんだ。なんの実感もないや。


「ツヨシ殿、あなたの強さはしかと見届けました」


 老ドラゴンが、白い髭のおじいさんに変化する。


 ウソだよねぇ。装備品すら眼中になかったんだから。


 ほら、ランさんも「白々しいな」って顔をしているし。


「こちらを、献上いたします」


 老人から、つづらを受け取る。浦島太郎とかに出てきそうな、箱だな。


「この場で開けても、大丈夫ですか?」


「もちろん」


 まあいいか。気がつくとダンジョンと地球には時差があって、ボクたちが老化するなんてことはないでしょ。だとしたら、石田さんが気づくはずだ。


 中を開けると、数枚のウロコが入っている。


「こちら、【竜鱗】でございます」


 ドラゴンのウロコを、手に入れた。


「かなりの、貴重品だよ。自分の一部を、他人に渡すんだからね」


 竜族がウロコを渡す行為は、最大級のおもてなしを意味する。


 つまり、ドラゴンはボクたちを認めてくれたわけだ。


「ここまでしていただいて」


「いえいえ。現役ドラゴンでも最強のショウトウルを、追い詰めたのです。あなたの実力は、このウロコを持つに値します」


 めちゃくちゃ、へりくだっているなあ。


「もらっておけよ、ツヨシ」


「そうよ。バチは当たらないわ」


 センディさんとコルタナさんが、ウロコを手にとってボクに渡す。


 そこまでいうなら、受け取ることにしよう。


「じゃあ。ワラビ、おいで」


 さっそく、ワラビに一枚食べさせた。


「どう?」


「パリパリとして、噛みごたえがあります」


 消化するのがスキなワラビは、かなり気に入っているみたい。


 一枚を食べ尽くすのに、ワラビは結構な時間をかけた。抜群の消化吸収力を誇るワラビでも、すぐには消化できないのか。


「はああ。ごちそうさまでした」


 ウロコたった一枚で、ワラビは大満足げだ。


 ワラビの身体が、ピカッと光る。また、クラスチェンジしたようだ。


『テイムモンスターワラビが、【ドラゴンスライム】にクラスチェンジしました』


 アナウンスが流れる。


 ワラビの角が、さらに二股に分かれていた。角といっても尖っているだけで、プヨプヨなままだけど。


「また、強くなった気がします」


 ボクもこのウロコを加工して、新しい装備品にしようかな。


「ウチで加工してやるよ。腕のいい鍛冶屋がいるんでね」


「いいね。オレも、手伝わせてくれ。ドラゴンのウロコを装備品にするなんて機会は、めったにねえもんな」


 ドラゴン装備ができあがるまで、ボクたちは里に滞在することにした。


 個室を用意してもらい、内湯をいただく。


「はああああ」


 お湯の効果で、さらに体中の疲労がなくなっていった。ついさっき、回復の泉に入ったばかりだというのに。


「絶景だね。ワラビ」


「はい。さっきまで戦場だったとは、思えませんね」


 ワラビは、お湯にプカプカと浮いている。


「回復の泉とは、また違うんだね」


「あれは入るというより、漬け込まれた感じでしたから」


「だよねぇ。あれはなんだか、お洗濯みたいだったもんね」


 無理やり顔を洗ってもらった感じに、近いかも。


「失礼します」


「ヒヨリさん!?」


 バスタオル一枚のヒヨリさんが、ピオンを伴って内湯に入ってきた。


「どうしたんですか?」


「お背中を流しに」


 ヒヨリさんが、タオルを取る。中は、白いビキニだった。


 それでも、ほぼ半裸じゃないか。


「あの、ヒヨリさん。さすがに目の毒です」


 ボクは、ヒヨリさんから体ごと視線をそらす。見たいけど、見たらいけない気がする。


「ですよね。割とスタイルはいい方ではないので、お目汚しになるかと」


「違ってて! そういう意味ではなく」


「ひとまずお背中を」


「自分でできますので!」


 ボクが遠慮をしていると、「はやくこーい」とピオンが浴槽に飛び込んできた。お湯を飲みながら、みるみる巨大化する。


「うわああ。わかったから、出ますよ」


 観念して、ボクはお湯から上がった。


「ヒヨリさん。ヘチマは、ワタシをお使いください」


 ワラビが、石けんを飲み込む。


「ありがとうございます、ワラビさん。ではお言葉に甘えて」


 石けん入りスライムになったワラビで、ヒヨリさんがボクの背中を洗い始めた。


 ピオンに温泉のお湯をかけてもらいながら、背中でヒヨリさんの手の動きを確かめる。


「ツヨシさんの背中って、すごい柔らかいんですね」


「鍛えているつもりなんですけどね……」


 まだボクは、頼りないみたいだ。


「そういう意味ではありません」

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