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底辺ダンジョン配信者、干からびたスライムを育成していたらバズって最強コンビへ成長する  作者: 椎名 富比路
最終章 ドラゴンとの生配信バトル

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第65話 ショウトウル戦 決着

「そら!」


 顔面に向かって、ショウトウルの回し蹴りが飛んでくる。


 剣で受け止めた。衝撃を受け流そうとしたが、全身が一回転してしまう。体を持っていかれそうな、圧力である。


 地面に落ちそうになるのを、ワラビが受け止めてくれた。


「シュ!」


 まだだ。カカト落としが振ってくる。


 ワラビがガードして、どうにか直撃は免れた。


 しかし、どう反撃するか。


 人間形態になっても、ドラゴンを相手にしているみたいだ。まったく弱体化していない。強さを維持したまま、肉体を人間サイズに圧縮しているだけ。


「しかし、コンバットスタイルはやりやすくなっています」


「だね。やっぱり接近戦だ」


 剣を逆手に持ち、ボクはインファイトで戦う。


「格闘と剣術を合わせた、複合戦闘スタイルか。器用だな」


 ボクは地味ながら、的確にダメージを与えていく。こちらは武器を持っているが、ヒヒイロカネの剣を持ってしても、相手に致命傷を与えるには至らない。


 人間サイズといっても、ショウトウルのウロコは凄まじく固い。ヒヒイロカネで、ちょうどいいくらいのハンデである。


 防御はすべてワラビに任せっきりだが、それでもワラビを突き抜けてきた。ワラビの軟体をもってしても、ヒヒイロカネを取り込んでいながらも、ショウトウルはダメージを入れてくる。


 足や胸が痛む。回避を無視した、ムチャな戦闘術だ。それでもショウトウルと戦うには、これしかない。


 鬼神のヨロイを身につけていなければ、ボクの身体は骨すら残っていなかっただろう。ワラビの衝撃吸収と鬼神のヨロイの硬さを合わせても、まだ相手の打撃が強い。


 ボクのヒザが、崩れた。


 チャンスと見たのか、ショウトウルがナックルパンチの構えに。


 カウンターで、ボクとワラビが殴りかかる。


「マスターツヨシ、防御を。かすっただけでも、顔面が破壊されます!」


「いい! このままワラビも攻撃に集中して!」


 ボクは、鬼神のヨロイの装甲を信じる。


 ショウトウルのパンチが、ボクの髪をかすめた。


 剣を逆手に構えて、剣を突き立てる。


「【鎧通し】!」


 ショウトウルに、エルボーを食らわせた。

 ヒヒイロカネの剣が、ショウトウルの腹部をとらえる。

 カキイイン、と、金属音が鳴り響いた。


 貫けなかったか。


 でも、まだいける!


「ワラビ!」


 ボクは、ヒヒイロカネの剣になっていたワラビに、ヒザ蹴りを浴びせた。


「ごうあっ!」


 剣は、ショウトウルの腹を貫くことはできない。しかし、みぞおちにクリーンヒットした。


 ショウトウルが、ヒザをつく。


「勝負あり! 勝者、ツヨシ!」


 ランさんから手を上げてもらって、ボクは横に倒れる。


「ツヨシ!」


「ツヨシくん!」


 センディさんとコルタナさんが、ボクに駆け寄った。


 しかし、二人の間を割ってボクに駆け寄る影が一つ。ヒヨリさんだった。


「ツヨシさん! ツヨシさんしっかり!」


「ああ、ヒヨリさんには、こんな顔を見せたくはなかったなぁ」


 すぐ側にある回復の泉に、ボクの顔が写っている。もう、見ていられないほどにグシャグシャだった。やはりショウトウルの攻撃を、かわしきれなかったか。


「効かない。ありったけのポーションを使っても、ツヨシさんが回復しない!」


 半狂乱になって、ヒヨリさんがボクにポーションを飲ませる。


 しかし、ボクの体力はまったく回復しない。めちゃくちゃになった顔も、治らなかった。


「ムチャですよ! 自分の身体を犠牲にして、当身を繰り出すなんて! 死ぬところだったのに。ツヨシさんになにかあったら、わたし」


 ヒヨリさんに怒られても、仕方ない。


「ごめんなさい、ヒヨリさん。こうしないと、勝ち目がなかった」


 とはいえ、一応ランさんに確認を取る。


「あの、本当にボクの勝ちでいいんですか?」


「構わないよ。ドラゴンに本気でヒザをつかせたんだ。人間が勝ちを名乗るなら、十分さ」


「よかった……」


 ボクは、体中の力が抜けた。このままもう、死んでしまうかもしれない。


 ドラゴンとの戦いは、そこまで壮絶だった。


「ちょっとお嬢ちゃん、ちょっとこの娘を預かっておいておくれ」


 ランさんが、なぜかヒヨリさんに子どもを預ける。

 直後、ボクを抱き上げてくれた。


「ツヨシ。ちょいと、くすぐったいぞ」


 ランさんが、回復の泉にボクの全身をドボンと沈める。


「うわっぷ! なにをするんですか!? それに、どうしてこんなところに回復の泉が?」


「観光用の足湯」


 ああ、観光地に足湯ってあるよね。たしかにってなんでやねん!


「足湯に顔をつけるなんて!」


「しかし、マスターツヨシ、お顔をよくご覧ください」


 ワラビが鏡代わりになって、ボクの顔を映し出した。


「顔が、治ってる!」


「こころなしか、以前よりイケメンになった気が」


「それはワラビフィルターがかかりすぎかな……」


 マスターに心酔しすぎでしょ。ワラビは。


「よかった。ツヨシさん!」


 ヒヨリさんが、ボクに抱きつく。


「ああ。ヒヨリさん。抑えて抑えて。あの、みんなが見てますので!」


 ボクが大声で制すると、ようやくヒヨリさんも我に返る。


「ご、ごめんなさいっ」

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