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底辺ダンジョン配信者、干からびたスライムを育成していたらバズって最強コンビへ成長する  作者: 椎名 富比路
最終章 ドラゴンとの生配信バトル

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第63話 ブルードラゴン・ショウトウルの決闘場

 ショウトウルとの決戦は、ブルードラゴンの領土で行うことに。


「ツヨシさん、こちらです」


 ヒヨリさんの案内で、温泉の湧き出ている山奥へ。


 温泉街だが、人の気配はない。モンスターが、入りに来ている。アザラシのような顔の魔物が、浴衣を着ながら温泉施設に入っていく。土産物屋さんには、スマホを持ったサキュバスが自撮りをしている。同じように、浴衣を着ていた。


 道にも様々な薬草が生えていたが、とても触れそうなものではない。食虫植物みたいに、ウネウネしている。モンスターが平然と食べているけど、大丈夫なんだろうか?


「すごい光景ね」


「薬効とか、絶対に人間には、効きすぎて毒なんでしょうね」


 匂いを嗅いだだけで、ヒヨリさんには効果がわかるという。


「やべー。くせになるー」


 スライムであるピオンでさえ、ここの温泉がいかに強烈かわかるようだ。ボクたちが触れない薬草を、おやつ代わりに食べているが。


「ワラビは、なんともない?」


「はい。どうもありませんね。心なしか、ステータスが上がった気がします」


 ワラビもピオン同じように、道に生えている草を食べる。


「毒が入っていたとしても、ワタシはアイテムとして取り込めますので」


「相変わらず、すごいね」


「ただ、やはりワタシもモンスターなのでしょうね。ホームシックにかかりそうです」


「ワラビでも、そんな感情はあるんだね?」


「はい。自分でも驚いています。ですが、今はマスターツヨシのそばこそ、ワタシの家ですので」


「ありがとう、ワラビ」


 それにしても、こんなところにある温泉だと、さぞ危険なんだろうな。 


「ヒヨリさんは、浸かってみて、なにも変化はありませんでしたか?」


「回復の泉の、かなりすごいバージョンでしたっ。丈夫な瓶があれば、ポーションとして使いたかったですねえ」


 興奮気味に、ヒヨリさんが話した。よほど楽しかったのだろう。


 瓶の中で薬効が持続するかわからなかったので、ヒヨリさんはポーション作りをあきらめた。わずかにピオンが吸収した分を、分析してみたという。結果この辺りの湧き水や薬草が、回復の泉の成分と告示していることがわかったらしい。


「普通の人間には効果がありすぎて、代謝が上がり過ぎるようです。これだと、かえって病気になるでしょう。回復の泉でさえ、わたしたちのような冒険者専用の施設ですし」


 人間サイズに合わせて、お湯をだいぶ薄めてくれたのだろうとのこと。


「温泉地には、すげえ鉄が取れるっていうな。ミスリルやヒヒイロカネも、ここで採掘したんだろうよ」


 センディさんが、岩を撫でながら語る。


「こちらです」


 ヒヨリさんが終着点に案内してくれた。


 ショウトウルの宿は、温泉町の中でもひときわ目立つ場所にある。振り返ると、街どころか山の下すべてを一望できた。宿の方で、屋外のビューを堪能できるらしい。


 少し横手に向かうと、大きな庭がある。庭というより、国立公園といったほうがいいかもしれない。広々とした草原が、どこまでも広がっていた。野球場何十個分、ってサイズである。


「お待ちしていました、ツヨシさん」


「石田さん?」


「今回、わたしがジャッジを努めます」


 浴衣姿の石田さんが、グラウンドに立っていた。わずかに身体が、上気している。日頃の疲労がすっかり取れているようだ。


「実はみなさんがこちらにいらっしゃる前に、一泊いたしました」


 心地よいおもてなしを、受けたらしい。


「ツヨシ、逃げずによく来たな」


 スカジャン姿で、ショウトウルが迎えてくれた。


「ここってダンジョンだと、どのあたりになるんです?」


「八層か、九層くらいか。俺様たちの間では、『神の領域』と呼ばれている」


 田舎には、地元の人でも絶対に立ち寄らない場所がある。そこは神様がいて、起こしてはいけない場所だと。もし目覚めさせてしまったら、必ず祟られる。そうなれば、祀らなければならない。田舎のおばあちゃんから、聞いた話だ。


 ドラゴンの住む地域は、まさにその神域なのだろう。


「質問なんですけど、なんであんな配信になったんです?」


 ボクの問いかけに、ショウトウルが頭を抱える。


「地球の文化を調べたら、あのやり方が一番効果的だって知ったんだよ」


「あんた、まだそんなの見ていたのかい!」


 すぐ後ろで、ショウトウルの奥さんであるランさんが、ビンタを食らわせた。


「ゴメンよ。アタシが相手できないから、そういうサイトで処理していたみたいだねぇ。お嬢ちゃんには、迷惑かけたよ」


「いえ。迷惑だなんて。かなりのおもてなしでした」


 ランさんの謝罪に、ヒヨリさんは手をひらひらとさせる。


「でも、勝負は勝負だよ。アタシは今回、手を出さない。ショウトウルだけと戦ってもらう」


 こちらからは、全員がかかってもいい。


「あたしたちが勝ったら、地球には手を出さないでくれる?」


「もちろんさ。ただし、あんたらが負けたら、地球はドラゴンが支配する」


 ブルードラゴンは、侵略に本腰を入れるという。


「望むところよ」


 異世界代表のメイヴィス姫と、ドラゴン代表のランさんが、約束事をかわす。


「悪いね。メンツの問題でさ。めんどくさい連中なんだ。未だに、支配者ヅラしている」


「そうね。ウチの世界の魔王たちも、そんな感じよ」


 それでは、と石田さんの合図で、ボクたちとショウトウルの戦いが始まった。

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