表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
底辺ダンジョン配信者、干からびたスライムを育成していたらバズって最強コンビへ成長する  作者: 椎名 富比路
最終章 ドラゴンとの生配信バトル

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/71

第58話 水族館デート

 ボクとヒヨリさんは、駅前で待ち合わせをした。


 車を使って、一緒に行ってもいい。が、それだとヒヨリさんにばかり負担がかかる。今から乗る電車は常時空いているから、リラックスできるだろう。


「お待たせしました」


 いつもと違うヒヨリさんの服装に、ドキリとなる。


 クリーム色のコートに、スカートスタイルだ。

 シャーマンだからか、アジアンな感じのブレスレットやネックレスをしている。


 こころなしか、手のひらサイズのピオンもツヤツヤだ。


「リップクリームを塗ってほしいと、せがまれました。どうせ、成分を吸収してしまうのに」


「ああ、ワラビもです!」


 二人でアハハと笑う。


 ボクの肩に乗っているワラビも、ピオンと一緒に笑っていた。


「じゃあ、行きましょうか。ヒヨリさん」


「はい。ツヨシさん」


 電車に三駅分乗って、水族館のある場所へ。


「先に、お食事しましょう」


「そうですね。もうお昼時になりますし」


 出発は、割と遅めにした。今から行く水族館は、夜からの催しが見どころだからだという。


 お昼は、たこ焼き屋さんにした。自分で焼くスタイルである。


「うまくできるかな?」


「できないから、いいんじゃないですか」


 お互いぎこちない動作で、たこ焼きを作った。焼けるまで、からあげとポテトで繋ぐ。


「めちゃめちゃヘタクソですね。ボク」


「かわいくていいじゃないですか」


 ボクが焼いたたこ焼きを、ヒヨリさんが率先して食べる。


 ヒヨリさんが焼いた方は、ボクがいただいた。


「おいしいですね」


「生地がいいんでしょうね。上手に焼けなくても、おいしいです」


 ワラビやピオンにも、食べさせる。


「身体がたこ焼きになりそうです。マスターツヨシ」


「ほかほかー」


 二体のスライムたちも、楽しそうだ。


 ずっと焼いていると、だんだんと手慣れてくる。


「なんだか、ここまで来ると、戦いのヒントが得られそうですね」


 ワラビが、ボクの手際を観察しながら言う。


「どうなんだろうねえ」


 たこ焼きの焼き方なんて、剣術に応用できるのかなぁ。


 そう意識してしまうと、ますます下手くそになっていく。


「ボク、ダメダメですね」


「とんでもありません。こういうのって、みんな上手じゃなくていいじゃないですか」


 うまくいかなくても、ヒヨリさんは楽しそうだ。


「わたしは、薬学をやっています。お客さんに出すお薬に、失敗は許されません。ですが、それまでには多数の試行錯誤があります。とんでもない大失態をして、研究所が何度吹っ飛んだか」


 ウフフと、ヒヨリさんが笑う。


 笑えるくらいだから、大事には至らなかったのだろうけど。


「でも、そんな思いをしてきたからこそ、安全なポーションを提供できるんです」


 ヒヨリさんが、そんな体験をしていたとは。 


「最初はみんな、下手っぴなんですよね。調薬も、冒険も」


「はい。ボクはワラビと出会うまで、ドジばっかり踏んでいました」


 周りに迷惑をかけてはいけないと、ソロプレイにこだわりすぎていた。


「わたしも冒険者としてやっていけるか、ずっと不安でした。ツヨシさんに導かれて、やっとここまで来られたんです」


「ヒヨリさんが強くなったのは、ヒヨリさんの努力のたまものです」


 ワラビがいなかったら、こんな出会いもなかっただろう。ヒヨリさんを助けようとしても、共倒れになっていたかもしれない。


「ありがとうございます、ツヨシさん。この調子で、デートもちょっとずつうまくなっていきましょうよ」


「はい。ヒヨリさん」


 ヒヨリさんのこういうところ、ホント好きだ。




 お腹もいっぱいになったことで、メインの水族館に。 


 ペンギンの飛び込みを、見ることができた。


「ここのメインといえば、ジンベエザメですよね」


「うん。大きいねぇ」


 巨大なサメが、水槽内で泳いでいる。今にも、見ている子どもをすっぽりと食べてしまえるのではないか? それくらいの、迫力がある。


「あんなに大きいのに、歯が小さいんですよね。主食も魚ではなくて、プランクトンですし」


「うん。人は見かけによらないね」


 そう考えると、ドラゴンってもっと獰猛な生物だとばかり思っていた。


「ごめんなさい、ヒヨリさん。守ってあげられなくて」


「わたしも、申し訳なく思っています。ヒヨリさん」


 ボクとワラビで、ヒヨリさんに謝罪する。


「いいえ。ツヨシさんのせいじゃありません」


 悪いのは魔族の方だと、ヒヨリさんは言ってくれた。


「ドラゴンのお宿、たのしかったー」


 まあ、ピオンが一番、堪能していたよね。


「ドラゴンさんたち、いい方なんですけど、戦わないといけないんですよね」


「そうだね。殺し合いではないから、いいんだけど」


 あくまでも、ボクたちの戦いはケンカだ。互いに、命を奪い合うわけじゃない。しかし、アクシデントはつきものだ。ルールのもとで戦っていても、命を落とす場合もある。


「心配しないで。ボクは負けないから」


「応援しています。ツヨシさん」


 夜になった。メインである、クラゲの展示会が開かれる。


 小さいクラゲが、人の身長以上に触腕を伸ばす。手のひらサイズのワラビより、小さいのに。



「ほおおおお」


 ボクは、思わず声を上げた。


「キレイ」


 密集して泳ぐクラゲに、ヒヨリさんが圧倒されている。


 幻想的な光景に、ボクも思わずため息が漏れた。


「ワラビ、楽しい?」


「実に、興味深いです。モンスター以外にも、こういった動物たちを観察するのは、勉強になります」


「別に戦闘の役に立てようなんて、思わなくていいからね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ