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第5話 迷惑系スケルトンキング討伐

 後日、待ち合わせをして、ダンジョンに向かう。


 ギルドには報告しているが、ボクはなんとかやってみると伝えた。


 ボクたちでダメなら、このダンジョンは閉鎖することになっている。


 ゾンビやスケルトンは、なった後が辛いという。ずっと生ある存在の魂を喰い続けないと、頭痛に悩まさせるとか。


 ダンジョンの最奥部に到着する。


 玉座に、ヒョウ柄のミニスカを穿いたガイコツが鎮座していた。あれが、ダンチューバーの成れの果てか。ボクたちも死んだら、ああなってしまうのか。


「気をつけろ」


「対策は、考えています!」


 ボクは棍棒と短剣を振り回す。

 スケルトンが、ボクの攻撃で砕け散った。


「数が多い!」


 倒しても倒しても、無限湧きしてくる。


「おっと、お前らの相手はオレたちだぜ! ツヨシには指一本触れさせねえ!」


「周りはこちらで片付けるわ! ツヨシくん、あなたはボスをお願い!」


 センディさんとコルタナさんが、ボクの周りに集まるスケルトンを蹴散らす。


「はい!」


 ボクは、ボスを相手にするだけだ。


 スケルトンキングには、スケルトンは、コアを破壊すれば倒せる。何度もスケルトンを相手にしていたから、覚えた。手に持った短剣は、コア破壊用の武器である。



 カシャ。



 スケルトンキングが、なにかを撮影する仕草をした。

 見ると、スケルトンキングがスマホを構えていたではないか。なんて速さだ。


「マスターッ!」


 ボクは、ワラビにアッパーを食らう。


「なにをするんだい、ワラビ?」


「どうもこうもありません!」


 ワラビが、姿見のような形になってボクを写す。

 ボクは自分の首に、短剣を突きつけていた。

 ワラビがボクの手を払って、短剣を弾き飛ばす。


「やっぱり、対策していないとダメだね!」


「今こそ、テイマーの腕の見せ所です」


「うん。いくよワラビ!」


 ワラビが、ボクの頭の上に乗った。ボクの頭部をすっぽりと埋め尽くす。


「ツヨシ!?」


「ちょっとツヨシくん!?」


 冒険者二人が、ボクの奇行を見て驚く。

 しかし、これでいいのだ。これこそ対策である。

 アクアラングで呼吸を確保して、ワラビを被ったままボスに突撃した。


「ワラビ、目の役割をお願い!」


「はい。マスターツヨシ」


 視界を覆われている中、ボクはスケルトンキングに接敵する。

 相手がこちらに向けて、スマホで撮影している音が聞こえた。

 しかし、ボクは精神を汚染されない。

 スライムなどのモンスターに、「人間相手の精神攻撃」は通用しないのだ。


 ワラビから、短剣を受け取った。


「わかったぞ。あなたの本体は、ここだ!」


 ボクは、スマホの画面に短剣を突き刺す。


 同時にワラビが、ボクから離れていった。


 ダラン、と、スケルトンキングが脱力する。スマホも、地面に落ちた。

 スケルトンキングは、サラサラした灰に変わっていく。


「ツヨシ、終わったのか?」


「はい。スケルトンキングの正体も、判明しましたよ」


 ボクは、スマホを蹴り上げる。

 画面の方が、表向きになった。

 二人が、画面を覗き込んだ。


「心霊写真?」


 画面には、白骨のようなものが写っている。ボクが突き刺した短剣が、そのガイコツの頭を貫いていた。


 このガイコツこそ、スケルトンキングである。


「そうです。心霊写真に取り憑かれて、彼女はこの階層のボスになっちゃったみたいですね」


 迷惑系冒険者は、目で霊を見てしまっただけではなく、スマホでガイコツを保存してしまった。そのせいで、スマホがスケルトンキングを集める母体になってしまったのだ。


「つまりツヨシくんは、スマホに写っているガイコツのコアを破壊したってわけね?」


「そうです」


「すごいわ。そこまでわかるなんて」


「スマホで写真を撮っただけで相手を操れるなんて、考えられません」


 となると、答えは一つ。スケルトンキングは、スマホが本体なのだ。


「早く報告、を、うわあああ!」


 ボクは、突然、身体が痛くなってきた。全身に痛みが走って、動けない。


「どうした?」


「触られると痛いです!」


 センディさんが、肩を揺すってきた。その動きだけで、もう痛みが駆け抜けていく。


「おお。すまん!」


「まさか、あなたもスケルトンに?」


 コルタナさんが、ボクの顔を覗き込む。


「そんな感じじゃないわね」


「元気いっぱいです」


 ボクも、コルタナさんと同じことを考えていた。けど、身体が腐っていく感じではない。


「ワタシが担いでいきます。みなさんは、ギルドの職員を呼んできてください」


「わかった! 気をつけてな!」


 ボクはワラビに支えられて、ギルドまで戻ることになった。


 それにしても、ワラビは随分と大きくなっている。「人をダメにするソファ」くらいあるね。





 数分後、ギルドの職員たちと合流した。


「これは、成長痛ですね」


 受付のお姉さんが、ボクを分析する。


「成長痛!? それ、成長期の症状よね?」


 コルタナさんが、受付のお姉さんと話す。


「姉の娘が夜中にギャン泣きする上にグズるから、原因を調べてもらったのよ。もう赤ん坊でもないのに。その原因が成長痛だったの」


 成長痛とは、幼児期から思春期までに発生する、下肢の痛みをいうそうだ。


「ツヨシさんの場合、急激なレベルアップで全身が成長に耐えきれなくなったのです」


 ロクなトレーニングをせずに、いきなり一足飛びで大幅レベルアップした。そのせいで、身体がびっくりしたのだろうとのこと。


「二、三日ほど、お休みください」


 うわあ。当分冒険に出られないのか。


「家を教えてくれ。食料などは、こっちで調達するから任せろ」


「私、結構料理は得意なのよ」


 センディさんとコルタナさんが、面倒を見てくれるという。


「ありがとうございます」


 さて、どうするか。


 自宅に帰って、思案する。


「コメント返しなどは、いかがでしょう?」


「おっ。それいいね」


 明日は緊急配信として、自宅で動画についたコメントに返答することに。

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