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底辺ダンジョン配信者、干からびたスライムを育成していたらバズって最強コンビへ成長する  作者: 椎名 富比路
第六章 黒い勇者との戦い

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第49話 最初で最後の一撃

 ボクは、剣の切っ先を魔王に向けながら立ち上がる。


「ふう、ふうう!」


「テイムスライムで、瞬時に攻撃を防いだか。つくづく見事。だが、無事では済むまい!」


 魔王が拳に炎をまとわせて、殴りかかった。


 大振りながら、ボクはどうにか敵の攻撃を受け流す。


 攻撃をそらす勢いを、段々と最適化していった。敵の攻撃が、ようやく見えるように。戦闘で、慣れてきたのだろう。


「見事じゃ。その威勢、胆力。なにより、その冷静さ。魔王を前にすれば、誰でも立ちすくむもの。もしくは、闇雲に一撃を見舞おうと空回りするぞよ。しかしてどうして。その根性だけは、認めねばなるまい」


 相手の長話を聞きながら、ボクは呼吸を整える。


「ワラビ、剣と一体化して。それでないと、勝てない」


「承知しました。マスターツヨシ」


 ワラビが、剣の柄と一体になった。


「よろしい、テイムスライムの魔力を直接流し込み、強度を増して攻撃力を高める」


 ミスリルの剣を構え、ボクは斬りかかる。


「スライムの戦闘力をそのまま剣に注ぎ込むのは、ミスリルならではの作戦よ。だが」


 魔王は腕を振っただけで、渾身の攻撃をあっさりと弾き飛ばしてしまった。


「ジャストガードか」


「あいにく、スライムの柔軟性は失われてしまう」


 魔王の手刀が、ボクの心臓に狙いを定める。


「それは、どうでしょうか?」


 ワラビが、魔王の攻撃を受け止めた。


 ボクは硬直してしまうが、ワラビは違う。ボクの手から剣を放し、ワラビがボクの代わりに攻撃をする。


「その戦法は、既に見た!」


 だが、魔王には通じない。剣ごと、ワラビが叩き落されてしまう。


「余が、なにも考えずに魔物を配置していたと思うてか? お主たちのデータを手に入れるため、戦力を見極めていたのだ」


「それだけ、脅威だったというわけですね」


 さらに、ワラビが挑発をする。


「言うよな、テイムされた身の分際で」


「あなたこそ、魔王としての力をまるで発揮できない分際で、勝ったおつもりですか?」


「なにを……!?」


 魔王の背中に、センディさんが一撃を見舞った。


「よし。やった。やったぜ」


 どうにか魔王に一太刀浴びせたセンディさんが、ツタの奥へ再度引っ込む。


「貴様ら、どういうつもりじゃ?」


「ワタシたちに注意を向けさせて、ピオンにツタを溶かさせたんです」


 ワラビが、ボクの手に戻ってきた。


 ずっと再生し続けるなら、ずっと食べてみるといい。


 だったら、ワラビかピオンが適任者だ。しかし、ワラビは戦闘でそれどころではない。けれど、ボクたちにはピオンがいる。


 ピオンにツタを食べ続けてもらい、一瞬だけ空間を作ってもらう。


 センディさんが、師匠の仇を討てるほどのタイミングを。


「一瞬だけ気配を悟られて、心臓への一撃は悟られたがな」


「なんと……しかし、愚かな」


 たしかに。ここまでやっておきながら、ボクはセンディさんを再びツタの外へ逃した。


「あのまま全員で余にかかってきたら、勝てたかもしれぬ。その機会を、みすみすフイにするとは」


「いいんだよ。その役割は、ツヨシに委ねた」


 センディさんが、言い放つ。昨日まで、「自分が魔王を倒す」と息巻いていたのに。


「ほほう」


「悔しいが、てめえを倒せるのは、オレじゃねえ。さっきてめえに攻撃してわかった。てめえは、オレの手には負えねえ。師匠がやられちまうわけだぜ」


 今の一瞬で、センディさんは自分と魔王との間にあるレベルの差を理解したらしい。


 ここで身を引けるから、センディさんは一流の冒険者なんだ。


「オレはこの場所で、ヒヨリたちを守るぜ。ツヨシ、安心してヤツを倒せ」


 センディさんが刀を抜き身にしたまま、周囲を警戒する。


「フン、この者を見捨てて、自分たちだけでも逃げられただろうに」


「そんな無責任なことは、しません!」


 ヒヨリさんが、魔王の発言に怒りをあらわにした。


「そりゃあ、一人でいたら怖いですよ。でも、ツヨシさんがいるから怖くない! ツヨシさんは、あなたを必ず倒すって信じていますから」


「ええ。そうね。ツヨシくんは強いもの。あなたになんて負けないわ」


 コルタナさんも、ここから一歩も逃げようとしない。


「人間ごときが、余に勝てるとでも?」


「ええ。あなたなど、ワタシとマスターツヨシだけで十分ですから」


「なにい!? 【燃える嵐(ケマル・トルメンタ)】!」


 またも魔王が、炎の衝撃波を繰り出した。


「うおおおお!」


 ボクは片手に剣を持ち、もう片方の手にワラビを振り回す。


 ジャストガードにより、ボクは敵の全方位攻撃を反射した。


「ぐお!?」


 魔王が、跳ね返ってきた魔法攻撃をまともに食らう。たいしたダメージは、与えられていない。しかし見るからに、精神的なショックを受けている。


「全体攻撃に、ジャストガードだと!? ありえん!」


「それが、ありえます。ワラビなら!」


 ワラビの姿が、ミスリルソードそっくりに変わっていた。


「なんと、その姿は」


「ワラビは、ミスリルを飲み込んでいるんですよ」


 ボクはワラビと、ミスリルを半分こしている。ボクたちは、一人と一匹で、ひとつだから。


「じゃあワラビ、お食べ」


 ミスリルソードを、ボクはワラビに食べさせた。


 ワラビの姿が、ピンク色のミスリルスライムへと変わる。ワラビが大好きな、桃の色だ。


「さあ魔王、決着を付けましょう」

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