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底辺ダンジョン配信者、干からびたスライムを育成していたらバズって最強コンビへ成長する  作者: 椎名 富比路
第六章 黒い勇者との戦い

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第46話 緊急事態

 ギルドマスターが、大ケガをした初級冒険者を、医療センターに運ぶ。


「石田くん、キミも手伝ってくれ!」


「はい! 治療班、急いで!」


 石田さんもギルマスとともに、ストレッチャーを押す手伝いをする。


「ツヨシ、手を貸してくれ」


 センディさんとともに、冒険者に肩を貸す。そのままボクとワラビは、センディさんと負傷者の護送を担当した。


 コルタナさんもメイヴィス姫も、治癒魔法をフル稼働させる。


 ヒヨリさんとピオンがいたおかげで、どうにか犠牲者が出ずに済んだ。【シャーマン】の治癒力は、さすがである。


 ある程度、状況が落ち着いた。


 ワラビは最終的に、冒険者の癒やし役として活躍していたけど。「医療用ベッドよりワラビで寝たい」と、グズりだす女性冒険者もいたくらいだ。


「みなさん、ありがとうございます」


 石田さんが、深々と頭を下げる。


「いえ。石田さんたちの先導のおかげです」


 的確な指示がなければ、危なかっただろう。


「よかったね、ありがとうピオン」


 ヒヨリさんが、ピオンを撫でた。


「おなかすいたー」


 一方、ピオンは自分の功績に興味がない。力を使っただけなためか、食料を要求していた。


「はいはい。たくさん食べていいからね」


 ネコ用のおやつを、ヒヨリさんはピオンに食べさせる。


「ありがとーヒヨリー」


 ムシャコラと、ピオンはおやつにがっつく。


 石田さんは改めて、ギルマスに問いかける。


「ギルドマスター、ダンジョンで、なにがあったんですか?」


「初級冒険者が、何か影のようなものに突然襲われたらしい」


 ギルマスが、石田さんからの問いかけに答えた。


 おそらくその影こそ、佐護だろうとのこと。


「被害者によると、影は『人払いだ』と言っていたという」


 初級はこの程度の怪我で逃げておけ、といいたいのか。


「やはりダンジョンの間を魔物が移動できるという話は、本当だったんですね?」


「そうだね。しかし反応は、我々の探知の外からなんだ」


 たしかに、強い魔力反応が現れている場所は、ダンジョンの領域から大きく外れている。


「行ってみようぜ。現地でないと、わからねえよ」


「そうね。行きましょう」


 ボクたちは、ダンジョンへ向かうことにした。


「みなさんだけで、ムチャです」


 石田さんが、引き留めようとする。


 しかし、コルタナさんの決意は固い。


「センディが、行くと言っているのです。長年パートナーを務めた私がいなければ」


「ですが、魔王と戦うことになったら!」


「どのみち、遭遇するのよ。私たちがなんとかします」


 その代わりにと、メイヴィス姫をギルド内に残すという。


「メイヴィス姫。いざとなったら、緊急配備をお願いします」


「わかったわ。あたしは一度国に帰って、戦局を整えておきます。絶対にムリをしないでよ!」


「心得ています。ただ姫殿下、我々にもしものことがあったら、あとはあなた方にお任せします」


「物騒なこと、言わないの。あなたの実力は、このあたしが一番知っているわ。あなたが簡単にくたばるわけ、ないもの」


 コルタナさんと姫が、抱き合った。


 わかっていても、やはり怖いのだ。


「ワラビちゃんも。きっと帰ってくるのよ」


 名残惜しそうに、メイヴィス姫はワラビを抱きしめる。


「ご安心ください。ワタシは不死身です。誰も死なせません」


「そういうことを、言ってるんじゃないの。ケガをしないでね」


「お心遣い、感謝します。メイヴィス殿下」


 そのまま、メイヴィス姫はギルマスを連れて異世界に戻っていった。


「では私が、臨時のギルマスとしてこの場の指揮を取ります」


 石田さんは、もう止めようとしない。だが「せめて、準備だけしていってくれ」という。


「こちらへ」と、武器庫へ案内された。


 今日は丸一日を、準備に費やす。


「装備品を、譲ってもらえたぜ」


 使えそうな装備やアイテムを、ギルドから無料で支給してもらえた。


 パークで失ったガントレットも、修理・補強してもらう。


 センディさんは愛用している刀ではなく、一回り大きな太刀を担いでいた。


「それは?」


「師匠の打った刀だ。師匠が、使っていない刀をオレにくれた」


 ギルドが急遽、輸送してくれたという。


 センディさんが打ったものより、刀身が荒々しい。魔物を切るのに適しているというか。


「この剣を、あいつに叩き込んでやる」


「お手伝いします」


「おう頼む。一発切り込んだら、気が済むからよ。後はツヨシ、お前に任せたい」


「はい」

 


 残った全員でヒヨリさんの車に乗り込んだ。初級ダンジョンへ。


「ヒヨリさん、あなたは残っていてください」


「そうも行きません。あの魔王を探知できるのは、おそらくピオンだけです」


 幸運にステータスを極振りしているピオンなら、佐護を発見できるかもしれないらしい。


「ちょっとピオン、どこへ行くの?」


 ヒヨリさんが、ピオンを追いかける。


「こっちー」


 ダンジョンに入った途端、ピオンがピョンピョンと勝手に進んでいく。


「ここー」


 ピオンが、一階最奥部の壁を押す。



 ズズズ……と鈍い音とともに、三つのカギ穴が。


「おい、これって」


「このカギを差し込めば」


 ボクは、四層のパークで手に入れたカギを、差し込んだ。


 大きな扉が開く。


 さらに広大なダンジョンが、眼の前に。


 ダンジョンに、裏ステージがあったなんて。

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