第42話 魔族三体と決戦
いよいよ、四層ダンジョンの最深部へ。
「マスターツヨシ、野外ステージの方角に、猛烈な魔力を感じます」
野外ステージまでの道のりでは、魔物たちがダンスをしていた。こちらに攻撃を仕掛ける様子はない。楽器で演奏をする魔物まで。
「あーここ、パレードのゴールなんだよな」
昼と夜にパレードがあり、その締めくくりが野外ステージでのショーだったそう。
昨日まで集めたドロップアイテムで、装備は充実している。しかし、魔族に通じるかどうか。
野外ステージの中央に、魔族三人が待っていた。配下は、誰もいない。三人だけで決着をつけに来たようだ。
「さすが、今をときめくテイマー冒険者だね。上位ランカーでも、こちらの攻略は避けたよ」
ヴォーパルバニーのクビポロリが、フンと鼻を鳴らす。
「ムフフ。俺様に怖気づいたんだよ」
ワータイガーのジャジャが、腰に手を当てて高笑いをする。
「なにを言っているのよ。あたしのダンジョンの仕掛けが解けなかったのが、大半じゃない」
ジャジャを、ハーピーのピー子がハリセンでドツく。
たしかに。あんなイジワルな解読法は、ないよ。ボクとワラビじゃなければ、攻略は難しかっただろう。ミミックに溶かされる心配もあったし。
「だが、これからは正々堂々の勝負だ。その方が、お前たちにとっては辛いだろう。ニャフフ」
ジャジャが、もう勝った気でいる。
「こちらまで上がってこい!」
ボクたちは、舞台に上がった。
「まずは、俺様からだ!」
一番手のジャジャが、ボクたちに飛びかかる。
「さあ、一番槍は任せて! コンラッド!」
ジャジャの爪攻撃を、コンラッドと融合したメイヴィス姫が受け止めた。
「おお。【勇者】の末裔を戦える光栄、しかと噛み締めようじゃないか! ニャフフ」
メイヴィス姫とワータイガーが、正面から攻撃を叩き込み合う。
「よそ見している場合はないよ!」
ヴォーパルバニーの蹴りが、ボクの首めがけて襲いかかってきた。
「ジャストガード!」
ボクは、ジャストガードで弾き返す。
「鳥は任せろ。お前はウサギをやれ!」
センディさんとコルタナさんが、ピー子の打倒へ。
「はい! ワラビ、こっちへ!」
「やるねえ。でもこれはどうかな?」
バク転をして、クビポロリがカポエラみたいなキックを浴びせてきた。
「ワラビ、やつの足に絡みついて!」
「承知」と、ワラビがわざとクビポロリに蹴られる。その勢いで、ワラビが液状化した。水アメみたいに、クビポロリの足を拘束する。さしずめ、スライムのトリモチが出来上がり。
「くそ! ならば!」
手を足代わりにして、クビポロリが跳躍した。ドロップキックで、ボクの首を刈り取ろうと迫ってくる。
「ジャストガード!」
ギリギリまで引き付けて、ボクはクビポロリをとっ捕まえた。
「くらえ。ジャイアントスイングだ!」
ボクはクビポロリの身体を、グルグルと回し続ける。
ウサギは耳がよすぎだ。速いスピードで回されたら、ひとたまりもないだろう。
「それ!」
舞台の向こうへ、クビポロリを投げ飛ばす。
「ぶはあ!」
クビポロリが、観客席に突っ込んだ。
他のみんなはどうなった?
ワラビを迎え入れて、姫かセンディさんのもとに。
姫は、善戦している。
だが、ピー子と戦っているグループは、苦戦しているようだ。
「ピーピーピーッ!」
ピー子が空を飛び、センディさんたちに氷魔法を放つ。ペンギンの羽根が、やたら大きくなっているではないか。まるでエイだ。
「お手伝いします。ピオン!」
センディさんとコルタナさんを、ピオンが包み込む。
「あらあ。見た目に反して動きが素早いのね。でも、こちらはどう?」
無数の氷の矢が、ピオンの身体を貫かんと襲いかかる。
「あなたの動きは、読めています」
わずかなタイミングのズレを、ヒヨリさんは見定めていた。ピンポイントで一つずつバリアを張り、ピオンを守る。
「バカな。そんなことができるの!?」
できるんだ。
ヒヨリさんはピオンの性能を見定め、『バリア系ヒーラー』のビルドに移行している。昨日のうちに、ビルド構成を変えたのだ。代償として、戦闘スキルは外してある。
格闘で攻撃を弾けるピュアヒーラーのコルタナさんと違って、ヒヨリさんには戦闘のセンスがない。動きも鈍かった。しかし思考力の高さから、相手の動きを読むことには長けている。
「ピオン、ハーブ爆弾!」
「ほーい」
ヒヨリさんの指示で、ピオンがボム系ポーションを吐き出す。ピオンがいるから、ヒヨリさんは戦闘スキルにポイントを振らなくていい。
そのピオンも、持っているのは投擲スキル程度である。他は、幸運に極振りだ。つまり……。
「なんでこうも的確に、目を!」
ピオンの投擲は、ほぼ百発百中なのである。
目に薬品が入って、ピー子が墜落してきた。
そこへ、コルタナさんとセンディさんが切り込む。
「ウインドカッターッ!」
「一文字斬り!」
刃状の風魔法と刀での一撃をもらって、ピー子は羽根をもがれた。
「いたた! ジャジャ! 遊んでないで、合体なさい!」
「そうだよ。ぼくたちは元々一つの魔族だろ!」
観客席でノビていたクビポロリも、起き上がる。
「ニャフフ。では、我々の本気をお見せしよう。合体!」




