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底辺ダンジョン配信者、干からびたスライムを育成していたらバズって最強コンビへ成長する  作者: 椎名 富比路
第五章 底辺配信者 対 魔族三人衆!

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第37話 【魔王】の影

 モンスターハウスを攻略し終えたボクたちは、早々に立ち去った。


「痛え……」


 センディさんとコルタナさんが、成長痛に陥ってしまったからだ。ヴァンパイアとのレベル差が、大きかったせいだろう。センディさんを送るため、バイクは運転できなくなった。仕方なく、センディさんの車にくくりつけて運ぶ。久しぶりに車を運転するけど、問題なし。


 みんなにも、成長痛は起きるんだな。


「たしかに、この痛みは慣れませんね……」


 ヒヨリさんまで、成長痛にかかってしまった。


 代わりにコルタナさんが、ヒヨリさんの車を運転する。


 慎重に運転をするため、コルタナさんに先行してもらう。


「ずっと生産していたからな。身体がなまっていたみたいだ」


 後部座席で、センディさんが寝転がる。


「今は寝ていてください。ギルドに着いたら、起こします」


「悪いなツヨシ」


「お願いワラビ。センディさんについていてあげて」


 ワラビを枕にして、センディさんは眠りにつく。


 

 冒険者ギルドに、到着した。


「さあさあ、ヒヨリちゃん」


 コルタナさんが車を降りて、ヒヨリさんをおぶる。


「大丈夫、ヒヨリ?」


 メイヴィス姫が、ヒヨリさんの頭を撫でた。姫はもう、コンラッドと分裂している。


「あのまま放置されたら、どうなるんですか?」


「魔物に襲われるわね」


「それだと、死んじゃいますね」


「ええ。だから、ソロ狩りは推奨されていないの」


 メイヴィス姫が、ピオンを抱きかかえた。

 ボクも、センディさんがいなかったら危なかったんだね。


「コルタナも、ムリはしないでね」


「はい。お気遣いなく、姫様」


 聞くとコルタナさんも、頭痛や肩こりに悩まされていたらしい。異世界人は、成長痛に対する耐性があるという。


「コルタナさん、すみません。わたしばかり」


「いえ。あなたは自分の身体を治すことだけ考えて」


「はい」


 ピオンが姫に抱えられながら、ヒヨリさんに寄り添った。


「お前さんに、追い越されてしまうとはな」


 センディさんが、なんとか自力で立ち上がる。刀を杖代わりにしながら。


「すいません。いつもボクばっかり優遇されてて」


「いいんだよ。お前さんはこれまで、そんなに高レベルじゃなかったんだ」


 センディさんは、ボクのためにミスリルソードを作ってくれていた。生産職とはいえミスリルを手掛けたことで、かなりのレベルが上っていたはずだ。


「ボクには、センディさんたちより強くなっていた記憶がないんですが?」


「ああ。あのヴァンパイアの野郎から、【エナジードレイン】を食らったんだ」


 なんでも、経験値を吸われたらしい。相手のレベルを下げる能力があるという。


「ひょっとして、攻撃を弾かれたときですか?」


「ああ。触れただけで、相手の経験値を吸うとはな。警戒していたんだが、油断した」


 センディさんが、歯を食いしばる。まだ、痛みが出ているのだろう。


「それでも、オレのレベルはお前さんに越されていたんだ」


「本当ですか?」


「ああ。まあ、ワラビのレベルも含めてだけどな」


「ですよねぇ」


 おそらくこのパーティで最強なのは、ワラビかも。 




 ギルドに戻って、戦況を報告する。


「ヴァンパイアの牙、たしかに受け取りました」


 魔族を倒した証として、ボクは石田さんに魔族の牙を渡す。


 それ以外の体組織は、ワラビに吸収させた。おかげで、ワラビもかなり強くなっている。


「あんな魔族がいるんですね」


「このタイプのヴァンパイアは、『シソ』と呼ばれています」


紫蘇(シソ)?」


始祖(シソ)ですね。ヴァンパイアの王様です」


 噛まれてヴァンパイアになるタイプとは別に、もとからヴァンパイアとなった種族だという。


「えっと、下級魔族って、どんな感じなんですか?」


「簡単に言うと、魔族から魔力を与えてもらった人間ですね」


 大昔は、貴族や魔女が、イケニエを魔族に捧げて、魔族にしてもらっていたという。


「するってえと、あの【ピグまり】とかいう迷惑系配信者も」


「はい。下級魔族の力を得たといえます」


「マジか。オレたちは、魔族を相手にしていたってわけか」


 どおりで、とんでもない強さだったわけだ。


 ワラビの協力があったとはいえ、よく勝てたと思う。


「そうですね。で、そのピグまりに力を与えていたのが、何者かわかりました」


 石田さんから、敵の黒幕を教えてもらった。


「やっぱり【魔王】よね?」


「そのとおりです。一連の事件には、魔王が関連していました」


 メイヴィス姫が告げると、石田さんもうなずく。


「魔王って、何者ですか?」


「文字通り、魔族の王よ。異世界から、地球に侵攻しようとしているの」


 おそらくその魔族の王とやらが、ピグまり及び、あの三体のボスを操っていると。

 どこかの貴族をヴァンパイアの始祖にしたのも、彼だろうとのことだ。


「ただ、ひとことで魔王といっても、あらゆる異世界にいますからね。どこの魔王なのかは、ピグまり自身もわかっていないようでした。引き続き調査中です」


「わかったわ。ありがとう」


 魔王か。


「どこから来た魔王なのでしょうか、姫?」


 コルタナさんが、メイヴィス姫に問いかける。


「おそらく、私たちの世界の魔王だと思うわ。わたしたちは、あいつを追ってこの地球まで来たんですもの」

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