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底辺ダンジョン配信者、干からびたスライムを育成していたらバズって最強コンビへ成長する  作者: 椎名 富比路
第五章 底辺配信者 対 魔族三人衆!

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第33話 仕掛けだらけのアクティビティ・ダンジョン

 ボクたちは再び、四層ダンジョンへと向かう。


 正規ルートへの入り口には、ウェアウルフが待ち構えていた。配下に、大量のオオカミを従えている。


 剣を抜いたボクの前に、コンラッドが。


『ツヨシ殿。ここは、我に任せよ。お主たちを、消耗させるわけにはいかぬ』


 コンラッドが、先陣を切った。


 ボクたちは、取り巻きのオオカミを片付ける。


「素早いから、気をつけるのよ。コンラッド」


『承知。では、いざ参る!』


 盾を前に突き出し、コンラッドが剣を構えた。


 ウェアウルフが、爪をジャキンと伸ばす。


『ぬうう。【シールドバッシュ】!』


 コンラッドは、敵の爪を盾で弾き飛ばした。


 ウェアウルフの爪が、ミスリルの盾で破壊される。


 カウンターで、コンラッドはモンスターの心臓に剣を突き刺す。


 コンラッドがやると、なんてことのない動作に見えた。ウェアウルフも弱く見える。しかし、実に高度な読み合いの末に勝利したのだ。


 並の冒険者なら、もっと苦戦していたに違いない。


「見事だ。入り口は、あっちだぜえ」


 ウェアウルフが、事切れる。


「獣人型のモンスターばかりね」 


「ほんとに、キャストのつもりなんだろうな」


 コルタナさんとセンディさんが、武器をしまう。


「見てください、あれ!」


 眼の前に、ボルダリングやパルクール用のアクティビティが。


「ニャハハハ! オイラの」


 頂上には、ジャジャとかいうワータイガーが立っていた。


 四層のボス自らが相手か。


「今から、オイラの部下を放す。このケットシーは、特殊な魔法を施しているために無敵だ。戦えないが、攻撃しても死なない。首輪に引っ掛けているカギを取ったら、お前たちの勝ちだ」


 ケット・シーの首輪には、番号の書かれたウォード錠がぶら下がっている。


「三つとも取れば、次の部屋が開く。オイラと戦いたかったら、部下を捕まえてみるんだな!」


 ジャジャが、三匹のケット・シーを開放した。そのまま、ジャジャは姿を消す。


「この! 待て!」


 センディさんが、俊足でケット・シーを追いかける。


「カギをゲット……できないわ!」


 コルタナさんも、翻弄されている。


「いくわよ。あいた!」


 パルクール用のポールに足を引っ掛けて、メイヴィス姫がずっこけた。


「大丈夫ですか、姫?」


 ヒヨリさんが、目を回した姫を抱き起こす。


「とんでもないわね、このダンジョン!」


「手分けをしましょう。ボクはあの建物の屋根にいるケット・シーを捕まえます。みなさんは、なんとか残りを捕まえてください」


 ボクは、時計塔にいるケット・シーを指さした。


「大丈夫か? あの時計塔は、一〇階建てのビル並だぞ?」


「だから、ボクとワラビでいいと思うんです」


 落下しても、ワラビがいるから痛くない。


「行きます!」


 ボクはワラビを引き連れ、時計塔の建物の壁を伝う。


「モーフィングだ!」


「承知しました。マスターツヨシ」


 ワラビが分裂して、ボクの手足に取り付く。壁はレンガ作りで、所々に凹凸がある。普通の攻略だと、この僅かな窪みや突起に指を引っ掛けるんだろうな。でも、ワラビがいるからその繊細な動きは必要ない。


「おりゃあああああ!」


 怒涛の勢いで壁を登ってくるボクに、ケット・シーも驚いている。さらに高い教会の方へと逃げていった。


「待て!」


 ボクはさらに、ケット・シーを追いかける。


「ケット・シーが、教会の中に入りました」


 ステンドグラス窓を突き破って、ケット・シーが教会の中へ逃げ込む。


「おっとととお!」


 教会の内部は、ハリボテでしかなかった。木の板の一本道しかない。建物の下は、礼拝堂である。


 そんな狭い通路を、ケット・シーは悠々と伝っていく。


「スケボーだ。モーフィング!」


 ワラビをスケボーに変形させて、敵を追いかける。


 追いつかれるなんて思っていなかったのか、ケット・シーがスピードを上げた。しかし、木の板が抜けてしまう。


 絶望的な顔になって、ケット・シーが落ちていく。


「危ない!」


 ボクはジャンプして、モンスターを抱えた。


「ワラビ、クッションだ! 頼む!」


 幸い、ワラビが巨大化して大きなクッションになってくれる。


「大丈夫、ワラビ、痛くない?」


「問題ありません。それよりマスターツヨシ、カギは?」


「このとおり」


 ボクは、ワラビにカギを見せる。


「ほかの人たちは、苦戦しているみたいだね」


 センディさんとコルタナさんは、まだおいかけっこしていた。鉄パイプだらけのジャングルジム相手に、苦戦をしている。


 ひとまず、二人のお手伝いをするかな。


「ワラビ、こちらで威嚇して、二人にカギを取ってもらおう」


「はい。その作戦で参ります」


 ボクは敵に対し先回りして、ジャングルジムを登る。


 ワラビは、障害物をすり抜ける能力を持つ。その要領で、ボクはワラビにコートへとモーフィングしてもらう。人間ではありえない動きで、ケット・シーを追い詰めていった。


 驚いたケット・シーが急ブレーキをかけて、そのスキに両サイドからセンディさんたちが敵を挟み込む。ようやく、二つ目のカギが手に。


「最後は、姫とヒヨリさんのパーティだ」


「ああ、大丈夫そうです」


 ケット・シーは、ヒヨリさんのスライム【ピオン】に懐いていた。自分からカギまで渡している。


「問題なかったわね」


 コルタナさんが呆れた。


 ほんとに、ピオンはモンスターに愛されているなあ。部屋の入り口まで道案内までされているし。


「それにしても、ピオンってこんなに愛されキャラだっけ?」


「きっと、ツヨシさんからいただいた、これのせいです」


 とある携帯食を、ヒヨリさんが見せてきた。


「ああ! その手があったか!」


 ヒヨリさんが持っていたのは、ネコ用のおやつである。


 昔、ワラビにあげようとして、拒否されたのだ。

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