表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
底辺ダンジョン配信者、干からびたスライムを育成していたらバズって最強コンビへ成長する  作者: 椎名 富比路
第五章 底辺配信者 対 魔族三人衆!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/71

第32話 状況報告

 ダンジョンを出て、ボクたちは一旦ギルドに戻る。


「すいません。息切れがこんなに早く来るなんて」


 ヒヨリさんが、落ち込む。


「いや。とんでもねえよ、お前たちは。めちゃがんばった方なんだぜ? 先に進もうとか言い出さない分、エラいぞ」


 ここまで疲労しているセンディさんは、初めて見た。


 思いの外、消耗が激しい。四層は、敵がひっきりなしに出てくる。行き着くヒマがないくらいだ。


 あそこまで準備したのに、まだ足りないというのか。


「しかも、まだ入り口よ? どんだけ、殺意の密度が濃いのよ?」


 コルタナさんも、さすがに厳しかったらしい。グチが溢れるほどに。


「本来四層以降は、もっと大人数の騎士団とかで挑むのよ。それこそ泊まり込みで」


『しばらく、あの階層に留まって鍛えた方がいい』


 経験者のメイヴィス姫とコンラッドが、アドバイスをくれる。


「そうしましょう。ワラビ、攻略はもうちょっと先になるよ」


「地道に行きましょう」


 ギルドに戻って、ボスの存在を報告をした。


「ただでさえ強い魔族が、三体も確認されるとは」


 ギルド受付の石田さんが、考え込む。


 魔族は、めったに冒険者の前には現れない。魔物を配置し、背後から指示を出す程度だという。それが、様子を見に来ただけとはいえ、自分から顔見世に現れた。


「あなた方を脅威だと、判断した証拠です」


「そこまでか? 敗走に近いぜ」


「だからです。引き際も心得ている。ほとんどの上位冒険者は、四層到達に浮足立って命を落としていますから」


 上位勢で生き残っているのは、自分を保てている人たちだけらしい。


「なんせ視聴者が、爆発的に上がりしますから。今が稼ぎどきだと突っ込んじゃうんですよ。さんざん注意はしていたんですが」


「いわゆる、撮れ高か」


「はい。それだけ四層攻略動画は、バズるので」


 軽めの階層でレベルを上げまくった冒険者ほど、四層で油断するという。


「三層にあったトラップなど、比較になりません。フロア自体がトラップという階層までありますし」


 北海道にある五層建てダンジョンを攻略したところ、四層全てがいわゆるモンスター部屋にすぎなかったそうだ。ボスは五層に存在していた。四層はモンスターのドロップもレアリティが低く、訓練場にすらならない場所だったとか。


「つまり、攻略しなくてもいい階層もあるってわけか?」


「そのとおりです」


「どうして、そんなフロアに?」


「五層のボスが、トラップを仕掛けたのです」


 さっき話にあった冒険者の全滅も、そのダンジョンで起きたことだという。


「冒険者の中には、マップ全部を埋めないと気がすまない人がいます。そんな人達を狙って、思わせぶりな道へと誘導して魔物に襲わせるのです」


 なんて、タチの悪い。



「魔族には、狡猾な奴らが多いんだな」


「はい。平安時代とかの鬼退治などで、人間側もダンジョン攻略に貢献していたといわれていますが」


 最近では、地球人の活躍は見られないという。


 その状況も、リスナー獲得狙いに拍車をかけた。我先に討伐しようと。


「ちゃんと準備していただきたいと、冒険者には再三お伝えしているのです。異世界の現地冒険者でさえ、苦戦するというのに。なんのために、ミスリルなんて用意していると思っているのか。それがあったって、魔族に油断は禁物だからです」


 ウンザリした様子で、石田さんがため息をつく。


 ミスリルをギルド側が最初から装備品に加工しないのも、準備期間中に自らを鍛えてほしいからだそう。


「地球側に、チートなどという便利機能はないんです。なぜ異世界の女神たちが人間にチートを与えているか、よく考えていただきたいんですよ」


 苛立ち気味に、石田さんは話した。


 その点ボクたちは、あまり暴走をしない。撮れ高とか、意識していないからだ。


「まあ、ワラビさんはほぼチートのような強さを誇っています。それでも気を抜けば、犠牲者は出てしまいます」


「心得ています」


「ありがとうございます。ワラビさん。あなたは人間より人間を理解なさっていますね」


「それほどでも」


 石田さんが「トラップダンジョンの話でしたね」と、内容を戻す。


「ダンジョン『プンスカ・スマイル・パーク』の売りは、『異世界の疑似体験』でした」


 異世界の存在を身近に感じてもらい、異世界も生きていること、だが危険も伴うことを知ってもらうことが目的だったとか。


 センディさんからも、同じように聞いたな。


「中でも人気だったのが、トラップダンジョンの存在でした」


 遊園地によくある迷路系アトラクションが、あのパークにも存在するらしい。


「いわゆる、脱出ゲームのような感じですか?」


「いえ。そこまで知力を必要とはしません」


 ゲームによくあるトラップを再現したものだとか。


「そこの案内役が、例の三体です」


 キグルミキャストの案内で、異世界を体験するのだ。


「なんで、そいつらが暴走を? 地球を裏切ったのか?」


 石田さんは、首をふる。


「魔族が、破棄されたキグルミを乗っ取ったのでしょう。魔族は地球にその魔力を維持するため、手頃な肉体を求めていますし」


「自分から、魔物になったってこと?」


「そうですね。魔物でいたほうが、地球では動きやすいので」


 自身の肉体をグレードダウンするほど、地球は魅力的だというのか?


「魔族って、やけに地球にこだわるんですね?」


「転生冒険者にやられ放題で、現地に居場所がないのでしょう。それで一刻も早く、地球へ攻め込みたいのかもしれません」


 その事態から地球を守るのが、ボクたちの役割なわけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ