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底辺ダンジョン配信者、干からびたスライムを育成していたらバズって最強コンビへ成長する  作者: 椎名 富比路
第五章 底辺配信者 対 魔族三人衆!

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第31話 アミューズメントパークのダンジョン

 アミューズメントパーク跡地に、足を踏み入れた。人がいなくなった娯楽施設は、どことなく寂しく、また恐怖を覚える。人の熱気を感じない風が、ボクらの間を吹き抜けた。


 さっきの風で、『プンスカ・スマイル・パーク』と書かれた看板が傾く。


 ここがダンジョンだと言われると、納得ができる。それだけ、異様な空間になっていた。


 あちこちの床から、雑草が伸び切っている。


「どんな場所だったんですか、ここって?」


「異世界を現実でも楽しめる、って触れ込みの遊園地だったんだ」



 いずれ異世界人と地球人が自然と触れ合える橋渡し的な場所として、モデルルーム的な立場だったという。


「昔は、人で賑わっていたんだけどな。別のアトラクションパークやショッピングモール、温泉に客を取られてな」


 そもそも異世界という価値観が、ボクたちのようなマンガや小説を読む人たちに限られている。ニーズがニッチ過ぎるのに、家族連れをターゲットにしてしまったのか。矛盾した経営が、災いしたのだろう。


 政府主導の企画って、どうしても大衆受けを狙ってダダ滑りするもんね。


「あたしも、ここの温泉の効能は好きよ。長寿にいいんですって」


 元々長寿なはずのエルフ二人が、うんうんとうなずいていた。この二人の価値観は、よくわからない。


「魔物ってのは、人間が寄り付かなくなった場所を好む。だから人を襲って、テリトリーを守っているんだ」


 センディさんによると、魔物は自分たちの棲家を維持するため、人間を追い払うのだという。


 ボクたちは、ダンジョンに踏み込んだ。


「なにか感じる、ワラビ?」


「はい。強い魔物の気配が、ビリビリと。来ました」


 猫型のゴブリンである【ケットシー】の大群が、押し寄せてきた。


「なんて数だ」


 ボクも、ケットシーを連れているテイマーを見たことがある。その人が連れていたケットシーは、オシャレしていてメチャメチャかわいかった。


 ここのケットシーは敵意剥き出しで、ファンシーさを微塵も感じない。服装もボロボロで、自分で手入れしている感じもなかった。


 テイムされた、ケットシーの装備がオシャレだったのに。あれはきっと、テイマーの趣味だったのだろう。


「強い!」


 ケットシーはゴブリンクラスの、弱い敵だったはず。なのに、剣の振りも早い。


「階層によって、強さが違うんだろうな。気をつけろ!」


「はい! うわ!」


 ケットシーがサーベルを突き出して、【ファイアーボール】を撃ち出す。魔法まで撒いてきたぞ。


「氷のエンチャントをちょうだい、ワラビ!」


 ワラビに指示を送り、剣に氷のエンチャントを付与してもらう。自分でも、剣に風の魔法をまとわせた。


「【合体魔法剣】。ブリザード・スラッシュ!」


 合体魔法剣とは、複数の魔法を融合させて放つ攻撃魔法だ。


 ワラビの【エンチャント】と、ボクの【魔法剣】が一緒に戦えないか試してみたら、できたのである。


「アビャビャーッ!」


 武器や装備品を凍らされて、ケットシーが数匹逃げていく。鳴き声も、あんまりかわいくないね。


 脇を見てみると、ヒヨリさんのピオンをケットシーがサーベルでツンツンしていた。ピオンが突撃しているのだが、威力が弱すぎてサーベルで弾かれている。


「よせー。スライムツンツンは炎上するんだぞー」


 ケットシーにいじめられて、ピオンがビリヤードの球みたいに弾んでいた。


「やめなさい。【天罰】!」


 威力過多の雷撃を、ヒヨリさんがケットシーに放つ。敵意のあるものすべてに、雷を叩き込む。だが、大技なので多用はできない。【シャーマン】になって、ヒヨリさんは攻撃スキルも覚えたようだ。


「たいした威力だが、連発したらもたないぞ」


「はい。センディさん」


 マジックポーションを飲んで、ヒヨリさんが小休止する。


 コルタナさんとメイヴィス姫、召喚獣のコンラッドで、残りのケットシーを蹴散らす。


「ケットシーで、この強さなんですか?」


「ああ。しかも大物がいるぞ」


 センディさんが、時計塔を指差す。


 そこに立っていたのは、ワータイガーだ。


「おいらはPS・ジャジャ。この『プンスカ・スマイル・パーク』の管理者だ。お前ら、まあまあ強いから、様子だけ見に来たぞ」


 両隣に立っているのは、ワンピースを着たペンギン型ハーピーと、オーバーオール姿の人型ヴォーパルバニーである。


「同じく。あたしはPS・ピー子。このパークに棲むボスの一人よ。ここまで来られたのは、ほめてあげるわ」


「僕はPS・クビポロリ。キミたちにこのアトラクションを、攻略できるかな?」


 彼らは名乗るだけ名乗って、その場から消えた。


「攻撃してこなかった?」


「幻影だな。時計塔に姿を投影して、威嚇だけしに来たんだろ」


 しかし、あんなボスが敵だなんて。


「まるでキャラクターショーだな。イメージキャラクターが、お出迎えをしてくれたみたいだ」


 いかつい見た目だけど、それぞれが教育テレビみたいな個性を放つ。


「言葉を話すボスなんて、初めてじゃないですか?」


 これまでのボスは、人語を理解すらしていない感じだったのに。


「ああ。九州にいる四層攻略組に話を聞いたら、四層辺りからボスが話し出すそうだ」


「しかも一体一体が、とんでもなく強いわ」


 熟練冒険者であるコルタナさんでさえ、緊張をあらわにしていた。 


「もしかして」


「うむ。魔族なのかも知れん」

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