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底辺ダンジョン配信者、干からびたスライムを育成していたらバズって最強コンビへ成長する  作者: 椎名 富比路
第四章 配信上位勢の仲間入り!?

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第28話 ミスリルソード

 今日は、メイヴィス姫とコルタナさんに稽古をつけてもらう。


 ボクが強くなれば、それだけワラビも強くなれる。ボクが足を引っ張っていては、ダメだよね。そう考えて、トレーニングすることにした。


「なかなか筋が良くなっているわ、ツヨシくん。あとは、油断しないこと」


「はい。ありがとうございます」


 修行を終えて、ボクはコルタナさんに礼をした。


 いくらミスリル製の武器といっても、使いこなすにはボク自身が強くなる必要がある。ヘタくそが取り扱えば、立派な武器に腕を自分で切り落としかねない。センディさんは、そう教えてくれた。現役の剣士に言われたら、そのとおりだよね。


「ツヨシさん、みなさん。お昼ごはんができました」


 ヒヨリさんが、食卓からボクたちを呼ぶ。


「ありがとうございます」


 訓練を中断して、ボクは手を洗う。

 今日のお昼は、畑で採れた野菜を使った薬効おでんである。

 とても薬草を使ったとは思えないくらい、おいしい。


「しいたけのダシが、すごく出ていますね」


 ボクはしいたけというと、すき焼きの隅っこでくたくたになっているイメージしかなかった。こんなに引き立つのか。


「スライムたちも、ありがとうね」


 畑のお世話は、ピオンの分体がやってくれている。ピオンが自分を分裂させて、畑の仕事をやっているのだ。これでヒヨリさんも、ダンジョンへ潜っていける。


「ツヨシ。いよいよ、ミスリルの剣ができあがった」


 センディさんが、疲れ切った顔でそう告げた。


「ようやくなんですね」


 これまでの訓練で、ボクはどれだけ強くなれたのだろう? ミスリルソードを持つのにふさわしい腕前なのか、今ここで試される。


 食後、みんなでセンディさんの工房へ向かった。


「これが、ミスリルソードだ」


 鞘が、幅広い。


「刀や、ツーハンドソードにもできたんだけどな。ツヨシの技量を考えて、分厚いブロードソードにしてみた。振りやすくて防御もしやすいように、短めにしてある」


 ボクは、剣を抜いた。 


 淡いピンク色の刀身が、鞘から姿を表す。


「普段使いのショートソードに近くて、扱いやすそうです」


 握り込みも振りも、今までの剣と変わらない。だが、振っただけでその強さは理解できた。これなら、なんでも切り捨ててしまえそうだ。


「ヤバいだろ、この万能感ってやつは? 銃を持ったやつがなっちまう、独特のものだ」


「はい」


 神様になった気分と、形容すればいいだろうか。そんな高揚感に、ボクは襲われた。これは、道を踏み外してしまいそうである。


「ミスリル銀にこもった微量の魔力が、お前の精神を侵食しているんだ」


 まさかセンディさんも、そこまでは想定していなかったらしい。気がついたら、ミスリルを受け取ってからずっとダンジョンに潜っていなかった。コルタナさんに指摘されるまで、ずっとトンカチを振っていたらしい。ミスリルの魅力は、それだけ強いのである。


「そうなんですね」


「スキルポイント、余ってるだろ? 一でもいいから振っておけ。剣に魂を奪われてしまうぞ」


「わかりました……ふうう」


 ボクは、精神耐性のスキルを取った。それだけで、心が落ち着く。


「柄に魔法石を大量に取り付けた。普通は必要ないんだけどな。ワラビと連携するなら、なんでもできる方がいいかなって」


 各種魔法が扱える魔法石が、あちこちに散りばめられていた。柄の先端にある魔力石は、足りないボクの魔力を補助してくれるという。


 ワラビをここに固定しても、いいそうだ。


「すごいね。ワラビを武器にして戦えるよ」


「マスターツヨシと一体化して戦えるなんて、夢のようです」


 さっそく、縛った麦わらで試し切りをする。


「ダンジョンのモンスターで試さないあたり、ツヨシらしいな」


「ほんとね。乱獲に走らない性格は素敵よ」


 センディさんとコルタナさんが、ボクを称賛してくれた。


 そこまで、考えたわけではない。単に、無害な相手で試し切りがしたいだけである。


 家畜を育てる用ではない。訓練用に、取っておいたのだ。


 紙を切るように、スパスパと真っ二つになる。


 ボクは、なんの力も入れていない。


 繊維が複雑なはずの麦わらが、面白いくらい切れた。麦わらでは、もはや練習台にすらならない。


「石でやってみるか」


 岩場までボクらを連れていき、センディさんは岩石を切ってみせろという。


「剣が折れちゃわないですか?」


「構わない。オレの鍛冶が、それだけの腕前だったってだけさ」


 もし剣が折れたら、別の鍛冶屋に叩いてもらえとのこと。ムチャクチャな。


「てい!」


 一か八か、岩山を切り裂いてみた。


 やはりなにも力を込めなくても、岩はスパっと切れる。


「すごいです、ツヨシさん!」


「ほんとね。コンラッドでも、ここまで丁寧に岩を切れないわよ!」


 ヒヨリさんとメイヴィス姫が、手を叩く。


「ありがとうございます、センディさん。すごい剣ですね」


「おう。オレが作ったんだからな」


「それで、今後はどんなスキルを上げていけばいいのでしょう?」


「そうだな。武器で防御もこなす剣士っつったら、やっぱパリィだろ」


 パリィ、つまり【ジャストガード】を取れという。


「普通の剣でジャストガードなんざやったら、武器がぶっ壊れてしまう。だから、受け流しが主流になるんだ」


 反面、ミスリルならそのままカウンターに持ち込めるくらい耐久性が高いらしい。


 岩場を舞台に、スパーリングを行う。


「いくぞ」


 センディさんが、ボクに斬り掛かった。


「くっ【ジャストガード】!」


「タイミングが早い! 攻撃の軌道を変えられてしまうぜ」


 その後、何度もジャストガードの練習に明け暮れた。


 たしかに武器はいい。しかし、ボク自身の強さも要求される。


 ジャストガード、できるに越したことはない。

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