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底辺ダンジョン配信者、干からびたスライムを育成していたらバズって最強コンビへ成長する  作者: 椎名 富比路
第四章 配信上位勢の仲間入り!?

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第25話 ひよこ印のポーション

「あ、ボクも思い出した! あなたは、ポーションの?」


「思い出して、くれたんですね?」


 前に、ワラビを治そうとポーションを買い込んだとき、この女性と出会ったんだ。


 ワラビの話を聞いて、ボクも思い出す。 


「あなたのポーションのマーク、見たことがある! ワラビに飲ませた、ひよこ印のポーション!」


「こちらですね?」


 ヒヨリさんの作るポーションの瓶を、ワラビが見せてくれた。


「まだ、瓶を持っていたんだね?」


「これは、ワタシの宝物です。マスターツヨシとの絆です。たった今、ヒヨリさんとも縁ができました」


 ワラビが瓶を、大事に取っておくなんて。大抵のアイテムは、溶かして自分の一部にするのに。


 デフォルメされたひよこのイラストが、瓶に貼られているのだ。


「わたしの実家は、とある薬局でして。のどアメが有名なんですけど」


「知ってる」


 すごいな。こんな縁なんてあるんだ。


「でも、どうして冒険者なんかに?」


 薬局のお嬢様だよね?


「お金に困っているわけじゃ、ないよね?」


「はい。成人したら冒険者になるのが、実家のならわしでして」


 しかし、ハーバリストとしてしか才能が開花しなかったらしい。


「父や母など先祖代々は、戦闘職もこなせたそうなんです」


 けど、ヒヨリさんは一切そういった訓練を受けてなかった。そもそもご両親が、ヒヨリさんに家を継がせる気がなかったらしい。


「普段は、どうやって戦っていたの?」


「わたしは、ろくに戦っていません。冒険者から素材を買い取って、薬に変えるんです。たいていの生産職は、そうですね」


 しかし、生産の依頼はあまり人気がない。


 弱い素材は、自分で取りに行ける。そんな素材でできたポーションは、多少割高になっても店で買ったほうが早い。畑さえ持っていれば、自作もできてしまう。


 だが強い素材になると、危険な旅になる。たとえ素材を見つけたとしても、優・良・可の見分けがつかない。


 素材探しは冒険者の醍醐味である。とはいえいい素材に出会うには、生産職自らにも戦える力が必要になってしまう。


 やがて、生産職をサブにした冒険者が増えるのだ。自分で取った素材を、自分で加工するような。多少質が悪くなっても、自分で作ったほうがいいと。


 結果、生産専門の冒険者は淘汰されていった。


 ヒヨリさんの事業は、ついに行き詰まる。そこでモンスターに戦ってもらおうと、サブ職をテイマーにした。スライムなら制御できると、スライムをピオンと名付けてテイムしたのだが……。


「最強のスライム使いであるツヨシさんへの憧れしかなくて」


 一番弱いスライムを仲間にしたものの、戦闘要員としては不十分だったという。


「かといって、わたしはこれ以上強い魔物なんて仲間にできそうになくて。契約破棄をしたら、この子にも悪いですし」


 そうだよね。よくわかる。


「スライムを育てるには、根気がいるんだ。キミの場合、ピオンにケガをさせたくないんじゃないかな?」


 ボクが聞くと、ヒヨリさんは力なくうなずく。


 優しい子だ。この子も、自分のテイムモンスターを傷つけたくないんだな。おそらくご両親も、彼女の性格を見越して、戦う技術を教えなかったのかも。ボクがヒヨリさんのお父さんだったら、そうするだろう。


「ごめんなさい……こんなポンコツがマスターで。なにも考えてませんでしたよね」


 ヒヨリさんは、ピオンの頭を撫でる。


 ワラビがプルンプルンと動き、ピオンに寄り添った。なにか、話を聞き出そうとしているみたい。


 ピオンはぴょんぴょんと跳ねながら、ワラビになにかを訴えかけている。


「彼は、ヒヨリさんに感謝しています。また、お役に立てなくて申し訳なく思っていまして」


「ピオン!」


 ヒヨリさんは、ピオンのを抱きしめた。


「ごめんなさい。悪いのはわたしだよお……」


「彼は、離れたくないと言っています。ですが、お役に立てないならお別れも視野に入れていたと」


 力強く、ヒヨリさんは首を横に振る。


「ひとりぼっちになんてしない! ピオンは大事な、家族だよぉ」


 潰れちゃうくらいに、ヒヨリさんはピオンを強く抱きかかえる。


「マスターツヨシ。差し支えなければ、多少の装備品の余りを彼に差し上げたいのですが?」


「うん」


 ボクはピオンに、石斧や棍棒をタダで食べさせた。売っても問題ない安物なら、罪悪感はなかろう。


「いいんですか?」


「キミはワラビの恩人だ。そのワラビが、やりたいって言った。ボクは、彼女の意見を尊重するよ」


 今度はボクたちが、恩を返す番である。


 それにしても、アイテムボックスの中が農耕用品ばかりだな。


「ゴブリンって、農具も武器にするんだね?」


「その辺の農家からくすねてきたものを、装備にするようです。冒険者から奪った装備をつかうことも、ありますね」


 他にも、薬草やらキノコやらも食べさせる。とにかくありったけ、強くなりそうなものはすべて分け与えた。


「いっぱい食べて、ちょっとのケガなんかものともしない、強いスライムになろうな……ん?」


 ピオンの頭上に、電球のオブジェクトが光る。これは、ワラビのときにも起きた、進化の兆しじゃないか?


『テイムモンスター【ピオン】の生産レベルが、一定のレベルに達しました。【スライム・ファーマー】の称号が付きます』


 スライムの農民だって?

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