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底辺ダンジョン配信者、干からびたスライムを育成していたらバズって最強コンビへ成長する  作者: 椎名 富比路
第四章 配信上位勢の仲間入り!?

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第24話 もう一人のスライムテイマー ヒヨリ

 センディさんがミスリルの剣を作り終えるまで、ボクはダンジョン巡りをすることにした。


 ほとんど、ソロプレイである。ワラビの戦闘も、見ておきたい。ボクとワラビでどこまでやれるか、試したかった。センディさんが必要としていそうな、アイテムの収集も忘れない。


「えっと、魔力増幅装置になる魔力石は、これか」


 遺跡ダンジョンのボスである大蛇から、アイテムをゲットした。


 二層にボクたちの敵は、いなくなっちゃったみたい。なので、三層をソロ攻略してみようと思ったんだけど。


「ボクのレベルは今、三五ちょっとか。第三層で、苦戦するかもね」


 大蛇相手では、辛勝だった。ギリギリの戦いである。相手もワラビではなく、ボクの方ばかり攻撃してきた。相手も、誰が強いのかわかっているのだ。


 大蛇さえもとともしないゴーレム使いのピグまりに、ボクは勝ってしまった。だからいけると、思っていたんだけど。


「適当にアイテムを掘った後は、切り上げましょう」


「うん」


 ボクたちは、三層から二層、一層へと戻る。


「ん?」


 一層まで戻ってくると、水色の小さい物体がボクの足元についてきた。


「これは、スライムだね」


「そうですね」


「どうしよう?」


 ボクはワラビをテイムしている。ので、もう契約できないんだけど。


「待ってください。このスライム、すでにテイムされていますね」


 ワラビが、水色スライムの状態を確認をした。


 スライムの頭上に、『テイマー・ヒヨリ』と名前が書かれている。


「たしかにテイム済みだ。なんの用事なんだろう?」


 ボクたちが思案していると……。


「たすけてぇ」


 遠くの方で、声がした。


「行ってみよう!」


 水色スライムに案内されて、ボクとワラビは森ダンジョン一層の奥へと進む。


 そこでは、少女が高い木の枝に捕まってジタバタしていた。降りられなくなったのか。


 枝の下は、硬い地面になっている。もし落ちてしまったら、大変だ。


「待ってて。ワラビ、お願いできる?」


「はい」


「そこの人! ワラビがクッションになるから、手を放していいよ!」


 ボクは、枝にいる少女に声をかけた。


「はいいいい。えいっ」


 少女は、木の枝から手を放す。


「ひゃあああああ! うわっぷ」


 ワラビに顔から突っ込んだけど、どうにか無事なようだ。


「ケガはない?」


「はい。ありがとうございますぅ」


「ボクは、ツヨシ」


「存じ上げております。そちらは、ワラビさんですよね?」


 うわあ。ワラビ、すっかり有名人だね。


「ワタシは、ヒヨリっていいます」


「ヒヨリさん、マスターツヨシ同様、よろしくお願いします」


「ご丁寧に。ワタシも、スライムとお話したいな」


 ワラビを見て、ヒヨリさんはうらやましそうに話す。


「キミも、スライムテイマーなんだね?」


「先日見つけて、名付けてテイムしました。このコは、ピオンといいます」


 ぶどうのピオーネがスキだから、そう名付けたらしい。


「テイム前に、好物がわかったの?」


「ガム型のディスポイズンポーションがあったので、それを食べさせたら好物だとわかりました。おひとつどうぞ」


 ボクとワラビも、ガムをいただく。おいしい。みずみずしくて、唾液が絶え間なく出てくる。


「この唾液がガムの薬効と混ざり合って、消毒になるんです」


 ボクは、毒のダメージを受けていない。しかしこのガムを噛んでいると、虫歯とかが治りそうな気がした。


「知らなかった。そんなアイテムなんて売っていたっけ?」


「ワタシが開発したんです。ワタシ、メインジョブが【ハーバリスト】なので」


 ハーバリストとは、薬草からポーションを作り出すジョブである。回復魔法もこなす、後衛の要だ。モンクなどの聖職者と違って、アンデッド特効などはできない。が、回復魔法においてはスペシャリストである。 


 となると、サブジョブがテイマーなのか。聞いた感じだと、ハーバリストとして生計を立てているみたいだし。


「じゃあ、お一人で冒険なんて大変でしょう?」


「はい。一人だと、一層を回るのも一苦労で」


 パーティを組むにも、戦闘が苦手なハーバリストを雇う人は少ない。そこでヒヨリさんは、モンスターとパーティを組めるテイマーを選んだ。


「それでもワタシ、ドジで。今日だって、みなさんがいなかったら大ケガをしていました。本当に感謝しています。ガム以外にも、お礼をしますので」


「いえいえ。困ったときは、お互い様だよ」


 気になることを、ボクは聞いてみる。


「キミは、ギルドが提供した家屋に住んでいるんだよね?」


「そうなるんですかね?」


 ヒヨリさんは、テイマーになったばかりらしい。なので、今はまだ自宅のアパート住まいだという。


「テイマーは等しく、ギルドの監視下に置かれるって聞いたけど」


「おそらく、ワタシもそうなるんでしょうね」


「抵抗感はない?」


「ありますが、知り合いのテイマーは、そこまで気にしていないそうですよ」


 衣食住は、充実しているらしいが。女性なら、なおさら監視されて暮らすのはしんどいだろうな。


「マスターツヨシ。わたしはヒヨリさんとパーティを組むことを提案いたします。ヒヨリさんさえよければですが」


 ワラビが、提案をしてくる。


「いいの? でもこれ、ナンパになっちゃうかもしれないよ?」


 出会い目的と思われたら、嫌われちゃうよ。


「もしくはマスターがヒヨリさんから採取依頼を受けて、素材を提供するとか」


「それは、ありがたいです! でもいいんですか、ワラビさん?」


「はい。その節は、お世話になりましたので」


 妙なことを、ワラビはいい出した。


「え? ワタシ、ワラビさんとは初対面ですが?」


「いいえ。なにせわたしは、あなたが作ったポーションに助けていただいたので。あの、はちみつとレモン水のポーションに」

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