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底辺ダンジョン配信者、干からびたスライムを育成していたらバズって最強コンビへ成長する  作者: 椎名 富比路
第三章 姫とコラボで、またバズる

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第21話 異世界側の事情

 帰宅後、ピグまりのチャンネルがどうなったのかチェックをする。


「あー、消えちゃってますね」


 ピグまりのチャンネルが、消滅していた。


「あれだけのことをしたのよ。仕方ないわ」


 メイヴィス姫は、冷静に答える。今はヨロイが解けて、姫の姿を取っていた。


「姫様って、エルフでありつつ召喚獣でもあったんだなあ?」


「今まで見てきた姫の姿は、映像用の分身体よ。バーチャルアバターみたいなものなの」


「理由はあるのか?」


「敵を油断させるのもあるけど、戦士の姿だと、子どもが怯えてしまうからって」


 親しみやすさを求めて、お姫様らしい姿を取るという。


「ドレスアーマー姿も勇ましくて素敵です、って言ってみたんだけど、メイヴィス姫は納得しなかったわ。『かわいくないわ』、ですって」


 もっとも姫と身近にいたコルタナさんが、ため息をついた。


「こちらとしては、防御面を重視したお姿でいてほしいのだけど」


「正体がバレてしまいましたが、いいんですか?」


 ボクの目を介して、メイヴィス姫の本来の姿が白日のもとにさらされている。今まで隠してきたものが、あらわになったのだ。


「いいのよ。メイヴィス・サマーヘイズが動いていると、敵に知らしめることができたわ」


「姫に危険が及んでしまうのでは?」


「本気になった姫が、魔族を相手にするのよ。魔族だって、警戒するわ。ツヨシくんも、その強さを見たでしょ?」


 ピグまりは、センディさんやコルタナさんより強かった。そんな相手を、メイヴィス姫はデコピンの一撃で倒している。そうそうやられたりは、しないだろうけど。 


「待ってください。敵ってなんですか?」


 モンスターの他に、危ない存在がいるとか?


「ピグまりを裏で操っていたやつよ。きっと魔族だわ」


 コルタナさんが、確信を持って答える。


「魔族って、なんですか?」


「ダンジョンを介して、地球に攻め込んできた奴らよ」


 一言でダンジョンと言っても、エルフや他の種族が交渉のために作ったものではない。魔族が地球を侵略するために、拠点にしている場合もある。というか、ほとんどのダンジョンがそうなんだって。


「でも、魔族は地球の環境に入れない。できることといえば、弱い魔物を放って環境を少しずつ書き換えることくらいなの」


 魔素が少ない地球に、魔族は住めないのだ。


「それを退治するのが、オレら冒険者ってわけだ」


 だが魔族の存在は、公には伏せられている。ヘタに手を出して、冒険者たちが魔族を刺激しないように。


「あたしたちエルフだって、似たようなものなの」


 環境に適合するには、弱い個体になって魔素の放出を防ぐ必要があるらしい。


「じゃあ姫やコルタナさんは、本来ならもっと強いと?」


「ツヨシくんの言うとおりよ。ワタシや姫は、一度力を封じているわ」


 自らを鍛え直し、地球に適応できるように身体を作り替えたらしい。


「では、魔族も同じことをしていたら」


「彼らには、それはできないの。強すぎて」


 プライドが高いと言えばいいかしら、とも、コルタナさんは付け加えた。


「異世界の方も、強い戦力をよこして魔族を根絶やしに……って、わけにもいかねえんだと」


「高い魔力を持つものが地球に降りると、それだけで地球側がダメージを受けるのよ」


 ヘタに武力を大量に投入して、地球に被害が及んではいけない。


「あっちの世界で高位な魔力の所持者ほど、地球の発達した文明に興味を持っているわ」


「異世界でチートスキルをもらって、どうのこうの、って言う作品をよく見るが、異世界側からすると、それでもありあまる恩恵を受けられるんだよ」


「また、彼らを悪用する者たちもいるわ」


 チートをもらって転生や転移を行う地球人って、本当にいるのだと聞かされた。


「ピグまりはどうして、魔族なんかと手を組んだのでしょう?」


「詳しいことは、あとでわかるわ。それよりツヨシは寝なさい。成長痛が、ひどいんでしょ?」


「はい。ちょっと、横になります」


 ボクはワラビに枕になってもらって、ベッドに身体を沈める。 

 

 

 ピグまりが、ボクとワラビに話がしたいそうだ。


 現在、彼女は事情聴取に応じているという。案外、素直に答えているらしい。


 車椅子に乗せてもらって、ボクはピグまりと応対をする。


 ワラビが、車椅子を押してくれた。クッション代わりになってくれるから、全然揺れない。しかし、成長痛までは食べられないという。「異物が混入しているわけじゃないから」だとか。


「ケガをしているのか?」


 ピグまりが、聞いてきた。目の下に、クマができている。化粧もすっかり落ちて、平べったい顔からは疲労の色が見えた。しかし、そばにある丼の中身は空になっている。


「成長痛です」


 といっても、全身筋肉痛くらいだ。大事を取って、車椅子を使わせてもらっている。


「ああ、わかる。ウチも一気に四層に行く力を手に入れたとき、三日寝込んだ」


 やはり、強いダンジョンに潜ろうとすると、リスクがあるみたい。


「それで聞きたいことってなんですか?」


「そうだよ、てめえ!」


 ピグまりが、ボクの襟を掴んだ。


 ワラビに危害が及ばないように、ボクはワラビをかばう。


「どうしてスライムごときが、ワイバーンを退治できるんだよ!?」


「それは、あなたのせいです」

 

 ボクの代わりに、ワラビが答えた。

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