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底辺ダンジョン配信者、干からびたスライムを育成していたらバズって最強コンビへ成長する  作者: 椎名 富比路
第三章 姫とコラボで、またバズる

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第14話 スライム進化

 なんと、ワラビは進化できるらしい。


「進化のパターンが複数あるので、マスターツヨシに決めていただきたいです」


「わかった。ボクでよければ、相談にのるよ」


 早速、修練場に。アドバイスを聞ける相手がほしいからね。


「こんにちは」


「おう、ツヨシじゃないか。それに、姫様まで」


 修練場のコーチが、メイヴィス姫たちにもあいさつをする。


「ここは空いているかしら?」


 メイヴィス姫が聞くと、コーチは手頃なスペースに誘導してくれた。


「ああ。みんなダンジョンに行ったから、今はギルドに入りたての奴らしか使っていない。バンバン使ってくれ」


「お願いするわ。それで、スライムの進化についてなんだけど」


 コーチとともに、スライムの進化について相談をする。


「進化システムなんだが、別に一度決めたら二度と他の進化ができないわけじゃない」


 成長のラインが遠ざかるだけだという。


 なので、ほとんどの人は特化型にせず、まんべんなく成長させていくらしい。なんでもやらせてみて、ある程度テイマーの戦闘スタイルが確立していけば、特化型に変えていくそうだ。


「特にスライムは、今まで進化するまで成長させたやつがいない。ツヨシがモデルケースになる。なので、慎重にな」


「はい」


 ボクが、スライム進化のさきがけになるのか。


「では、進化ルートをご説明します。まずは、【ライド・スライム】。身体が大きくなります。マスターツヨシを乗せて、戦うことも可能ですね」


 サイズは、さらに大きくなるという。ベッドくらいは大きくなるのか。特性として、テイマーを乗せるか、包んで戦うスタイルになるとか。


「パスかな……」


 スノーボード型のワラビで何度も戦っているから、特に必要性を感じない。寝るときは楽そうだけど。


 あと、ワラビの特性は「小ささ」だと思っている。このメリットを抜きにして、成長はさせたくないかな。


「続きまして、【マジック・スライム】。魔法に特化します。今までの機動力は、魔法詠唱速度に付与されますね。ですが、今の敏捷性は失われるでしょう」


 つまり、ワラビを砲台にして魔法を撃ち出すわけか。


「これは、キープかなぁ?」


 今のところ、戦闘スタイルとあまり変わっていない。だが敏捷性が失われると、ワラビがケガをする恐れがある。


「いや、でもパスだな」


 後衛にいるからと行って、矢や魔法だって飛んでくるのだ。回避率は、高い方がいい。いくらワラビが不死身のモンスターだからといって、ワラビを犠牲にした戦い方はしたくなかった。


「いいな、お前ら。テイマーがちゃんと、モンスターを労っている」


 次に紹介してくれたのは、【シャボン・スライム】である。泡になって戦う。軽量になり、毒属性を持つことも可能だ。


「かわいいけど、これはパスかな」


 プルプル感が、なくなってしまうのは惜しい。戦闘スタイルがまるまる変わってしまうから、慣れも必要だ。


「助かりました。制御が大変だから、候補にもあげたくなかったので」


 ワラビ自身も、選んでほしくなかったみたい。


「他には、【メタル・スライム】ですね。鋼鉄の体を手に入れて、よりダメージが通りづらくなります。敏捷性が、今よりも上がります。ただ、マスターツヨシがついていけなくなります」


 人間の速度をはるかに超える速度を手に入れられる。その代わり、ボクでも扱いに困る。


「他にも、火や水、雷などの特化した属性を持つことがでる進化もあります。デメリットは、どれも同じですね」


 強くはなるが、扱いには困るという。特化型だと、戦闘が制限されてしまう。


「メタルだと、物理特化ですからね。魔法も使えなくなりますし」


「じゃあ、パスだね」


 魔法に助けられているところもあるし。


「では最後に、【モーフ・スライム】です」


「毛布?」


「モーフィング・スライム。アイテムに変化できるスライムです」


 有効なのは、ローブだという。アーマーの上から着ることができて、アイテム扱いもされない。


 これなら、ワラビを持ち歩きながら行動ができる。また、いつでも変身解除は可能らしい。接敵して、元に戻して不意打ちを行える。なにより、ワラビを身近に感じられるのがいいね。


「とはいえ、ワラビが前線に立つことになるよ。いいの?」


「マスターツヨシとともに戦えるなら、いいかと」


「いいね。ひとまずそれでいこうか」


「では、モーフ・スライムに進化します」


 ワラビの身体が光った。だが、光が晴れてもワラビになんの変化もない。


「失敗しちゃったの?」


「いえ。進化は成功です。今から、お見せしましょう」


 プルンッ、と大きくワラビが跳ねた。ボクの目の前まで飛んできたと思ったら、一瞬でローブの形態を取る。

 ふわりと、ワラビローブがボクの身体を包んだ。

 オレンジ色のローブは、装備のファッション性を邪魔していない。表面がもっと冷たいのかなと思っていたけど、見た目に反して暖かみがある。


「似合ってるぜ、ツヨシ」


「そうね。ローブにも、ワラビちゃんの面影があるわ」


 一番感激していたのは、メイヴィス姫だ。


「なにこれ、最強じゃない! あたしにも着せて!」


「承知いたしました」


 ワラビがローブ状態のまま、メイヴィス姫に飛び移る。


「わあああ。これは素敵だわ。さっそく、『踊ってみた』を撮りましょう」


 踊ってみた、だって?

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