表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/36

学園生活の始まり


「「自分の部屋より豪華だわ…」」


ミーナとフランカの声が見事に重なった。


明日から始まる学園生活のため、二人は三日かけて王都にやってきた。

王都についてすぐ、これから自分の住処となる寮の部屋を訪れ、その豪華さに呆気に取られている。



部屋に入ると、小さいながらも玄関のスペースがあり、ソファーセットの置かれたリビング、ミニキッチンと続き、さらに奥の部屋には天蓋付きの広々としたベッドルームがあった。もちろん、お風呂とトイレも備わっている。


白とクリーム色を基調とした部屋は暖かみがあり、白で統一された調度品も相まって、令嬢が好みそうな可愛らしい雰囲気になっていた。



フランカの部屋は、ミーナの隣で、全く同じ作りをしている。

元々寮の利用者はかなり少ないため、自由に部屋を選ぶことが出来たのだ。



「今日からここに住めるなんて夢みたい…」


フランカは、キラキラした瞳で、くるくると回転しながら部屋を見渡し、これから始まる学園生活に期待を寄せ、胸を弾ませていた。



「でもなんだか少し落ち着かないわ…」


ミーナは、不安そうな顔をしていた。

そんな彼女を励ますように、フランカは努めて明るい声を出した。



「大丈夫よ、すぐに慣れるわ。私もすぐ隣の部屋にいるんだから。」


「やっぱり、シストの姿絵を持ってくれば良かった…私、あの視線がないと眠れない気がする…姿絵が恋しい…」


「ああ、そっちね…。でも寮の部屋では自重しておきましょうね…。さすがにあんなのを同級生に見られたら、変人確定だわ…」


ミーナは、シストの姿絵で囲まれる生活にも慣れて慣れ過ぎて、その結果、何もない部屋に物足りなさを感じていたのだ。


ちなみに、あれだけの部屋の改造をして両親にバレないわけがなく…しっかりと見られ、二人は娘の狂気としか思えない行為に泣くほど悲しんでいた。



「これからは、本物のシスト様がいるんだから、いいじゃない!貴女は、彼の婚約者として明日から学園に通うのよ。」


「こ、、婚約者…完全に忘れてたわ…どうしよう、緊張してきた…気持ち悪い…うっぷ…」


「落ち着いて!ミーナは見た目が良いんだから、自信を持って、堂々と婚約者面していれば良いのよ。何かあっても、きっとシスト様が庇ってくださるわ。」


フランカは、緊張で死にそうになっているミーナの背中をさすり、必死に宥めた。

とにかく、彼女の学園生活が落ち着くまで、なるべくミーナのそばにいようと決めたのだった。





翌朝、制服を着て身支度を整えた二人は、朝食を取るために食堂に行ったのだがら他の人はおらず、ガラリとしていた。

朝のメニューは、卵の焼き方が選べるモーニングプレート一択であり、二人ともスクランブルエッグを選んだ。


食事を終えたミーナとフランカが寮の外に出ると、門の近くに人が集まっている様子が目に入った。



「ねぇ、これ何の騒ぎかしら?」


「入学式のイベント?でも、校舎は隣の敷地にある建物よね。なんで、こんな寮の前に人だかりが…」


不思議に思いながらも、二人が門の方へ歩みを進めていくと、人だかりがこちらに近づいているような気がした。



「え…なんかこっちに近づいてる?」


「だ、大丈夫よ、ミーナ。私たちは何も関係ないのだから、目を合わせずに通り過ぎましょう。初日から変なことに巻き込まれたくないわ。」


「そ、そうね。」


二人は、下を向いてなるべく道の端っこを歩いた。

早くここを通り過ぎたい一心で、自然と早足になる。二人とも、貴族令嬢とは思えない結構な速度で歩いていた。


ようやく門を抜けられると思った瞬間、頭上から声がした。



「おはよう、僕のミーナ。」


甘い声で名前を呼ばれたミーナが、反応して顔を上げると、そこには、金髪碧眼の天使のように美しい少年が微笑んで立っていた。


天使が自分の名を呼び、自分だけに微笑みかけてくれることに、ミーナは、歓喜を通り越して気を失いかけた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ